ブリティッシュ関西ガールと京女どす 〜テストの回答は英語でええやん!あかんどす〜

しおしお

文字の大きさ
5 / 26

第5話 ナンパ撃退、語学でぶち抜け!

しおりを挟む
ある晴れた放課後。



都あずさは、校門の前で立ち止まり、少し困ったように振り返った。



「……鸞さん、ホンマに帰りご一緒してもよろしいの?」



「ええやん別に。うち、あずささんと喋りながら歩くの、けっこう好きやで」



「……そない言われると、なんや照れてしまいますわ」





というわけで、二人は並んで駅まで歩くことになった。



鸞はリュックを背負いながら、軽やかな足取りで歩いている。



その横であずさは、品のある落ち着いた歩き方。



まるでテンポの違う楽器が合奏しているような光景だった。





途中、駅前の商店街に差しかかったとき。



「あっ、この和菓子屋さん、よう見てたけど入ったことおへんのやわ」



「入ってみる? うち、甘いもんには目がないんや!」



「それ、うちもどす」





ふたりでくすくす笑いながら、店の前で足を止めたときだった。





「Excuse me! Girls!」



どこか片言の英語が飛んできた。



ふと振り向くと、大学生風の若い男たちが2人、ニヤニヤしながら立っていた。





「Are you...外国人? Or maybe... half?」



鸞の金髪碧眼を見て、完全にターゲットロックオン状態。





「Whoa, beautiful girls! You wanna go cafe with us?」





あずさは一瞬で固まった。



肩をすくめ、目が泳いでいる。



「え、えと……あの……」





だが、その横で鸞はまったく動じていなかった。



むしろ、口元にニヤリと笑みを浮かべる。





「Excuse me, gentlemen. We're on our way to a tea ceremony, and we don't really have time to entertain strangers. Especially those who think English pick-up lines still work in 2020s.」





一瞬にして空気が変わる。



男たちは目を丸くし、言葉に詰まった。



「W-What...?」





鸞はさらに畳みかける。



「Also, my friend here may not look it, but she's fluent in kicking people who can't take a hint.」



「Wait what!? No, I-I didn't mean—」





そして。



「Bon, si vous ne comprenez pas l'anglais, je peux continuer en français. Vous voulez que je parle plus lentement, ou vous partez tout de suite?」



(訳:英語が理解できないなら、フランス語で続けましょうか? ゆっくり話しましょうか、それともすぐに立ち去りますか?)





男たち、顔面蒼白。



「S-Sorry!」



「No offense! Just compliment!」



と言い残し、そそくさと去っていった。





残されたあずさは、放心状態で立ち尽くしていた。



「……い、今の……何語ですの?」



「英語と、フランス語ちょっと。まあ、混ぜて脅かしただけやけど」



「鸞さん……すごすぎますわ」



「いやー、昔から海外でもナンパ多かったし、対応慣れしてるんや」



「うち、完全に凍りついてました……」





鸞は、そんなあずさの肩をぽんと軽く叩く。



「大丈夫や。うちがついとる限り、あずささんにナンパなんてさせへん」



「……させへん、ではなく、されへん、やと思います」



「おお、さすがや! 日本語の先生になれるで!」



「笑いごとやありません……」





それでも、あずさの頬は少しだけ緩んでいた。



ナンパという非日常の出来事の中で、鸞の存在は確かに頼もしかった。



そして何より、そんな彼女と一緒に歩ける自分に、ほんの少しだけ誇らしさを感じていたのだった。





――ふたりの距離は、今日もまた一歩、近づいた。







英語チャレンジ、どうどす?



翌日の昼休み。



あずさは、自分でも驚くくらいの勢いで英語の参考書を開いていた。



机の上には英語の文法ノート、赤ペン、例文カード。



その姿は、まるで受験生のようだった。





「うおっ、なんや真剣やなあ」



鸞がパンを片手に近づいてくる。



「どしたん? 英語の宿題でも出たんか?」





「いえ……あの……昨日のこと、ちょっと悔しくて」





あずさは視線を下げ、照れくさそうに笑った。



「うちは、鸞さんに助けてもらってばかり……。

少しくらい、自分の言葉で……返せたらええのになぁって」





鸞は一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに口元をほころばせた。



「そっか……ええやん、めっちゃええやん!」





ぱちぱちとパンを置いて拍手する。



「うちが付き合ったる! 英語、教えたるで!」



「え、ええんですか?」



「もちろんや! なんでも聞いてや!」





その瞬間から、即席の“鸞塾”が開講された。





「まずはな、基本のあいさつからやな……」



「『How do you do?』」



「うん、発音はええ感じやけど、普段の会話ではあんま使わへん。ちょっと古臭いねん」



「そ、そうなんどすか!?」



「今は『Hi』とか『Nice to meet you』が普通や。な?」



「なるほど……。

じゃあ『おかわりください』は……」



「えっ、それ食事中のやつやん!? どこで使うつもりなん?」



「いつか“どすえカフェ”で使えるかもと……」



「それ、伏線回収早すぎるやろ!!」





クラスメイトたちはそのやりとりに耳をそばだてていた。



「……なんか授業より勉強になるかも」



「というか、これ録音したいレベルでおもろい」





深雪は腕を組んで溜息をつく。



「二人がいるだけで教室の空気が漫才会場になるの、どうにかならないのかしら……」





だが、その中でもあずさの目は真剣だった。



真面目に、丁寧に、一生懸命に。



そして、それを見守る鸞の表情もまた、優しく温かかった。





「じゃあ、次はちょっとした会話に挑戦してみよか?」



「は、はい!」



「Hi, my name is Ran. What’s your name?」



「……My name is Azusa. I’m…… happy to meet you.」



「Good! めっちゃええやん!」





「Thank you……」





そこだけは、きちんと発音していた。





放課後。



ふたりは校門を出た後も、しばらく英語の練習を続けていた。



「How are you?」



「I'm fine, thank you. And you?」



「I'm good.」



「ぐっど……」





あずさは小さく笑った。



「なんや、ちょっと楽しいどす」



「やろ?」





ふたりの影が、夕陽に伸びていく。



少しずつ、でも確かに、言葉が橋をかけていくのを感じながら――。





――京ことばと関西弁と英語。



三つの音が、今日も仲良く響いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】黒の花嫁/白の花嫁

あまぞらりゅう
恋愛
秋葉は「千年に一人」の霊力を持つ少女で、幼い頃に龍神――白龍の花嫁として選ばれていた。 だが、双子の妹の春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。 しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。 それ以来、家族から「無能」と蔑まれながらも、秋葉は失われた力を取り戻すために静かに鍛錬を続けていた。 そして五年後、白龍と春菜の婚礼の日。 秋葉はついに霊力が戻らず、一縷の望みも消えてしまった。 絶望の淵に立つ彼女の前に、ひとりの青年が現れる。 「余りもの同士、仲良くやろうや」 彼もまた、龍神――黒龍だった。 ★ザマァは軽めです! ★後半にバトル描写が若干あります! ★他サイト様にも投稿しています!

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

気がつけば異世界

蝋梅
恋愛
 芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。  それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。  その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。 これは現実なのだろうか?  私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。

そんな世界なら滅んでしまえ

キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは? そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

エアコン魔法、全自動チョコレート製造魔法、魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ

鷹 綾
恋愛
「魔法の無駄遣いだ」 そう言われて婚約を破棄され、南方の辺境へ追放された元・聖女エオリア。 けれど本人は、まったく気にしていなかった。 暑いならエアコン魔法を使えばいい。 甘いものが食べたいなら、全自動チョコレート製造魔法を組めばいい。 一つをゆっくり味わっている間に、なぜか大量にできてしまうけれど―― 余った分は、捨てずに売ればいいだけの話。 働く気はない。 評価されても困る。 世界を変えるつもりもない。 彼女が望むのは、ただひとつ。 自分が快適に、美味しいものを食べて暮らすこと。 その結果―― 勝手に広まるスイーツブーム。 静かに進む元婚約者の没落。 評価だけが上がっていく謎の現象。 それでもエオリアは今日も通常運転。 「魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ」 頑張らない。 反省しない。 成長もしない。 それでも最後まで勝ち続ける、 アルファポリス女子読者向け“怠惰ざまぁ”スイーツファンタジー。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...