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第12 胸ではなく、心を選ぶという宣言
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胸ではなく、心を選ぶという宣言
「あなたの瞳は、昨夜の令嬢のものと同じです」
王子レオナードの静かな声が、
フラット侯爵家の応接間に響いた。
その瞬間――
継母 メリッサ と義姉 アンジェリカ は、顔を真っ青にして固まった。
まるで世界がひっくり返ったかのように。
(なんで……
だって、昨夜の令嬢は “胸が大きかった” はず……)
アンジェリカは喉を震わせながら言った。
「ちょ、ちょっと待ってください殿下……!
シンディは、その……胸が……!」
「胸の話をするなと何度言えばわかるのだ」
冷たく鋭い一言が飛んだ。
継母と義姉は、すぐに口をつぐむ。
屋敷中の空気が凍ったように静まり返る。
レオナードは、シンディの前に歩み寄り――
膝を折って、彼女と視線の高さを合わせた。
シンディは混乱のあまり、小さく後ずさる。
「お、王子様……やめてください……
私なんて……舞踏会の彼女とは違います……
本当の私は……胸が……」
レオナードは穏やかな瞳でシンディを見つめた。
「胸の大きさが、あなたの価値を決めると……誰が言ったのです?」
「……っ」
「胸が小さくても、大きくても。
そんなものは、人の魅力の一部でしかない。
あなたの瞳を見れば……それ以外、必要ないと思える」
(ずるい……そんな言い方……)
シンディの胸が痛くて、温かくて、複雑に揺れる。
メリッサが慌てて割り込もうとする。
「で、殿下! シンディなどより、我が娘アンジェリカのほうが……
胸も、顔も、華やかさも……!」
「胸の話はやめなさいと言った」
今度の声は、冷気さえ帯びていた。
アンジェリカは唇を震わせながら、
胸元を腕で押さえ、しぼんだ声を出す。
「な、なんで……?
胸が大きいのが……価値じゃないの……?
私たち……ずっとそう思って……
そう言われて育って……
胸を武器にして“選ばれる側”になるようにって……!」
シンディの胸にも、一瞬だけ同情が走った。
(私と……逆なんだ……
私は胸がないから蔑まれ、
アンジェリカは胸があるから選ばれると思い込まされてきた)
だが――。
レオナードは静かに告げた。
「私は、胸で女性を選ばない。
そして、これからも二度と“胸の大きさ”が
女性の価値を縛る時代にはさせない」
応接間にいた使用人たちが息を呑む。
メリッサとアンジェリカは完全に固まっていた。
シンディは胸を押さえながら、震える声で問いかけた。
「……王子様……
どうして……そんなことを……?」
レオナードは穏やかに微笑んだ。
「君が、泣いていたからだ」
「……え……」
「胸の大小ではなく……
“心の痛み”を抱えている瞳だった。
それでも私に向けた笑顔は、とても強くて……美しかった」
その言葉に、シンディの胸がじわりと熱くなる。
(あの日……
魔法が解ける前、泣き出しそうだったの……
そんな私の目を……見ていたの……?)
シンディの胸元に触れず、
心だけを見つめる――
そんな男性は、この世界にはいなかった。
レオナードは立ち上がり、
屋敷の面々に向けて正式に宣言した。
「これより、私はシンディ・フラットを
“婚約者候補”として訪問する」
継母 メリッサ があまりの衝撃で腰を抜かした。
「し、しんでぃ……!?
あの貧乳が……殿下の……!?
ば、ばかな……!」
アンジェリカも涙目で叫ぶ。
「いやあああああ!!
なんで!? 胸が大きくても選ばれないの!?
選ばれるのは……心が綺麗な子……??
そんなの……聞いてない……!!」
使用人たちは混乱のあまり顔を見合わせていた。
一方、シンディは――
自分が今選ばれていることを理解できず、震えながら俯いた。
「で、でも……
私……本当に……胸がないんです……
舞踏会のあの胸は……魔法で……」
正直に言いかけた。
だが、レオナードは首を振った。
「魔法でも、偽りでも構わない。
一夜だけの姿であれ、
“あなたが見せたいと思った自分”なら、それはあなたの一部だ」
シンディは、胸を抱えて泣きそうになった。
(なんで……
こんなに優しいことを言えるの……
胸で苦しんでいた私を……肯定してくれるなんて……)
その涙ぐんだ瞳を見て、レオナードはさらに確信した。
「あなたは、昨夜の令嬢だ」
「……!」
「胸がどうあろうと……
あなた以外の誰でもない」
継母 メリッサ と義姉 アンジェリカ はその場に崩れ落ち、
胸を武器にしていた人生が音を立てて崩れるのを
ただ見守るしかなかった。
そして――。
レオナードはシンディに手を差し出した。
「シンディ。
どうか……あなたをもっと知る機会を、私にください」
手は暖かい。
胸を見ず、顔を見ず、
ただ心に寄り添うためだけに差し出された手。
シンディは震える指で、
その手にそっと触れた。
(こんな優しさ……初めて……)
その瞬間、フラット家の運命は大きく動き始めた。
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「あなたの瞳は、昨夜の令嬢のものと同じです」
王子レオナードの静かな声が、
フラット侯爵家の応接間に響いた。
その瞬間――
継母 メリッサ と義姉 アンジェリカ は、顔を真っ青にして固まった。
まるで世界がひっくり返ったかのように。
(なんで……
だって、昨夜の令嬢は “胸が大きかった” はず……)
アンジェリカは喉を震わせながら言った。
「ちょ、ちょっと待ってください殿下……!
シンディは、その……胸が……!」
「胸の話をするなと何度言えばわかるのだ」
冷たく鋭い一言が飛んだ。
継母と義姉は、すぐに口をつぐむ。
屋敷中の空気が凍ったように静まり返る。
レオナードは、シンディの前に歩み寄り――
膝を折って、彼女と視線の高さを合わせた。
シンディは混乱のあまり、小さく後ずさる。
「お、王子様……やめてください……
私なんて……舞踏会の彼女とは違います……
本当の私は……胸が……」
レオナードは穏やかな瞳でシンディを見つめた。
「胸の大きさが、あなたの価値を決めると……誰が言ったのです?」
「……っ」
「胸が小さくても、大きくても。
そんなものは、人の魅力の一部でしかない。
あなたの瞳を見れば……それ以外、必要ないと思える」
(ずるい……そんな言い方……)
シンディの胸が痛くて、温かくて、複雑に揺れる。
メリッサが慌てて割り込もうとする。
「で、殿下! シンディなどより、我が娘アンジェリカのほうが……
胸も、顔も、華やかさも……!」
「胸の話はやめなさいと言った」
今度の声は、冷気さえ帯びていた。
アンジェリカは唇を震わせながら、
胸元を腕で押さえ、しぼんだ声を出す。
「な、なんで……?
胸が大きいのが……価値じゃないの……?
私たち……ずっとそう思って……
そう言われて育って……
胸を武器にして“選ばれる側”になるようにって……!」
シンディの胸にも、一瞬だけ同情が走った。
(私と……逆なんだ……
私は胸がないから蔑まれ、
アンジェリカは胸があるから選ばれると思い込まされてきた)
だが――。
レオナードは静かに告げた。
「私は、胸で女性を選ばない。
そして、これからも二度と“胸の大きさ”が
女性の価値を縛る時代にはさせない」
応接間にいた使用人たちが息を呑む。
メリッサとアンジェリカは完全に固まっていた。
シンディは胸を押さえながら、震える声で問いかけた。
「……王子様……
どうして……そんなことを……?」
レオナードは穏やかに微笑んだ。
「君が、泣いていたからだ」
「……え……」
「胸の大小ではなく……
“心の痛み”を抱えている瞳だった。
それでも私に向けた笑顔は、とても強くて……美しかった」
その言葉に、シンディの胸がじわりと熱くなる。
(あの日……
魔法が解ける前、泣き出しそうだったの……
そんな私の目を……見ていたの……?)
シンディの胸元に触れず、
心だけを見つめる――
そんな男性は、この世界にはいなかった。
レオナードは立ち上がり、
屋敷の面々に向けて正式に宣言した。
「これより、私はシンディ・フラットを
“婚約者候補”として訪問する」
継母 メリッサ があまりの衝撃で腰を抜かした。
「し、しんでぃ……!?
あの貧乳が……殿下の……!?
ば、ばかな……!」
アンジェリカも涙目で叫ぶ。
「いやあああああ!!
なんで!? 胸が大きくても選ばれないの!?
選ばれるのは……心が綺麗な子……??
そんなの……聞いてない……!!」
使用人たちは混乱のあまり顔を見合わせていた。
一方、シンディは――
自分が今選ばれていることを理解できず、震えながら俯いた。
「で、でも……
私……本当に……胸がないんです……
舞踏会のあの胸は……魔法で……」
正直に言いかけた。
だが、レオナードは首を振った。
「魔法でも、偽りでも構わない。
一夜だけの姿であれ、
“あなたが見せたいと思った自分”なら、それはあなたの一部だ」
シンディは、胸を抱えて泣きそうになった。
(なんで……
こんなに優しいことを言えるの……
胸で苦しんでいた私を……肯定してくれるなんて……)
その涙ぐんだ瞳を見て、レオナードはさらに確信した。
「あなたは、昨夜の令嬢だ」
「……!」
「胸がどうあろうと……
あなた以外の誰でもない」
継母 メリッサ と義姉 アンジェリカ はその場に崩れ落ち、
胸を武器にしていた人生が音を立てて崩れるのを
ただ見守るしかなかった。
そして――。
レオナードはシンディに手を差し出した。
「シンディ。
どうか……あなたをもっと知る機会を、私にください」
手は暖かい。
胸を見ず、顔を見ず、
ただ心に寄り添うためだけに差し出された手。
シンディは震える指で、
その手にそっと触れた。
(こんな優しさ……初めて……)
その瞬間、フラット家の運命は大きく動き始めた。
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