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しおりを挟むゴッゴーシュへ向け出発してから数時間、用意してきたお弁当を食べた後の事でした。
「ヴィオラ、実はその……お願いがあるんだ……」
「はい、何でしょう?」
クリード様が何か言いづらそうにしていたので、もしかしたらお弁当がお口に合わなかったのかと不安になっていると、
「なんていうか、恋人が出来たらしたい事があって……」
「――えっ……は、はい」
二人きりの時の話し方……。 わたしは一体何を言われるのか、期待と不安でいっぱいになってしまいました。
「何でも言ってください……わたしが出来ることでしたら……」
「う、うん」
そしてそのお願いとは、
――――木陰で膝枕をして欲しい……というものでした。
そう言った時のクリード様があんまり可愛らしくて、でもそう言ったらきっと不機嫌になるでしょうから、わたしはそれを言うのを必死に堪えました。
「「………」」
キレイな銀の髪がわたしの膝に乗り、目を瞑る横顔はまさに眼福……。 本当は髪を撫でたりしたかったのですが、ドキドキし過ぎて何も出来なかったのが残念です。
それからまた馬を走らせ、芸術の港町、そんなに離れていた訳では無いのに懐かしく感じるゴッゴーシュが見えてきました。
「やっぱり、キレイな街ですね……」
沢山の良い思い出をくれた街。 それをあの日、たった一枚の手紙でわたしは飛び出してしまった……。
「ヴィオラ、心の準備はいいかい?」
「……はいっ」
お世話になった皆さんにちゃんと謝ろう。
そうしなくては、クリード様とこれからやっていく資格がありません。
「クリード様、ここで大丈夫です」
港の近くで馬から降ろしてもらい、ここからは一人でと決心を固めます。
「ありがとうございました」
「いや、私の方こそすまない、巡回が約束で住まわせてもらってるから」
「そんな、無理をして頂いたのに謝らないでください」
「「………」」
三日後、その間にお部屋の引き払いや身支度を整え、クリード様のお迎えを待つ。 その会えない時間を思うと……
「――ヴィオラッ!!」
「っ……」
別れを惜しみ見つめ合っていた時、わたしを抱きしめたのはクリード様ではなく――――
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