婚約破棄されるはずが、強制力のせいで王子に溺愛されました!? ――原作者を呪ったら、強制力がサボり始めました――

しおしお

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2-2 アリシアが王子に惹かれ始める

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2-2 アリシアが王子に惹かれ始める

 優雅な円舞曲が流れる広間。
 王子アルフォンスとアリシア・フローレンスは、
 まるで光の渦の中心にいるかのように舞っていた。

 アリシアの淡い金髪は、揺れるたびに月光のように輝き、
 王子の濃紺の軍装は、まるで彼女を守る夜空のようだ。

 ――美しい。
 この光景は、原作でも読者が“尊い!”と叫んだ場面だ。

(よしっ……完璧よ……!
 この調子で二人は恋に落ちるの……
 私ミリアはモブの道へ一直線……!)

 私は柱の影からこっそり覗き見ながら、
 なぜか必死にガッツポーズをした。

 アリシアは王子と視線を合わせただけで、
 頬を染め、形の良い唇を震わせている。

「殿下……わ、私、踊りが得意ではありませんの……」

 アリシアは控えめに言った。
 それは、彼女の特徴の一つだ。
 内気でおしとやか、だが芯は強い。

 王子は微笑む。

「ご安心を。
 私がリードいたします。
 ただ身を委ねてくださればよい」

 その声音がまたやたら甘い。

(出たわね……王族特有のイケボ……
 ファンブックで“声が良すぎる王子”って言われてたやつ……
 アリシア、落ちるのも時間の問題だわ……)

 案の定、アリシアの心は揺れていた。

「……殿下……」

 その頬は薄紅色。
 王子は彼女の腰に手を添え、
 ふわりと体を引き寄せる。

「あなたの瞳は、星よりも輝いていますね」

「っ……!」

(うわあああ出た!!
 原作で読んだ台詞そのまま!!
 そしてヒロイン沼落ち確定の決めゼリフ!!
 ありがとうございます原作再現!!)

 アリシアの胸に手をあてたまま、
 彼女は王子の肩に視線を落とす。

「殿下は……とてもお優しい方なのですね……
 わたくしのような者にも、こんなに丁寧に……」

「あなたが特別だからですよ」

 その瞬間。
 アリシアの表情が、
 ぱっと花が咲くように変わった。

(来たーーーー!
 ヒロイン・フラグ成立!!
 ここから彼女は夜な夜な王子のこと思い出してドキドキし、
 切ない恋に落ちるルートに突入よ!!
 原作どおり!! 実に良し!!)

 二人のダンスは、周囲の視線を完全に奪っていた。
 アリシアのステップは最初こそぎこちなかったが、
 王子に導かれるように軽やかに変わっていく。

「殿下……わたくし……楽しいです……」

「それは私もです」

(よしよしよし……!
 楽しんでいいのよアリシア……
 そのまま恋して……
 私を置いて幸せになって……!
 私は村娘Aとして畑でも耕して生きるから……!)

 途中、アリシアが少し足をもつれさせると、
 王子は即座に支えた。

「ご無理はなさらず。
 私はあなたを傷つけたくありませんから」

 その瞳は真剣そのもの。

 アリシアの心は、
 完全に射抜かれていた。

「殿下……」

(はい! 好感度上昇音きました!!
 “ピロン♪”って聞こえたわ!!
 原作でもこの瞬間に好感度ゲージがドーンと伸びてた!!)

 周囲の貴族たちも盛り上がっている。

「まさか殿下があのフローレンス嬢に……」 「素晴らしい相性ではありませんか!」

 そんな声を聞きながら、私は拳を握りしめる。

(そう! 二人は最高にお似合い!!
 誰が何と言おうと、この舞踏会の主役はあなた達!!
 私は背景!! 空気!! 染み!!)

 やがて曲が終わり、
 二人は軽く礼を交わした。

「ありがとうございました、殿下……
 わたくし……本当に……」

「また後ほど、お話できれば嬉しい。
 あなたのことを、もっと知りたいのです」

 アリシアは胸元を押さえ、顔を真っ赤にする。

「っ……はい……」

(はい来たーーーーー!!
 ヒロイン、完全に落ちた!!
 王子も悪くない感じになってる!!
 なんだかんだで二人とも惹かれ合っちゃってる!!
 これで明日の“婚約破棄宣言”は磐石!!
 私の自由が確定!!)

 私は自分の中で小さくガッツポーズを決め、
 そっと会場隅で小さく跳ねた。

 そう、この時点では――
 すべてが“原作通り”に進んでいると思い込んでいたのだ。

 この後、強制力が牙をむくとも知らずに。

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