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67 黒髪美少女
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……どうやらもう一人いると言われていた工房の住人が、彼女らしい。
サフィさんの工房でお茶を出すと、座っていたスキアさんは立ち上がった。
「はは! いつの間にか余に後輩が出来ていたとはな!」
「あのゴーレムを作ったのって」
質問すると、スキアさんは歯を見せて笑ってうなずいた。少しとがった八重歯が見える。
サフィさんの工房にはゴーレムらしき土人形的物体が一体鎮座しており、以前聞いた時、作り主は旅に出ていていないと言っていた。
「それは余!」
彼女が作り主らしい。
「スキア・ノトーリア・エクリプス! それが名だ!」
それが名らしい。
なんかこう、黒い外套といい、主張の激しい感じといい、そこはかとなく例の少女怪盗を彷彿とさせるな。
「どことなくオジサンとおなじ香りがしますね」
「女の子つかまえておっさんと同じ臭いとか失礼だな、きみ」
いや、そのおっさんじゃなくて。怪盗の方のおっさんね。怪盗の方のおっさんてなんだよ。
「スキアはね、珍しい鉱石をさがしに【ストレイト】まで行ってたらしいんだけど……」
サフィさんが説明してくれる。
【独立鉱業都市ストレイト】――ドワーフたちの町で、鉱山採掘や鉱業がさかんな都市国家である。
「そう!」
がたん、とまたスキアさんが立ち上がってうなずいた。
「決して錆びないと言われている幻の金属『オリハルコン』! 余はそれを探しに行っていた!」
「……聞いたことあります。超希少金属ですよね。魔力を増幅させる性質もあるっていう」
存在するという文献は多数あるが、一般には流通していないし、鉱床が発見されたなんて話も聞かない。
ほぼ伝説上の金属だ。
「そうだ! 聡いのは関心だな後輩!」
「見つかったんですか?」
「聞きたいか?」
ふふふと不敵に笑いながらスキアさんは顔を近づけてくる。美人だから少しどぎまぎしてしまう。
「ええ、まあ、聞きたいです」
「なかった!」
なかったんかい。
「でもすごいですね。ほしい素材を求めて旅までするなんて。ゴーレムのレシピとかもそうやって手に入れたんですか?」
「あれはゴーレムに似せているだけで伝説のゴーレムを復活させたわけではない。ゴーレムは製法が失われていて、完全に解明されたわけではないからな。余が現存の資料をもとに中途半端に再現しただけにすぎん。動かすことはできるが、伝説のように半永久的に動かないのだ。定期的な魔力供給が必要になる」
伝説のゴーレムとは『真理』という文字が削られない限りは主人の命令どおりに動き続ける土人形というものだ。
似せただけでも、こんなものを作れるのはすごい。
俺は改めてゴーレムを見た。
……この居候のことをいつも見ていたけど、毎回思ってた疑問があるんだよな。
「そういやこいつ、どうやってこの工房から出すんです? 大きすぎて出れなくないですか?」
「…………」
スキアさんはすとんと椅子に座り直して腕を組んだ。
ゴーレムは結構な大きさで、結構な重量のように見受けられる。
少なくとも、絶対にドア通れない。
もう慣れたが、掃除とかするときにわりと邪魔なのである。
「後輩!」
「はい」
「細かいことを気にしていたらすぐにハゲるぞ!」
「えぇー……」
もしかして出せないの? 作ったはいいけど外に出せなくて仕方なく工房内に置いてるの?
「ちょうどいい。後輩、お前の実力を測ってやる」
「お、俺の?」
「このゴーレム、工房を一切壊さず外に出してみるがいい!」
めんどくせえぇー! この人!
俺に問題押し付けるつもりだ!
ドアや窓からは出せなさそうなゴーレムを外に出す……いや、どうやって?
サフィさんを見ると、
「工房のどこか壊したら弁償ねー」
暇つぶしができたと言わんばかりの表情でニコニコ紅茶を飲んでいた。
「もし見事外に出すことができたら、余に対して好きなだけドヤ顔できる権利をやろう」
いらねえ……。
「副賞として、ストレイトで手に入れた希少金属『アダマンタイト』――これを後輩にわけてやろう」
「!」
それはちょっと欲しい!
アダマンタイトは固くて加工の難しい金属だが、それゆえに丈夫で、魔力もよく伝達してくれる。
希少な金属の一つで、とてつもなく高価だ。
おすそわけしてもらえるなら、ぜひもらいたい。
「で、どうする? べつに断ってもいいんだぞ」
スキアさんが挑発的に笑った。
サフィさんの工房でお茶を出すと、座っていたスキアさんは立ち上がった。
「はは! いつの間にか余に後輩が出来ていたとはな!」
「あのゴーレムを作ったのって」
質問すると、スキアさんは歯を見せて笑ってうなずいた。少しとがった八重歯が見える。
サフィさんの工房にはゴーレムらしき土人形的物体が一体鎮座しており、以前聞いた時、作り主は旅に出ていていないと言っていた。
「それは余!」
彼女が作り主らしい。
「スキア・ノトーリア・エクリプス! それが名だ!」
それが名らしい。
なんかこう、黒い外套といい、主張の激しい感じといい、そこはかとなく例の少女怪盗を彷彿とさせるな。
「どことなくオジサンとおなじ香りがしますね」
「女の子つかまえておっさんと同じ臭いとか失礼だな、きみ」
いや、そのおっさんじゃなくて。怪盗の方のおっさんね。怪盗の方のおっさんてなんだよ。
「スキアはね、珍しい鉱石をさがしに【ストレイト】まで行ってたらしいんだけど……」
サフィさんが説明してくれる。
【独立鉱業都市ストレイト】――ドワーフたちの町で、鉱山採掘や鉱業がさかんな都市国家である。
「そう!」
がたん、とまたスキアさんが立ち上がってうなずいた。
「決して錆びないと言われている幻の金属『オリハルコン』! 余はそれを探しに行っていた!」
「……聞いたことあります。超希少金属ですよね。魔力を増幅させる性質もあるっていう」
存在するという文献は多数あるが、一般には流通していないし、鉱床が発見されたなんて話も聞かない。
ほぼ伝説上の金属だ。
「そうだ! 聡いのは関心だな後輩!」
「見つかったんですか?」
「聞きたいか?」
ふふふと不敵に笑いながらスキアさんは顔を近づけてくる。美人だから少しどぎまぎしてしまう。
「ええ、まあ、聞きたいです」
「なかった!」
なかったんかい。
「でもすごいですね。ほしい素材を求めて旅までするなんて。ゴーレムのレシピとかもそうやって手に入れたんですか?」
「あれはゴーレムに似せているだけで伝説のゴーレムを復活させたわけではない。ゴーレムは製法が失われていて、完全に解明されたわけではないからな。余が現存の資料をもとに中途半端に再現しただけにすぎん。動かすことはできるが、伝説のように半永久的に動かないのだ。定期的な魔力供給が必要になる」
伝説のゴーレムとは『真理』という文字が削られない限りは主人の命令どおりに動き続ける土人形というものだ。
似せただけでも、こんなものを作れるのはすごい。
俺は改めてゴーレムを見た。
……この居候のことをいつも見ていたけど、毎回思ってた疑問があるんだよな。
「そういやこいつ、どうやってこの工房から出すんです? 大きすぎて出れなくないですか?」
「…………」
スキアさんはすとんと椅子に座り直して腕を組んだ。
ゴーレムは結構な大きさで、結構な重量のように見受けられる。
少なくとも、絶対にドア通れない。
もう慣れたが、掃除とかするときにわりと邪魔なのである。
「後輩!」
「はい」
「細かいことを気にしていたらすぐにハゲるぞ!」
「えぇー……」
もしかして出せないの? 作ったはいいけど外に出せなくて仕方なく工房内に置いてるの?
「ちょうどいい。後輩、お前の実力を測ってやる」
「お、俺の?」
「このゴーレム、工房を一切壊さず外に出してみるがいい!」
めんどくせえぇー! この人!
俺に問題押し付けるつもりだ!
ドアや窓からは出せなさそうなゴーレムを外に出す……いや、どうやって?
サフィさんを見ると、
「工房のどこか壊したら弁償ねー」
暇つぶしができたと言わんばかりの表情でニコニコ紅茶を飲んでいた。
「もし見事外に出すことができたら、余に対して好きなだけドヤ顔できる権利をやろう」
いらねえ……。
「副賞として、ストレイトで手に入れた希少金属『アダマンタイト』――これを後輩にわけてやろう」
「!」
それはちょっと欲しい!
アダマンタイトは固くて加工の難しい金属だが、それゆえに丈夫で、魔力もよく伝達してくれる。
希少な金属の一つで、とてつもなく高価だ。
おすそわけしてもらえるなら、ぜひもらいたい。
「で、どうする? べつに断ってもいいんだぞ」
スキアさんが挑発的に笑った。
応援ありがとうございます!
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