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第178話 肝心なのは一次ソース

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「そうですね。俺もそう思います」

 はっきりと言い切った双子にノエルは苦笑いを浮かべて尋ねた。

「ねぇ、いっつも思うんだけど、二人に怖いものって何かある?」
「父さんです。あと母さんの料理とアニーのギャン泣きが怖いです」
「同じくです」
「うん、それは確かに怖いね。そっか、僕は正直言うと聞きたいっていうのが本音かな。ねぇ妖精王、それを聞いたら何か戦況は変わる?」
「分からん。分からんが、少なくともディノのアリス達への見解は変わるかも知れん」
「なるほど。ディノに聞かせるためって事?」
「もちろんそれもあるがそれだけじゃないぞ! お前たちの事を我はもうただの子どもだとは思っていないからだ。今更何を聞いても動じないだろうと思ったのだ」

 握りこぶしを作って言う妖精王に子どもたちは頷いた。

「分かった。戻ったら聞いてみるよ。母さまたちが僕たちにここに隠れてるように言ったのは、戦況が危なくなってるって思ったほうがいいのかなって思うし」
「それはそうだよな。でなきゃ今まで通りそれぞれの領地手伝ってろって言ってただろうし」
「あと、こちらの話もちゃんとしておくべきかもしれんぞ。俺たちが親たちに黙っている事も結構あるからな!」

 それから子どもたちは会議室を使って今後の対策を取るべく相談しはじめた。

「オズ、どこ行くの?」
「俺はちょっと探検行ってくる。今まで入れなかった場所もレックスが居る事で入れるようになってるかもしれない」
「僕が居ても変わらない。今まで入れなかった場所はオズには無理だと思う」

 真顔でそんな事を言うレックスにオズワルドは珍しく表情を歪めた。

「……ダメか。レックスが一緒ならあるいは、と思ったのにな」
「どこまで招かれた?」
「客間までだな。ちなみにアリスは庭まで到達したぞ」
「うん、知ってる。若返ってたから」

 レックスはそう言って何か考え込む。

「レックス? どうかした?」
「アリスが庭まで行けたということは、もしかしたら皆も行けるかもしれないなって思ってた。僕が探してる鍵はディノの寝室にある。鍵穴を見てもらえば早いかもしれない」
「ん? 鍵って普通の鍵じゃないの?」
「違う。多分皆が想像しているような形ではないと思う」

 ディノの眼の鍵は特殊な形をしている。ディノは今までに何度も鍵の形を変えてきたと言っていた。今回の鍵を作ったのはレックスの父親だ。だからこそ兄は鍵の形を知っていて盗み出す事に成功したのだろう。

 レックスはそこまで言ってふと顔を上げてオズワルドを見た。

「なんだよ?」
「アリス達をここに運べる?」
「出来るけど、なんで」
「秘密を全部話してもらう。もちろん僕の秘密も話す。鍵がメイリングにまた戻ってしまうのだけは避けたいし、オズワルドと妖精王にも聞いて欲しい。僕たち地下の住人の事を」
「……それを俺が聞いても、俺は何もしない。俺は別にお前たちの仲間って訳じゃない。それでも?」
「それでも。ディノは星と常に対話してる。星もそろそろ我慢の限界だ。本当に怖いのはメイリング王でもオズワルドでも妖精王でもヴァニタスでもない。星だ。星には自我がある。今はディノがどうにか抑え込んでいるが、これ以上はきっと許されない」

 真顔でそんな事を言うレックスにオズワルドは頷いた。

「分かった。お前たちの仲間でもないけど、肝心の星が爆発したら意味がない。アリス達をここへ呼ぶ。呼ぶが、話が終わったらすぐに戻すぞ? 向こうは向こうで忙しそうだ」

 言いながらオズワルドは本を開いた。アリス達の名前がチカチカと激しく光っている。きっと何かに巻き込まれ、危機にさらされているのだろう。

「うん、それでいい」
「それじゃ、呼ぶぞ」

 オズワルドはそう言って詠唱して空中に魔法陣を描いた。
 
 
 
「こっちだよ!」

 山の麓で一足先に騎士団達と合流していたリアンが、山を駆け下りてきたアリス達に向かって手を振ると、アリスは器用に走りながら飛び跳ねて手を振ってくれた。

「リーくぅん! ライラぁ~! ついでにモブぅ~!」

 アリスは叫びながら前を走っていたノアを追い抜いてスキップをしながら山を駆け下りる。そんなアリスを見ながらオリバーがぽつりと呟く。

「……何で俺だけいっつもついでなんすかね」
「しょうがないよ。あんた、そういう役どころだから」
「……」

 それを言ってはおしまいでは? 思わずそんな視線をリアンに向けつつオリバーは騎士たちに言った。

「完了したみたいっす。それじゃあ蒼の騎士団の人たちは連中を追ってほしいっす。何か見つけたらすぐに連絡よろしくっす。紅の騎士団の人たちはこれを使って一旦戻ってルイスの護衛してきてほしいんすよ。あっちはアンソニーと王妃が変な動きしてるみたいなんで」
「了解した。それでは皆、気をつけて。必ず戻れ」

 紅の騎士団長が言うと、蒼の騎士団の面々が掴めない笑顔を浮かべた。

「ああ、当然だ。命あってこそだからな。それに関しちゃ俺らは誰よりもよく理解してる」
「そうよ。私達ほぼ盗賊だったんだもの。盗賊の気持ちは誰よりも理解してるわ」
「……そうか。あまり褒められた事ではないが、今は褒めておくよ。ではな」

 そう言って紅の騎士団長ゾルはオリバーから受け取った妖精手帳を使って紅の騎士団を引き連れてレヴィウスに向かった。

 しばらくしてようやく麓まで下りてきたルーイの元に蒼の騎士団が集まる。

「隊長、そういう訳なんで俺たちは奴らのアジトを探してくるわ。入り口見つけたらすぐに連絡するから、あんた達はちょっと休んでな」
「ああ、ありがとう。では任せる」
「頼もしいねぇ~ありがとぉ~。気をつけてねぇ~」

 肩で息をしながら手を振るユーゴを見て苦笑いを浮かべながら蒼の騎士団はそれぞれ散っていった。

「あれ? 紅の騎士団は?」

 ノアが問うと、オリバーは手短にレヴィウスで起こっている事を話しだした。あちらはあちらで大変なようだと察したノアは頷いて、今しがた駆け下りてきた山を見上げると、あちこちで爆発音が聞こえてくる。

「あんた達何したの?」

 爆発音を聞きながらリアンが言うと、ノアはニコッと笑っただけだったが、それを補足するみたいにアリスが横から首を突っ込んできた。

「えっとね、兄さまがね、いっつもみたいにけちょんけちょんに言って仲間割れさせたんだよ! 女王命とか言っときながら兄さまの言うこと信じちゃうんだもんなぁ。私なら絶対信じないな! 推しの口から聞いた話ではないと信じない!」
「たとえそれが嘘でもですか?」

 アメリアなどほぼ全て嘘をついているのではないかと思うほど疑わしい相手なのだが。

「キャロライン様は嘘なんてつかないもん! 嘘ついてる時は目が泳ぐからすぐ分かる! そもそもあの人達は人を見る目が無さ過ぎ! 直感死んでんじゃないの?」

 何でも基本直感で考えるアリスがニカッと笑うと、ライラも納得したように頷いた。

「それは本当にそう思います。最後の戦いの時にアメリアが画面に映し出された時、私と父さまは思わず身震いしてしまいました。あの人は良くないです」

 スピリチュアルの方面に才能をぐんぐん伸ばしているライラがそんな風に思うほど、アメリアが纏う空気は異様だった。

「そうなんだ?」

 そんな事は初めて聞いたとばかりにリアンが言うと、ライラはコクリと頷いた。

「どこかですれ違ったら絶対にすぐに分かる自信があるわ。それぐらいあの人は強烈よ。アリスが大地の化身なら、あの人は悪魔の権化って感じ。まぁ、悪魔は大地には絶対に勝てないけど!」
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