貧乳シンデレラは、貧乳を理由に婚約破棄されましたが、元婚約者には未来の可能性が見えていませんでした。

しおしお

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29話 魔女との再会

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 魔女との再会

結婚式の祝宴がひと段落し、
大聖堂の裏庭に出たシンディは深く息を吸い込んだ。

昼下がりの光が柔らかく差し込み、
盛大な式典の喧騒が嘘のように静かだった。

「……やっと落ち着いたわ」

胸元に触れると、
かつて“ほぼ平ら”だった場所は
今では柔らかく豊かな膨らみを宿している。

けれど――
その胸の変化以上に、
シンディの心は穏やかだった。

(胸の大きさで怯えていた頃とは……
 もう別の自分になった気がする)

その時だった。

風がひときわ強く吹き、
足元の草がざわりと揺れる。

「成長したものだな、シンディよ」

懐かしく、どこか皮肉げな声。

シンディが振り返ると、
黒衣をまとい、紫紺の瞳を持つ女――
魔女アドラが立っていた。

「アドラ……!」

驚きと喜びが同時に溢れ、
シンディは思わず一歩駆け寄る。

アドラは微笑もせず、
いつもの無表情でシンディを上から下まで眺めた。

「ふむ。胸が育ったな」

「そ、そこなの!? 一番にそれ言うの!?」

思わず素で突っ込み、
自分でも呆れるほど自然に声が出た。

アドラは肩をすくめる。

「お前が長い間苦しんでいた部分だろう。
 最初に確認して何が悪い」

「……まあ、確かに……そうなんだけど……」

(相変わらず、ズバッと言うわね……)

アドラはゆっくりと歩み寄り、
シンディの横を通り過ぎて
大聖堂の遠景を見つめた。

「よく、ここまで辿り着いたものだ。
 あの“巨乳絶対至上主義”の国で」

「……あなたが……魔法をくれたからよ」

シンディがそう言うと、
アドラは首を横に振った。

「違う。
 魔法は一夜限り。
 お前が自分で、世界と向き合ったのだ」

「わたしが……?」

「そうだ。
 舞踏会では“胸の魔法”に頼った。
 だが本当に殿下の前に立ったのは、
 魔法が解けた後の“お前自身”だっただろう?」

その言葉に、
シンディの胸が静かに震えた。

(そう……
 あの時わたしは貧乳のまま、
 本当の自分で向き合った……)

アドラは続けた。

「殿下を惹きつけたのは胸ではない。
 お前の涙、お前の勇気、お前の心の強さ……
 それを殿下は見抜いていたのだ」

「……アドラ……」

「だから私は来た。
 “試練を越えた娘”に挨拶するためにな」

シンディの目に涙が溜まった。

魔女は淡々としていたが――
その言葉の一つ一つが温かく、
まるで母のように包み込む力を持っていた。

(わたし……ようやく……
 胸じゃなく、自分自身で生きられるようになったんだ……)

アドラはゆっくりとシンディに向き直った。

「さて――
 後半の話は、殿下が来る前に済ませておこう」

「あ、後半があるのね……?」

「当然だ。
 試練を越えた者には、伝えるべきことがある」

その瞳が静かに輝く。

「シンディよ。
 “胸の魔法”の本当の意味を――教えよう」

風が再びざわりと揺れ、
新たな秘密の幕が開くような空気が満ちていった。

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