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第17話 楽しいハロウィン

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 スマホを構えるアリスとミアにキャロラインは苦笑いしながらアリスとミアを見て笑顔を浮かべる。

「あなた達も素敵じゃない! アリスは髪を黒くしたの?」
「はい! ああ、可愛すぎる……シエラが居たら、絶対発狂してた!」

 何せシエラも立派なキャロライン厨である。アリスはキャロラインをしっかり写真に収めると、飛び跳ねるような勢いで他の仲間たちの元に向かう。

「ラ~イラ~! 写真撮ろ~!」
「アリス! まぁ、素敵! あの絵はこういう服だったのね」

 アリスにあらかじめ見せてもらったイラストは一体何が描かれているのかさっぱり分からなかったが、実際にアリスが着ている衣装はとても可愛い。あちこちに蝙蝠が刺繍された短いドレスに、黒髪のアリスはとても新鮮だ。

 そういうライラはクマの耳をつけている。ホープキンスに手渡されたのがクマ耳だったのだ。

「ちょっと、これ何? 尻尾邪魔なんだけど」
「リー君、似合ってる! 猫耳可愛い! 写真写真!」
「リー君はまだいいっすよ。俺、これ何の生き物っすか?」

 猫耳をつけたリアンの後ろから現れたのは、おでこに一本の角をつけたオリバーだ。それに答えるのはキリである。

「それはユニコーンだそうです。まぁ、はっきり言って手抜きです」
「……だと思ったっすよ!」

 おでこに粘土で出来た角をつけただけなのでほぼオリバーである。ちなみにドロシーとサシャは妖精の羽根を着けられていた。それは大変似合っていたので、まぁ良しとしておく。

「ユニコーンもヤバいけどルイスも相当だと思うんだ。ちなみに俺は……猫? キツネみたいな尻尾だけど」
「それはチェシャ猫ですよ! へへ! 趣味全開で作ってみました! 名前にちなんで!」
「チェシャ? なにそれ」
「あっちの世界の有名な猫だよ。いいじゃない、カイン。似合ってる似合ってる」
「……」

 そう言って笑うノアとアリスとキリは相当手の込んだ衣装で何だか憎らしい。来年は絶対にこの三人を圧倒するような衣装にしようと既に心に誓ったカインだ。

「僕はこれ……犬ですか? 作ったの、アリスさん?」

 アランが自分の尻尾の先を抓んで言うと、アリスは笑顔で頷く。犬というよりは何か得体のしれない生き物の尻尾になっているのはこの際そっとしておこう。

「夫婦お揃いだよ! チビアリスも似合ってる!」
「あ、ありがとう……」
「お前たちはいいじゃないか。どれもそれなりだろ」

 そう言って一番最後にやってきたのはカボチャを被ったルイスだ。暑いうえに重い。とにかく重い! 首がもげそうである!

「せっかくだからやっぱり大きなカボチャも被ってもらいたかったんだ。ルイス、一番僕たちが苦労して作ったんだよ。大事に被ってね」

 笑いを堪えながらそんな事を言うノアが憎くてならないルイスだが、王子の衣装にカボチャの頭のルイスは誰よりも人気だった。
 

「父さま、お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ!」
「ノエル! はい、どうぞ。アーモンドクッキーね」
「父さま~! イタズラしちゃうぞ~! 一杯くれないとあちこち齧っちゃうぞ~」
「ははは! アミナスにはフルーツクッキーの詰め合わせをあげよう」
「ノア様、お菓子をくれないとイタズラします」
「出来ればチョコレートのをください」
「はいはい。双子にはチョコクッキー、と」

 一人一人にクッキーを配ると、続いてライアン達がスキップしながらやってくる。

「ノアさん! お菓子をくれないと噛みつくぞ!」
「ノア様、お菓子くれないと予言しちゃいます!」
「ついでに過去も暴いちゃうかも!」
「じゃあ俺は妖精にお願いしてめちゃくちゃ細かい三つ編みいっぱい作ってってお願いしちゃおうかな!」
「それは怖いね。ていうか、イタズラの幅が広すぎない? はい、ブラウニー。皆ちゃんと楽しんでる?」
「ああ! アミナスのカゴは二杯目だって言ってたぞ! 俺ももうちょっとで一杯だ。ほら!」
「私ももうちょっとで一杯! 次はうちの両親の所に行こうよ! そろそろお菓子が切れていい奴が出てくる気がする!」

 嬉しそうにローズが言うと、それを聞いて子供たちはノアにお礼を言って駆けだした。

「……アミナスってば……一人から何回もらってるんだろう……」

 流石アリスの娘である。どうやらここぞとばかりに意地汚く皆にお菓子をせびりに行っているようだ。


「キュキュ~!」
「ドン! ドンにはじゃあ、怖い思いしたからライト家特製ジャーキーな! スキピオは卵の番か?」
「キュ!」
「そうか! じゃあこれはスキピオに持って帰ってやって。仲良く食べるんだよ」
「キュ~!」

 つい先程怪我をしたばかりだと言うのに、ドンはノア作のティアラを頭に付けて嬉しそうにジャーキーを握りしめてバセット家の納屋に帰っていく。

 ちゃんとノアの言いつけを守ってスキピオとレッドαと卵を持って戻ってきたのだ。

 そんな姿を目を細めながら見ていたカインの前には、既にブリッジ一家や狼達やクマ一家が並んでいる。イタズラされたらカインなど恐らく即死である。一齧りが命取りだ。

「お前ら皆、可愛いなぁ~! シルクハットなんて被っちゃってさ~」
「カイン、写真はいいから早くおやつあげないと。ちび達の涎が凄いことになってるよ」

 カインの隣で一生懸命動物たちにおやつを渡すオスカーとマーガレット。このおやつはライト家から大量に持ち込んだ動物たち専用のお菓子である。

 ノアから聞いたハロウィンでは動物も参加すると聞いていたので、急いでルードとあちこちから取り寄せたのだ。そのおかげでさっきから動物ばかりがカインたちの前に並び、一向に人間の子供がやってこない。

「カイン~! 私もお菓子貰ってきちゃった! キャシーのバターサンド大人気だったよ!」
「フィル! どこに行ってんのかと思ったら! 後でちょっと分けてよ」
「うん。あと、パパにもあげてきたよ。キャシーのバターサンド」

 こそこそと言うフィルマメントに頷いたカインは、フィルマメントの頭を撫でる。

「偉かったな。もうちょっとだけ我慢しような」
「うん」

 フィルマメントはそう言ってカインに身を寄せた。目の前に父が居るのに会話も出来ないのは切ない。もしかしたら妖精王もそう思っていたのかもしれない。

 なぜなら、フィルマメントが妖精王の目の前でしゃがみこんでお菓子を渡したら、妖精王はお菓子を受け取って嬉しそうにすり寄ってきたから。背中を軽く撫でてそのまま別れたが、少しだけ泣きそうになってしまったのは秘密だ。

「元気そうで安心した」
「だな。俺も後でお菓子渡してくるよ」
「うん、そうしてあげてくれると嬉しい」


「そろそろお菓子生き渡ったかな~? このままバーベキューに突入するぞ~!」

 アリスの声にあちこちから歓声が聞こえてきた。それに続いてゾロゾロと仲間たちもすっかり慣れたバーベキューのお皿を貰いに行く。

「何だかすっかり慣れてしまったわね」
「このバーベキューからの温泉がもう最高なんだ! ノア、流石に食べるときは取ってもいいか?」
「もちろん。あ、アリス、あの光景面白いから写真撮っといてよ」

 そう言ってノアが向けた視線の先には、カボチャ頭の子供たちがお揃いのローブを着て器用にカボチャの隙間から肉に齧りついている。

「ふっは! ちょ、俺も撮っとこ。親父たち喜びそう」
「ああなると本気で誰が誰だか分からんな! アミナス以外は」
「それは言えてる。アミナスだけは何被っててもすぐに分かるね。あの両手に串二本ずつ持ってるの、絶対アミナスでしょ?」

 白い目を向けるリアンにノアもアリスも笑って頷く。

「流石ですね。そして親子そっくりですね」

 アランの言葉に全員が笑った。アリスもまた両手に串を二本ずつ持っているので、やはり血は争えない。

 一時はどうなることかと思ったが、とりあえず今回の所は大きな騒ぎになる前に片付いて良かった。問題はまだまだ山積みだが、今は心の底から楽しみたい。
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