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第十七話 崩れ
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第十七話 崩れ
城の廊下はいつもと変わらぬ静けさだった。
だが、その静けさの奥で、何かが軋み始めている。
「軍より報告です」
財務官が低く告げた。
「装備の更新延期により、演習の規模を縮小いたします」
「……影響は」
「直ちに支障はございません」
だが、“直ちに”という言葉が重い。
王太子は頷く。
塩を守る。
その選択は変えていない。
だが、その裏で削られていくものが増えている。
「国債の発行準備を」
会議の席で、宰相が口を開いた。
ざわめきが広がる。
「信用は保たれるか」
「まだ、保たれます」
“まだ”。
その響きが刺さる。
王太子は沈黙のまま、机の上の契約書を見つめる。
十倍。
民価格は据え置き。
差額は負担。
言葉は簡潔だ。
だが帰結は重い。
「発行は最小限に」
ようやく口を開く。
「恒常化させるな」
「承知いたしました」
その日の夕刻、王都の外れ。
工事が止まったままの街道があった。
資材は積まれ、作業は中断。
民は理由を知らない。
塩はある。
だから不安はない。
だが、見えぬところで支えが削られている。
夜。
王太子は執務室で一人、帳簿をめくる。
赤字。
国債。
延期。
縮小。
「崩れているのか」
小さく呟く。
目に見える崩壊ではない。
ゆっくりと、静かに、重さに耐える梁が軋むような。
側近が入室する。
「殿下」
「何だ」
「民は殿下を支持しております」
「塩を守ったからか」
「はい」
王太子は苦笑する。
「ならば、守り続けねばならぬな」
北方、ハライト公国。
ヴィエリチカは届いた報告を閉じる。
「国債発行」
「はい」
「軍費縮小」
彼女は静かに紅茶を口にする。
「崩れているわけではございませんわ」
側近が顔を上げる。
「削れているのです」
灰色の岩山は、削られても崩れない。
だが削り続ければ、形は変わる。
「契約は守られております」
「はい」
「では、それで十分ですわ」
王城。
国債発行の知らせが貴族へ伝わる。
動揺。
不安。
小さなひび。
王太子は窓の外を見る。
灯りの並ぶ王都。
守った光。
だが、その光の下で、土台が少しずつ痩せていく。
崩壊ではない。
しかし、確実に重心は傾き始めていた。
城の廊下はいつもと変わらぬ静けさだった。
だが、その静けさの奥で、何かが軋み始めている。
「軍より報告です」
財務官が低く告げた。
「装備の更新延期により、演習の規模を縮小いたします」
「……影響は」
「直ちに支障はございません」
だが、“直ちに”という言葉が重い。
王太子は頷く。
塩を守る。
その選択は変えていない。
だが、その裏で削られていくものが増えている。
「国債の発行準備を」
会議の席で、宰相が口を開いた。
ざわめきが広がる。
「信用は保たれるか」
「まだ、保たれます」
“まだ”。
その響きが刺さる。
王太子は沈黙のまま、机の上の契約書を見つめる。
十倍。
民価格は据え置き。
差額は負担。
言葉は簡潔だ。
だが帰結は重い。
「発行は最小限に」
ようやく口を開く。
「恒常化させるな」
「承知いたしました」
その日の夕刻、王都の外れ。
工事が止まったままの街道があった。
資材は積まれ、作業は中断。
民は理由を知らない。
塩はある。
だから不安はない。
だが、見えぬところで支えが削られている。
夜。
王太子は執務室で一人、帳簿をめくる。
赤字。
国債。
延期。
縮小。
「崩れているのか」
小さく呟く。
目に見える崩壊ではない。
ゆっくりと、静かに、重さに耐える梁が軋むような。
側近が入室する。
「殿下」
「何だ」
「民は殿下を支持しております」
「塩を守ったからか」
「はい」
王太子は苦笑する。
「ならば、守り続けねばならぬな」
北方、ハライト公国。
ヴィエリチカは届いた報告を閉じる。
「国債発行」
「はい」
「軍費縮小」
彼女は静かに紅茶を口にする。
「崩れているわけではございませんわ」
側近が顔を上げる。
「削れているのです」
灰色の岩山は、削られても崩れない。
だが削り続ければ、形は変わる。
「契約は守られております」
「はい」
「では、それで十分ですわ」
王城。
国債発行の知らせが貴族へ伝わる。
動揺。
不安。
小さなひび。
王太子は窓の外を見る。
灯りの並ぶ王都。
守った光。
だが、その光の下で、土台が少しずつ痩せていく。
崩壊ではない。
しかし、確実に重心は傾き始めていた。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
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