貧乳シンデレラは、貧乳を理由に婚約破棄されましたが、元婚約者には未来の可能性が見えていませんでした。

しおしお

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30話 魔法の真実と、アドラの最後の言葉

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魔法の真実と、アドラの最後の言葉

シンディが息をのむと、
アドラは黒衣の袖を揺らしながら、
まるで大きな真実の扉を開くようにゆっくりと語り出した。

「シンディ。
 お前に授けた“胸を盛る魔法”――
 あれは、本来ただの幻影ではない」

「……え? 幻じゃなかったの?」

アドラは首を横に振った。

「幻影では“胸だけを変えたい者”と同じになってしまう。
 私はそんな安っぽい魔法を授けはせん」

「じゃあ……あの胸は……?」

魔女の瞳が静かに揺れた。

「胸を大きく“見せた”のではない。
 お前が持つ本来の魅力を、
 一時的に“引き出した”だけだ」

「引き出した……?」

「胸という形は……心の在り方、生活、成長、体質――
 いくつもの要素で決まる。
 お前はただ幼く細かった。
 本来持つ魅力が、まだ開花していなかっただけだ」

シンディの胸が鼓動を打った。

つまり――
魔女の魔法は、根拠のない幻ではなく、
シンディ自身の未来の姿を一瞬だけ見せるものだったのだ。

アドラは続けた。

「殿下は、盛られた胸に惹かれたのではない。
 お前が胸を張って前に進んだ“勇気”に惹かれたのだ」

「……勇気……」

「そうだ。
 胸の大小で泣かされ続けた娘が……
 一晩の奇跡を手にして、
 人生で初めて堂々と踊った。
 その姿は、どんな美女よりも輝いていた」

シンディの目に涙があふれた。

今なら、はっきりわかる。

(あの夜、魔法で胸が大きくなっても……
 わたしの心は臆病なままだった……
 けれど王子様が見ていたのは、
 胸じゃなくて……わたしの心だった……)

アドラはシンディの前に立ち、
ほんの少しだけ微笑んだ。

「お前は強い娘だ、シンディ。
 胸のせいで蔑まれても、折れずに生きた。
 その心こそ、美しさの源」

「……アドラ……ありがとう……」

「それに――」

魔女はシンディの胸元に視線を落とし、
ふっといたずらっぽい笑みを浮かべた。

「胸は“遅咲き”の者ほど……よく育つものだ」

「ちょっと!? 最後にそれ!?!?」

アドラは声をひそめて囁いた。

「殿下が、今の胸を見て頬を赤らめていたぞ。
 ……誇るがいい。胸でも、心でもな」

「~~~っ!!」

耳まで真っ赤になるシンディ。

アドラは優しく頭に手を置いた。

「もう魔法に頼るな。
 胸は……
 そしてお前自身は……
 これからいくらでも成長する」

「……うん。
 もう……胸で泣かない。
 胸で比べない。
 胸のことで、誰も傷つけさせない」

その言葉を聞き、
アドラは満足げに頷いた。

そして――
その姿が、光の粒となって薄れていく。

「試練を越えた娘に……祝福を」

「アドラ……!」

「胸の魔法はいらぬ。
 お前自身が、美しいのだから」

黒衣の魔女は、
柔らかな風と共に消えていった。

シンディは胸元をそっと押さえ、
静かに微笑んだ。

(胸がどうであろうと――
 わたしはわたし。
 王子様が愛してくれた“心の私”を、
 これからも守っていく)

その決意は、
胸差別の消えた新しい王国に、
優しく静かに広がっていった。
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