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第二十六話 提案
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第二十六話 提案
「国を引き取っていただきたい」
王の言葉は、灰色の石壁に吸い込まれるように静かだった。
応接間にいる者は、誰一人として息を荒げない。
驚きも、歓声も、非難もない。
ヴィエリチカはそのまま、王を見つめていた。
微笑みは崩れない。
だが瞳は、わずかに真剣さを帯びている。
「ご提案と承りました」
ゆっくりと、言葉を置く。
「我が国は、支払い不能である」
王は続ける。
「担保も差し出した。資産も売却した。それでも足りぬ」
一拍。
「民を守るための選択であったが、国家そのものを支えられなくなった」
ヴィエリチカは頷く。
「塩は守られました」
その一言に、王はわずかに目を閉じた。
「守った。だが、支えきれなかった」
静かなやり取り。
「併呑をご希望でございますか」
ヴィエリチカは率直に問う。
「保護でもよい。名称は問わぬ」
王は正面から答える。
「民の生活が守られ、急激な混乱が起きぬ形を望む」
彼女は指先でカップの縁をなぞる。
「条件を申し上げても」
「聞こう」
「第一に、民価格は維持いたします」
王がわずかに安堵の息を吐く。
「第二に、行政機構は急激に解体いたしません。既存の官僚は継続雇用」
「それはありがたい」
「第三に、王族の生活は保障いたします。ただし、政治的決定権は移譲いただきます」
王は静かに頷く。
抵抗はない。
ここに来るまでに、覚悟は済ませている。
「国号は」
「一定期間は併記いたしましょう」
ヴィエリチカは穏やかに答える。
「段階的統合といたします」
罰ではない。
征服でもない。
整理。
「最後に」
彼女は視線を上げる。
「差額補填義務は消滅いたします」
王が顔を上げる。
「国家が消滅する以上、契約主体も変わります」
感情はない。
ただ理屈。
王は深く頭を下げた。
「……民を、頼む」
ヴィエリチカは立ち上がり、礼を返す。
「お預かりいたします」
その瞬間、王国の未来は決まった。
灰色の山は動かない。
だが地図の色は変わる。
王は帰路につく。
護衛も少ないまま。
だが来た時より、表情は静かだった。
北風が吹く。
塩は今日も白い。
だがその白のもとで、二つの国は一つになる準備を始めた。
「国を引き取っていただきたい」
王の言葉は、灰色の石壁に吸い込まれるように静かだった。
応接間にいる者は、誰一人として息を荒げない。
驚きも、歓声も、非難もない。
ヴィエリチカはそのまま、王を見つめていた。
微笑みは崩れない。
だが瞳は、わずかに真剣さを帯びている。
「ご提案と承りました」
ゆっくりと、言葉を置く。
「我が国は、支払い不能である」
王は続ける。
「担保も差し出した。資産も売却した。それでも足りぬ」
一拍。
「民を守るための選択であったが、国家そのものを支えられなくなった」
ヴィエリチカは頷く。
「塩は守られました」
その一言に、王はわずかに目を閉じた。
「守った。だが、支えきれなかった」
静かなやり取り。
「併呑をご希望でございますか」
ヴィエリチカは率直に問う。
「保護でもよい。名称は問わぬ」
王は正面から答える。
「民の生活が守られ、急激な混乱が起きぬ形を望む」
彼女は指先でカップの縁をなぞる。
「条件を申し上げても」
「聞こう」
「第一に、民価格は維持いたします」
王がわずかに安堵の息を吐く。
「第二に、行政機構は急激に解体いたしません。既存の官僚は継続雇用」
「それはありがたい」
「第三に、王族の生活は保障いたします。ただし、政治的決定権は移譲いただきます」
王は静かに頷く。
抵抗はない。
ここに来るまでに、覚悟は済ませている。
「国号は」
「一定期間は併記いたしましょう」
ヴィエリチカは穏やかに答える。
「段階的統合といたします」
罰ではない。
征服でもない。
整理。
「最後に」
彼女は視線を上げる。
「差額補填義務は消滅いたします」
王が顔を上げる。
「国家が消滅する以上、契約主体も変わります」
感情はない。
ただ理屈。
王は深く頭を下げた。
「……民を、頼む」
ヴィエリチカは立ち上がり、礼を返す。
「お預かりいたします」
その瞬間、王国の未来は決まった。
灰色の山は動かない。
だが地図の色は変わる。
王は帰路につく。
護衛も少ないまま。
だが来た時より、表情は静かだった。
北風が吹く。
塩は今日も白い。
だがその白のもとで、二つの国は一つになる準備を始めた。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4800文字程度の番外編です。
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