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第十八話 追及
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第十八話 追及
国債発行の報が広がると、王城の空気は明らかに変わった。
廊下を歩く貴族たちの声は低く、笑みは消え、扉の向こうでは小声の議論が続く。
塩はある。
民は穏やかだ。
だが、王家の帳簿は穏やかではない。
大広間に、貴族たちが集められた。
円卓の上には書類が並び、中央には十倍契約の写しが置かれている。
「殿下」
老侯爵が口を開いた。
「塩の供給再開は、確かに英断でございました」
静かな頷きが広がる。
「しかし、差額の負担が想定を超えております」
王太子は視線を上げる。
「承知している」
「国債発行に至った事実は、王家の信用に影を落としかねません」
「民は守られた」
短い言葉。
「それは否定いたしません」
老侯爵は続ける。
「ですが、国家は塩だけでは成り立ちませぬ」
重い沈黙。
別の伯爵が声を上げる。
「契約の見直しを」
「不可能だ」
王太子は即答する。
「契約は契約だ」
「では、負担の一部を国家全体で」
「差額は私の責任だ」
ざわめき。
「殿下お一人の責任ではございません」
「軽率な発言をなさったのは、殿下でございます」
冷たい声が響く。
空気が凍る。
王太子はその声の主を見つめる。
若い伯爵。
真っ直ぐな視線。
「事実だ」
王太子は否定しない。
「私の軽率が発端だ」
会場が静まる。
「ならば」
老侯爵が再び口を開く。
「責任の形を、明確にする必要がございます」
“責任”。
その言葉が、会場の中央に落ちる。
「具体的には」
王太子は問う。
「王太子としての立場」
誰も、すぐには言葉を継がない。
「廃嫡の議論を、始めるべきではないかと」
その瞬間、空気が張り詰める。
王太子は一瞬だけ目を閉じる。
怒りはない。
驚きもない。
「塩は守れた」
静かな声。
「だが国家の基盤を揺らした」
老侯爵は深く頭を下げる。
「我らは国家を守らねばなりませぬ」
王太子はゆっくりと立ち上がる。
「議論を許す」
その言葉は、抵抗でも反発でもない。
「私の軽率が原因であるなら、責任を負う」
北方、ハライト公国。
ヴィエリチカは報告を受ける。
「王都、責任論浮上」
「はい」
「廃嫡の議論も」
彼女は微笑む。
変わらぬ、柔らかな笑み。
「塩は、穢れを洗い出しますの」
側近が目を伏せる。
「守るべきものと、守れぬものを」
王城では、円卓の上の書類がめくられる。
塩を守った誇り。
その裏に積み上がる赤字。
追及は始まった。
崩壊ではない。
だが、重心は確実に動いている。
王太子は席に戻る。
逃げない。
それが、彼の最後の誇りだった。
国債発行の報が広がると、王城の空気は明らかに変わった。
廊下を歩く貴族たちの声は低く、笑みは消え、扉の向こうでは小声の議論が続く。
塩はある。
民は穏やかだ。
だが、王家の帳簿は穏やかではない。
大広間に、貴族たちが集められた。
円卓の上には書類が並び、中央には十倍契約の写しが置かれている。
「殿下」
老侯爵が口を開いた。
「塩の供給再開は、確かに英断でございました」
静かな頷きが広がる。
「しかし、差額の負担が想定を超えております」
王太子は視線を上げる。
「承知している」
「国債発行に至った事実は、王家の信用に影を落としかねません」
「民は守られた」
短い言葉。
「それは否定いたしません」
老侯爵は続ける。
「ですが、国家は塩だけでは成り立ちませぬ」
重い沈黙。
別の伯爵が声を上げる。
「契約の見直しを」
「不可能だ」
王太子は即答する。
「契約は契約だ」
「では、負担の一部を国家全体で」
「差額は私の責任だ」
ざわめき。
「殿下お一人の責任ではございません」
「軽率な発言をなさったのは、殿下でございます」
冷たい声が響く。
空気が凍る。
王太子はその声の主を見つめる。
若い伯爵。
真っ直ぐな視線。
「事実だ」
王太子は否定しない。
「私の軽率が発端だ」
会場が静まる。
「ならば」
老侯爵が再び口を開く。
「責任の形を、明確にする必要がございます」
“責任”。
その言葉が、会場の中央に落ちる。
「具体的には」
王太子は問う。
「王太子としての立場」
誰も、すぐには言葉を継がない。
「廃嫡の議論を、始めるべきではないかと」
その瞬間、空気が張り詰める。
王太子は一瞬だけ目を閉じる。
怒りはない。
驚きもない。
「塩は守れた」
静かな声。
「だが国家の基盤を揺らした」
老侯爵は深く頭を下げる。
「我らは国家を守らねばなりませぬ」
王太子はゆっくりと立ち上がる。
「議論を許す」
その言葉は、抵抗でも反発でもない。
「私の軽率が原因であるなら、責任を負う」
北方、ハライト公国。
ヴィエリチカは報告を受ける。
「王都、責任論浮上」
「はい」
「廃嫡の議論も」
彼女は微笑む。
変わらぬ、柔らかな笑み。
「塩は、穢れを洗い出しますの」
側近が目を伏せる。
「守るべきものと、守れぬものを」
王城では、円卓の上の書類がめくられる。
塩を守った誇り。
その裏に積み上がる赤字。
追及は始まった。
崩壊ではない。
だが、重心は確実に動いている。
王太子は席に戻る。
逃げない。
それが、彼の最後の誇りだった。
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