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第426話 ラピスラズリの部屋

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「おー、どうやら無事に会えたみたい」

 リアンが言うと、リアンのスマホを横からルーイとユーゴが覗き込んできた。

「いい写真だねぇ」
「本当だな。感動の再会といったところか。で、これはノアが仕組んだんだよな?」
「そだよ。こんなまだるっこしい事すんのあいつしか居ないじゃん。この子達がユアンと一緒に居る事知ってたからあいつを行かせたんでしょ」
「でもぉ、そんなの普通に皆で会えばいいじゃんねぇ?」
「そうはいかない。ユアンを見てみろ。ぱっと見、恋人同士の感動の再会だぞ? ノアがこれを見て黙ってると思うか?」
「思わなぁい」
「それね。目の前で親子と言えどもイチャコラされんの嫌だったんでしょ。で、ノエルとレオも行ってくる?」

 一応、行儀よく言いつけを守ってここに残ったノエルとレオに尋ねると、二人は苦笑いを浮かべて首を振った。

「いえ、俺はいいです」
「僕も。絶対に泣いちゃいそうだし。後でアミナスとカイに何があったか聞くよ」
「そ? あんた達は本当に良い子だね。もっと無茶してもいいのに」
「リー君、そのアドバイスはどうなんだ?」
「自分の事じゃないから別にいいんだよねぇ~? リー君は」
「テヘペロ!」

 すかさずリアンはテヘペロをして一枚の書類を取り出した。

「それじゃ、そろそろ僕たちはラピスラズリの部屋に向かおっか」
「待たなくていいんですか?」

 アルファが不思議そうに言うと、リアンは小悪魔のような微笑みを浮かべて頷く。

「大丈夫、あいつらの事だから勘で辿り着くよ」
「……そんなまさか」

 流石にそれは無いだろうと思ったが、アリスとアミナスが居る時点で無いとは言い切れない。

 けれどいつまでもここに居ても仕方がないので、アルファはさっさと子供たちを連れて部屋から出て行ったリアン達の後を追うことにした。


 地下はとにかく複雑で、地図か何かが無ければ必ず迷子になる。地下に住む住人にすらそう言われていたほど入り組んでいる。

 それを何の迷いもなく目的の場所に辿り着けるレックスは流石だ。

 アルファはそんな事を考えながら、アルファでさえ来た事のない通路に戸惑いながら歩いていた。

「ところであんた達は何か収穫あったの?」

 リアンが歩きながら振り返ると、嬉しそうにジャスミンとローズが手を上げた。

「収穫というほどでは無いけど、モブさんの所に二人目の赤ちゃんが出来た事を知ってるわ!」

 ローズがそう言って持っていたうさぎのぬいぐるみを頭上に掲げると、それを見たリアンがギョッとした顔をして言った。

「ちょ、何でローズ達がそれ知って……それ! 発売延期になったぬいぐるみ! 何で持ってきてんの!?」
「母さまが持たせてくれたの! モブさんと父さまの会話聞いちゃった!」
「聞いちゃった~! 父さまはモブに優しいんだよ~」
「ちょちょ、ライラ!? 何でまたこんなもん持たせて……ちょっと待って。それじゃあほぼ全員の声を聞いてたんじゃないの?」
「そだよ!」
「そだよじゃないでしょ!? 没収します! はい、貸して」

 一体どういうつつもりでライラは子供たちにこれを持たせたのか。リアンが手を差し出すと、二人はリアンに向かって、ベーっと舌を出す。

「私達を仲間外れにするつもりなのよね? 父さまは。でもそれはもう無理だから。何故ならディノを目覚めさせるのは私達だから!」
「はあ!? ちょっとどういう事? それ本当なの? スルガ!」
「え、わ、私ですか!? いや、それはその……まだ決定ではないと言いますか、ユアンが言い出したと言いますか……」

 突然の飛び火にアルファがたじたじで答えると、リアンが鬼のような形相に変わっていく。

「お、おい誰か止めんか! このままではリー君の胃が暴発するぞ」
「ユアン……あいつ、マジで許さない……絶対許さない……」

 ブツブツと呟き出したリアンの手を引いたのはレックスだ。

「こっち。もうちょっとで着くよ」
「ああ、ありがとう」
「あと、あんまり怒ると体に悪いし、ライラは考えなしに人形を持たせた訳じゃない。何より、ディノを目覚めさせるのはこの僕なんだ。その時に皆が一緒に居てくれようとしてるだけ。そんなに怒らないで」

 何となく自分の運命を察しているレックスが言うと、それが正しく伝わったかのようにリアンの顔が般若から天使に戻っていく。

「あんたも良い子だね。もっと自由にしていいんだよ」
「うん。全部終わったらそうしたい。無事だったら」
「無事だったら?」

 不思議な言い方にリアンが首を傾げると、レックスが核でディノに聞いた話を聞かせてくれた。それを聞いてまたリアンの顔が般若に戻る。

「ディノ……あいつそんな事考えてんの? それは無しでしょ。我が子をそんな風に……ダメでしょ、どうなってんの。ドラゴンの倫理」
「……別に僕、ディノが親って訳じゃ――」
「十分親だよ! ちょっともうこれは説教案件だよ。アリスに鱗全部剥がれたらいいよ!」
「……そんな事したら丸ハゲになっちゃう……」

 丸ハゲの大きなドラゴンを想像したレックスが言うと、後ろからルーイとユーゴがレックスを慰めるように頭を撫でてくれた。

 
 目の前の分かれ道の鉱石を操作して右側に新しい道を作ると、すぐに突き当りにぶつかった。

「なんもないけど?」
「見えないだけ」

 レックスがそう言って壁に描かれていた青い鉱石に触れると、それが合図だったかのようにレックスの目と同じ色をした扉が現れた。

「おお! 確かにドアの色はラピスラズリだな! ふむ、この部屋は我では管理出来ないようだ」
「本当だ! おい、お前たちも来てみろ!」

 妖精王とライアンが突然現れた不思議なドアを見て興奮していると、子供たちがドヤドヤとやってきて不思議なドアを触る。

「面白い仕掛けになってるんだね。これ、レックスでないと操作出来ないの?」
「ううん、ディノの許しがある人は開けられる。多分、アンソニー達も開けられると思う」

 元々は仲良しだったと言う話をぬいぐるみを通してアンソニーが言っていた。だとすればこの場所の事も他の鉱石の部屋の存在も二人は知っていたのではないだろうか。

 けれどこの場所の事をアルファは知らなかったようなので、恐らくアンソニーとニコラはこの場所の事を知っていたにも関わらず、誰にも話さなかったという事になる。それは今でもアンソニー達とディノが友人だという事なのかもしれない。
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