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第399話 ディノの強敵?
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「むむむ、やはり星は我を良く思っていないかもしれん」
妖精王が一歩進むごとに強くなる圧を堪えながら肩で息をしながら言うと、そんな妖精王をルークが支えてくれた。
「爺ちゃん大丈夫? おんぶしようか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう。……お前たちは何とも無いのか?」
額の汗を拭いながらふと妖精王が子供たちを見回すと、子供たちは全員ケロリとしている。アミナスなど意味なくそこら中にある氷柱によじ登ったりして上機嫌だ。
「うん、何ともないよ。何かあるの? 凄い汗だよ爺ちゃん」
「そうか……我にだけ圧をかけおって。星め、相手を見ているな?」
星に完全に信頼されている訳ではないだろうと思ってはいたが、流石にここまであからさまだと少しだけ悲しくなる。
そんな妖精王を見かねたのか、ルークが突然どこへともなく声を張り上げた。
「星さん! 悪いんだけど爺ちゃんへの圧力を解いてやってくんないかな? 爺ちゃんは君を守りたいんだ!」
ルークの叫びは氷に覆われた洞穴にどこまでもこだました。やがてこだまが聞こえなくなった頃、突然支えていた妖精王の身体から力が抜けた事に気づく。
「爺ちゃん大丈夫!?」
「ああ。身体が楽になった。お前のおかげだな。ありがとうルーク」
星はルークの声に応えるかのように妖精王に圧力をかけるのを止めた。
妖精王はホッと胸を撫で下ろして小さな声でもう一度お礼を呟くと、さらに奥へと歩き出す。
洞穴はどんどん地下に向かって進んでいた。
「ここも久しぶりに来る」
レックスが懐かしさに目を細めると、レックスとノエルの腕に捕まってスキップしていたアミナスが不思議そうに首を傾げた。
「レックスはここに来た事あるの?」
「うん。核の水は全てを癒やす不思議な水だから、石で出来た僕を浄化するにもちょうど良かったんだ」
「へぇ! 凄い水なんだね!」
「うん、すごい水。星が出来た時から少しずつ溜まった水で、当時はここが一杯になったら外に流れ出してた。でもディノがその水に気付いた時からそれを他所に保管してたんだ。ディノの一番大事な仕事は、ここの水が少なくなったらそこから追加する事」
「星の姫の為に?」
ノエルが聞くと、レックスはやはりコクリと頷いた。
「そう。不思議な太古の水はありとあらゆる病気や汚れを浄化する。ドラゴンの涙とも言われてるんだ」
「ドラゴンの……涙?」
「そうだよ。ドラゴンの涙が地面に染み込んで、いつしか不思議な水になって核に辿り着くって、そう言われてたみたい」
「おもしろ~い! 早く行こ!」
アミナスはスキップを止めて小走りしだそうとした所でがっちりと首根っこをレオに掴まれた。
「お嬢様は大人しくしていてください。というよりも、これだけ道が凍っているのによく走ろうなどと思いますね」
「全くです。お嬢様の足の裏には靴さえも通り抜けるスパイクでも生えているのですか?」
レオとカイがそう言って不審げにアミナスの足を見ると、アミナスは片足を上げて靴底を見せてニカッと笑う。
「えへへ! 父さまに作ってもらったんだ! 私と母さまはすぐに木登りとか崖とか登ったりするから常に履いてなさいって」
アミナスの靴底にはびっしりとまるで剣山のように細かい針がついている。普通に歩く時は相当歩きにくいので常にスキップのアミナスだ。
そんな靴底を見てレオとカイが何かに納得したように頷いた。
「なるほど。こういう靴を履かせて日々の体力を削ろうとする旦那様と父さんの苦労が伺えますね」
「いっそお嬢様と奥様には鉄製のクソほど重い靴を履かせればいいのでは?」
「二人共、そんな事したらアミナスも母さまも無駄に鍛えられちゃうでしょ! これ以上やんちゃになったらどうするの!」
バセット家の子供たちがそんな事を言い合う中、それ以外の子供たちは首を傾げている。
「アリスにしてもアミナスにしても、やんちゃで済ませていいと思うか?」
「アウトだと思う。姉さまやライラさんもよく言うけど、アリスは災害だよ。それの娘も間違いなく災害でしょ」
「あそこの領地は昔から変なのだ。アリスにしてもアミナスにしても、あそこではちょっとお転婆でやんちゃで済まされてしまう。我らからしてもアリスやアミナスの本気は脅威なのだが……」
一体どんな遺伝子構造をしているのか、この二人の本気だけは予想がつかないだけに妖精王ですら恐れている。何せアミナスなどルーデリア観測史上最低最悪だと言われた大災害の日に生まれ落ちた娘だ。あれは星がアミナスの誕生を阻止しようとしたのか歓迎したのか未だに分からない。
「アミナスもアリスも母さまに言わせると大地の化身だそうだから仕方ないわ。それに父さまも二人のことを人間だと思った事ないって言ってるもの。だから多分、人間ではないわ」
「私もそう思う~。アリスとアミナスだけは一回もお告げ受けた事ないもん~」
今までに色んな人達に関してのお告げを受けたジャスミンとローズだが、アリスとアミナスだけは未だにお告げを聞いた事がない。多分それは運命ですら自分たちで捻じ曲げてしまう程の力があるからなのだろう。
「……アリスとアミナスにはもしかしたらディノも敵わないかもしれない……」
今までに散々アリスの伝説を聞いてきたレックスは、最近はディノよりもアリスを怒らせることの方が危険なのではないかと思い始めている。何よりもアリスはドラゴン達も簡単に従えてしまう。これはもうディノでも太刀打ち出来ないかもしれない。
そんな事を話しながら仲良く坂を下っていると、ようやく奥の方にほんのり明るい場所があるのが見えた。
「あれが核の入り口だよ。行こう」
レックスが言うと子供たちと妖精王がゴクリと息をのんで頷く。それを確認したレックスは、一歩一歩確実に足を進めた。
妖精王が一歩進むごとに強くなる圧を堪えながら肩で息をしながら言うと、そんな妖精王をルークが支えてくれた。
「爺ちゃん大丈夫? おんぶしようか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう。……お前たちは何とも無いのか?」
額の汗を拭いながらふと妖精王が子供たちを見回すと、子供たちは全員ケロリとしている。アミナスなど意味なくそこら中にある氷柱によじ登ったりして上機嫌だ。
「うん、何ともないよ。何かあるの? 凄い汗だよ爺ちゃん」
「そうか……我にだけ圧をかけおって。星め、相手を見ているな?」
星に完全に信頼されている訳ではないだろうと思ってはいたが、流石にここまであからさまだと少しだけ悲しくなる。
そんな妖精王を見かねたのか、ルークが突然どこへともなく声を張り上げた。
「星さん! 悪いんだけど爺ちゃんへの圧力を解いてやってくんないかな? 爺ちゃんは君を守りたいんだ!」
ルークの叫びは氷に覆われた洞穴にどこまでもこだました。やがてこだまが聞こえなくなった頃、突然支えていた妖精王の身体から力が抜けた事に気づく。
「爺ちゃん大丈夫!?」
「ああ。身体が楽になった。お前のおかげだな。ありがとうルーク」
星はルークの声に応えるかのように妖精王に圧力をかけるのを止めた。
妖精王はホッと胸を撫で下ろして小さな声でもう一度お礼を呟くと、さらに奥へと歩き出す。
洞穴はどんどん地下に向かって進んでいた。
「ここも久しぶりに来る」
レックスが懐かしさに目を細めると、レックスとノエルの腕に捕まってスキップしていたアミナスが不思議そうに首を傾げた。
「レックスはここに来た事あるの?」
「うん。核の水は全てを癒やす不思議な水だから、石で出来た僕を浄化するにもちょうど良かったんだ」
「へぇ! 凄い水なんだね!」
「うん、すごい水。星が出来た時から少しずつ溜まった水で、当時はここが一杯になったら外に流れ出してた。でもディノがその水に気付いた時からそれを他所に保管してたんだ。ディノの一番大事な仕事は、ここの水が少なくなったらそこから追加する事」
「星の姫の為に?」
ノエルが聞くと、レックスはやはりコクリと頷いた。
「そう。不思議な太古の水はありとあらゆる病気や汚れを浄化する。ドラゴンの涙とも言われてるんだ」
「ドラゴンの……涙?」
「そうだよ。ドラゴンの涙が地面に染み込んで、いつしか不思議な水になって核に辿り着くって、そう言われてたみたい」
「おもしろ~い! 早く行こ!」
アミナスはスキップを止めて小走りしだそうとした所でがっちりと首根っこをレオに掴まれた。
「お嬢様は大人しくしていてください。というよりも、これだけ道が凍っているのによく走ろうなどと思いますね」
「全くです。お嬢様の足の裏には靴さえも通り抜けるスパイクでも生えているのですか?」
レオとカイがそう言って不審げにアミナスの足を見ると、アミナスは片足を上げて靴底を見せてニカッと笑う。
「えへへ! 父さまに作ってもらったんだ! 私と母さまはすぐに木登りとか崖とか登ったりするから常に履いてなさいって」
アミナスの靴底にはびっしりとまるで剣山のように細かい針がついている。普通に歩く時は相当歩きにくいので常にスキップのアミナスだ。
そんな靴底を見てレオとカイが何かに納得したように頷いた。
「なるほど。こういう靴を履かせて日々の体力を削ろうとする旦那様と父さんの苦労が伺えますね」
「いっそお嬢様と奥様には鉄製のクソほど重い靴を履かせればいいのでは?」
「二人共、そんな事したらアミナスも母さまも無駄に鍛えられちゃうでしょ! これ以上やんちゃになったらどうするの!」
バセット家の子供たちがそんな事を言い合う中、それ以外の子供たちは首を傾げている。
「アリスにしてもアミナスにしても、やんちゃで済ませていいと思うか?」
「アウトだと思う。姉さまやライラさんもよく言うけど、アリスは災害だよ。それの娘も間違いなく災害でしょ」
「あそこの領地は昔から変なのだ。アリスにしてもアミナスにしても、あそこではちょっとお転婆でやんちゃで済まされてしまう。我らからしてもアリスやアミナスの本気は脅威なのだが……」
一体どんな遺伝子構造をしているのか、この二人の本気だけは予想がつかないだけに妖精王ですら恐れている。何せアミナスなどルーデリア観測史上最低最悪だと言われた大災害の日に生まれ落ちた娘だ。あれは星がアミナスの誕生を阻止しようとしたのか歓迎したのか未だに分からない。
「アミナスもアリスも母さまに言わせると大地の化身だそうだから仕方ないわ。それに父さまも二人のことを人間だと思った事ないって言ってるもの。だから多分、人間ではないわ」
「私もそう思う~。アリスとアミナスだけは一回もお告げ受けた事ないもん~」
今までに色んな人達に関してのお告げを受けたジャスミンとローズだが、アリスとアミナスだけは未だにお告げを聞いた事がない。多分それは運命ですら自分たちで捻じ曲げてしまう程の力があるからなのだろう。
「……アリスとアミナスにはもしかしたらディノも敵わないかもしれない……」
今までに散々アリスの伝説を聞いてきたレックスは、最近はディノよりもアリスを怒らせることの方が危険なのではないかと思い始めている。何よりもアリスはドラゴン達も簡単に従えてしまう。これはもうディノでも太刀打ち出来ないかもしれない。
そんな事を話しながら仲良く坂を下っていると、ようやく奥の方にほんのり明るい場所があるのが見えた。
「あれが核の入り口だよ。行こう」
レックスが言うと子供たちと妖精王がゴクリと息をのんで頷く。それを確認したレックスは、一歩一歩確実に足を進めた。
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