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100 ためしに空へ飛ばしてみる
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気付けば夜になっていた。
その後何度か試作をし、実際に飛ばしてみて使用感を確かめながら調整し――『自動探知気球ルキフゲ』が完成した。熱中しすぎて時間を忘れてしまった感がある。
最終的に1メートルほどの大きさになった。
制作した『ルキフゲ』は2種類。
一つはおおまかな情報をもとに、上空から対象と思われるものを記録の魔法石で記録する役割のもの。
もう一つは、その記録した像をもとに、正確な対象を探知し光の魔法石で知らせる役割のものだ。
二段階の探知で正確に対象を見つけ出せる。
原理は試作品と同じで、熱気球の原理を利用し上空から捜索をしてくれる。設定次第では、グレント以外の犯罪者が逃亡した場合でも捜索ができるはずだ。
辺境伯軍からの依頼なので守秘義務があるんだけど、実験中、何をしているのかと領民の人たちが集まってきてごまかすのに苦心してしまったのは内緒だ。
スキアさんの作った殺意の高すぎるタイプの『ルキフゲ試作1号』はというと、サフィさんの工房に飾られている。
「あとはこれを辺境伯軍に納品すればお仕事完了だね」
サフィさんは満足そうだ。
「いえ、俺はこれ、納品の前にちゃんと使ってみたいです」
外で飛ばしはしたが、ちゃんと犯罪者を見つけられるかどうかは確認していない。
納品前に、使用感を見ておきたい。
「たしかにそうだけど、ぼくらが使う機会ある?」
「うーん、一般の領民に対して使うわけにはいきませんからね。俺たちでかくれんぼでもしてみますか?」
辺境伯軍に納品するから機密扱いだし、領民に使ったらストーカーになりかねない。
「ちょうどよく犯罪者が近くにいれば実験できるんだがな」
スキアさんが言った。
「いや、さすがにそんな都合よくいないですよ」
グレントもすでに遠くに逃げていたら、試しに探してみるどころではないしな……。
逃亡中の犯罪者なんてそんなわらわら現れても困る。
「いっそのことサフィの工房に攻めてくれば、余が作った試作1号も試せるんだがなぁ」
「あー、そうだねえ。それはいいね。工房壊れるけど。弁償してくれる?」
「金がないので、余のありがたい髪の毛を一本やろう」
「抜け毛じゃん、ただの。アダマンタイト没収」
会話を聞きながら、俺は試しに描いたグレントの似顔絵を魔法石に記録させて、ルキフゲの探知魔法を起動してみた。
「あれ……?」
発見を知らせる光の魔法石が光った。
「サフィさん、なんかグレント探知したみたいです」
首をかしげながら報告すると、サフィさんとスキアさんは気球の周りに集まって来た。
「何これ……絵うっま」
「そうですか? いや、そっちじゃなくて」
サフィさんは俺の描いた絵を見て感心していた。うろ覚えで描いたが、わりと再現度は高いと思っている。
スキアさんは立ち上がる。
「いい気になるなよ後輩! 余の方がうまい! 余とお絵描き対決だ!」
「対決じゃなくて、みんなでお絵描き大会でもしますか? 休みの日にでも」
「今すぐやるぞ!」
お絵かき大会は置いておいて、いまだ光の魔法石は消えない。間違いや欠陥でないとするなら……さて。
光は、しかしうっすらとしか点いていない。
実際に空に飛ばしてみると、はっきり光るかもしれないし、間違いなら消えるだろう。
俺は窓を開けて、魔力をこめた『ルキフゲ』を空に飛ばしてみる。
その後何度か試作をし、実際に飛ばしてみて使用感を確かめながら調整し――『自動探知気球ルキフゲ』が完成した。熱中しすぎて時間を忘れてしまった感がある。
最終的に1メートルほどの大きさになった。
制作した『ルキフゲ』は2種類。
一つはおおまかな情報をもとに、上空から対象と思われるものを記録の魔法石で記録する役割のもの。
もう一つは、その記録した像をもとに、正確な対象を探知し光の魔法石で知らせる役割のものだ。
二段階の探知で正確に対象を見つけ出せる。
原理は試作品と同じで、熱気球の原理を利用し上空から捜索をしてくれる。設定次第では、グレント以外の犯罪者が逃亡した場合でも捜索ができるはずだ。
辺境伯軍からの依頼なので守秘義務があるんだけど、実験中、何をしているのかと領民の人たちが集まってきてごまかすのに苦心してしまったのは内緒だ。
スキアさんの作った殺意の高すぎるタイプの『ルキフゲ試作1号』はというと、サフィさんの工房に飾られている。
「あとはこれを辺境伯軍に納品すればお仕事完了だね」
サフィさんは満足そうだ。
「いえ、俺はこれ、納品の前にちゃんと使ってみたいです」
外で飛ばしはしたが、ちゃんと犯罪者を見つけられるかどうかは確認していない。
納品前に、使用感を見ておきたい。
「たしかにそうだけど、ぼくらが使う機会ある?」
「うーん、一般の領民に対して使うわけにはいきませんからね。俺たちでかくれんぼでもしてみますか?」
辺境伯軍に納品するから機密扱いだし、領民に使ったらストーカーになりかねない。
「ちょうどよく犯罪者が近くにいれば実験できるんだがな」
スキアさんが言った。
「いや、さすがにそんな都合よくいないですよ」
グレントもすでに遠くに逃げていたら、試しに探してみるどころではないしな……。
逃亡中の犯罪者なんてそんなわらわら現れても困る。
「いっそのことサフィの工房に攻めてくれば、余が作った試作1号も試せるんだがなぁ」
「あー、そうだねえ。それはいいね。工房壊れるけど。弁償してくれる?」
「金がないので、余のありがたい髪の毛を一本やろう」
「抜け毛じゃん、ただの。アダマンタイト没収」
会話を聞きながら、俺は試しに描いたグレントの似顔絵を魔法石に記録させて、ルキフゲの探知魔法を起動してみた。
「あれ……?」
発見を知らせる光の魔法石が光った。
「サフィさん、なんかグレント探知したみたいです」
首をかしげながら報告すると、サフィさんとスキアさんは気球の周りに集まって来た。
「何これ……絵うっま」
「そうですか? いや、そっちじゃなくて」
サフィさんは俺の描いた絵を見て感心していた。うろ覚えで描いたが、わりと再現度は高いと思っている。
スキアさんは立ち上がる。
「いい気になるなよ後輩! 余の方がうまい! 余とお絵描き対決だ!」
「対決じゃなくて、みんなでお絵描き大会でもしますか? 休みの日にでも」
「今すぐやるぞ!」
お絵かき大会は置いておいて、いまだ光の魔法石は消えない。間違いや欠陥でないとするなら……さて。
光は、しかしうっすらとしか点いていない。
実際に空に飛ばしてみると、はっきり光るかもしれないし、間違いなら消えるだろう。
俺は窓を開けて、魔力をこめた『ルキフゲ』を空に飛ばしてみる。
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