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第152話 親の思いと子供の恋人

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「キリはね、頑固なんだよ! 私なんてしょっちゅう豚小屋に入れられてる! お嬢様なのに!」
「それはアミナスが悪いことするからでしょ? そんな訳だからレックス、僕たちは君が頼ってきてくれた事が本当に嬉しいんだ。一緒に頑張って鍵を探そうね!」
「そうしてもらえると助かる。ノエルがノアから傍受した話ではメイリングがまた悪さをしようとしてるって事だった。あそこはもうずっと歪だ」
「そうなのですか?」
「うん。ディノに聞いた話では最初のメイリング王は元々姉妹星からやってきた人だったって聞いた」
「えぇ⁉ そ、そうなの⁉」
「そう。当時のメイリング王がその星出身なんだって。そしてその子孫の一人が僕だって。姉妹星の人間だからもちろん妖精王の加護はない。ディノはそれをとても可哀想だと思ったみたい。どうにか助けてやりたいと思っていた。でもそれが裏目に出たんだと思う」
「と、言いますと?」
「メイリングの王は多分ディノを利用しようとしたんだ。裏切られたディノは酷く傷ついたんだと思う。その話をする時はいつもディノは泣きそうな顔してたから。その後ディノはメイリング王がこの星に持ってきた異文化と、メイリング王に捨てられた下の王子を連れて地下に潜ったんだ。それがディノの箱庭の始まりだよ」
「ディノの箱庭……良いなぁ。私も行ってみたい!」
「アミナスも妖精王の加護があるから入れない。でもどうしてアリスは入れたんだろう……」

 首をかしげるディノにそこに居た全員が首を傾げるが、そんな中アミナスだけは何時ものようにニカッと笑った。

「そんなの、母さまだからだよ! ディノはきっと母さまの事大好きなんだと思うな!」
「そんな単純な話ですか?」
「お嬢様のいつものお花畑です」

 レオとカイが言うとノエルもうんうんと頷くが、レックスだけは腕を組んで考え込んでいる。

「あながち間違いではないかもしれない。ディノはアリスが好きだと言うのはあってる。だから米も持ってっていいって言ったんだ。という事は、もしかしたらアミナス達も地下に行ける?」

 ブツブツと呟くレックスに子どもたちは目を丸くした。もしかしてディノもまたアリスと同じ様にお花畑なのだろうか。そんな考えが頭の隅を過る。

「それとなく母さまに聞いてみようか。どうやって地下に入ったのか」

 ノエルが言うと、レックスは頷いた。結局それが一番手っ取り早い。

「今までの話をまとめると、レックスはメイリング王家の末裔で、本来なら既に亡くなっているけれど、ディノが鉱石でレックスの身体を作ったということですか」
「そう。ディノの魔法で動いてる。だからディノが僕を動かす魔法を解いたりこの身体が砕けたら僕は本当に死んでしまう」

 それを聞いてアミナスが怖い顔をして立ち上がった。

「嫌だよ! そんなの絶対に嫌! 私、レックスの事ちゃんと守るから!」
「うん、ありがとう。でも僕の身体は多分アミナス達よりもずっと頑丈だと思う」
「何せ鉱石ですもんね……ちょっとやそっとの事では確かに壊れなさそうですが、砕けたら終わりです。気をつけてください」

 やっぱり怖い顔をしてそんな事を言うレオにカイとノエルも頷く。そんな友人たちを見てレックスは少しだけ笑った。

「分かった。気をつける」

 一人であればこんな風に心配される事も無かった。そんな風に思うと、冷たい石で出来た心臓が少しだけ温かくなった気がした。



「ノア達、戻って来ないっすね」

 夕方になってもカインとノアは戻らず、オリバーとリアンはノアの机の上に置いてあった書きかけのノートの続きをまとめていた。

 シャルはさっきまでここで一緒になってノートをまとめていたが、シャルルに呼び出されてフォルスに行ってしまったのだ。

「まぁモルガナと対峙してるんでしょ? そうすぐに戻って来ないでしょ」

 いつまで経ってもノアが起きて来なかったので何かあったのかと思っていたら、ノアから寝ている所をキリに拉致されてエリスの所に居るという連絡が昼に入った。そしてそのままモルガナを拘束しに城へ行ってしまったのだ。

「何か情報あるといいんすけどね」

 オリバーは丁寧な字でノートを書き進めるライラの手元を見ながらポツリと言うと、そこにテオがやってきた。

「あれ、まだ皆戻ってないんだ」
「テオ、随分熱心に何してたの?」

 リアンが問うと、テオはコホンと咳払いをして言った。

「来年僕は受験なので。絶対に主席で合格するって決めてるんだ。そのために勉強しておかないと」

 そんなテオを見てライラは感心したように微笑んだ。

「偉いのね、テオ君。うちのジャスミンとローズにも聞かせてあげたいわ」
「で、でもジャスミンもローズも勉強、できますよね?」

 突然ライラに話しかけられてしどろもどろになるテオに答えたのはリアンである。
「あの子達は勉強が出来るんじゃないよ。勘で答えてるの。それが異様に当たるってだけ」
「そうなんすか?」
「そうなんだよ。だから決して頭が良い訳じゃないんだよね」

 異常なほど勘が良い二人は答案用紙を見ると答えだけが急に頭に浮かぶのだという。

「最初は鳶が鷹を生んだかと思ってました! 自分で言うのもなんだけど」
「まぁある意味鷹だよね。でも理屈とかが分かってる訳じゃないからさ、学園入ったらジャスミンに勉強教えてやってよ、テオ」
「まぁ、うん。たまになら」

 何だかんだ言いながらジャスミンと行動する事が多かったテオは、言われなくてもそうするつもりだ。

「あれ? ローズはいいんすか?」
「うん。ローズはもっと能力の方伸ばしたいらしくて、フォルス狙いだって言ってた」
「しっかりしてるっすねぇ」
「そうなの。ジャスミンよりもローズの方が案外将来をしっかり見てる気がするわ」

 ライラが言うと、それを聞いたテオが珍しくライラに歯向かった。

「そんな事ないです。ジャスミンもちゃんとしっかりしてる! そりゃローズほど強かじゃないけど、ふわふわしてるけど、それがあいつの良い所だから」

 真っ赤になってそんな事を言うテオを見てライラは目を輝かせ、リアンは青ざめている。そしてそんな3人をオリバーはニヤけそうになるのを堪らえながら見ていた。目の前で繰り広げられる謎の三角関係の行末を。

「娘を持つお父さんは大変っすね、リー君」
「うっさい! サシャに妹でも出来ちゃえ!」
「それ、暴言じゃなくてただの甘言っすよ」

 でも実際に娘を持つと自分もこんな風に悩んだりするのだろうか? そう考えると不思議だ。

 そんな事を話していると、ようやくカインとノアが城から戻ってきた。

「ただいま~」
「戻ったよ。あ、続き書いててくれてたんだ。ありがとう」
「いえ、私はこんな事と電気を充電する事ぐらいしか出来ないので」
「いや、それで十分じゃね?」

 謙遜してそんな事を言うライラにカインが苦笑いを浮かべると、何故か火花を散らしているオリバーとリアンを見て首を傾げた。

「この二人どうしたの? 何かあった?」
「それが――」

 ヒソヒソとテオがあった事をカインに伝えると、カインはおもむろにノアの肩に手を置いた。

「お前たち、ここにも娘が居る父親が居るぞ。なぁノア、アミナスがある日恋人連れて来たらどうする?」
「どうするって……裸にして森に放り出すけど?」

 シレっと答えたノアにリアンもオリバーも顔をひきつらせた。

「せめてもうちょっと人道的なやり方で反対出来ないんすか?」
「そうだよ。あんたそんな事したらアミナスに嫌われるよ?」
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