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第427話 全てを勘で切り抜けるアリス

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 それを聞いたテオは腕組をして考え込んだ。

「そっか。なんかやっぱりアンソニー王達は本当に星の為に動いてたのかもね」
「今まで信じてなかったの?」

 ノエルの問にテオはコクリと頷く。

「当然。むしろ疑ってた。でも流石にそれは考え過ぎだったかなって今は思ってる。ていうか、そう思いたい」
「それはそうだね。僕もあの二人と直接会った事もないしどこか半信半疑だったけど、皆の会話聞いてたら……敵じゃないなって思うよ」

 単純だと思われるかもしれないが、こういう所はアリス似なのかもしれないないな、とノエルは思いつつ、レックスの次の行動を待っていると――。

「居た居た! 皆~探したんだぞ!」
「ほら、来た」

 リアンは呆れたように振り向いて言った。そこにはいつも通りに元気なアリスとアミナス、そしてコイツらマジか、の顔をしたユアンとカイが居る。一方キリはいつも通りだと言わんばかりの相変わらずの無表情だ。

「す、凄いですね。相当ややこしかったと思うのですが……」
「スルガ、よく覚えときな。こいつらにかかったら世界一ややこしい迷路だってすぐにクリアしちゃうから」
「変だよねぇ。普段はあんなにも方向音痴なのにさぁ~」
「地図を持つと駄目なんじゃないか?」
「えぇ~? そんな人居るのぉ~?」
「こいつらを人間だと思ったら駄目だよ! 最悪迷路壊してでも辿り着こうとするような奴らなんだからね!」

 リアンが真顔で言うと、何を想像したのかスルガとユーゴとルーイが苦笑いを浮かべる。

「なんだなんだ! 私達の噂話?」
「違うよ。で、どうやってここまで来たの」
「え? 勘だけど?」

 当然だとでも言うようにアリスが言うと、リアンはやっぱりな、と言いたげに頷く。

「さ、レックス。それじゃあ早速開けてよ。僕たちは変態に賢者の石を持ってかなきゃならないんだ」
「分かった。あの……変態って誰のこと?」
「ノアだよ。まぁ、あだ名みたいなものだよ」
「リアン様限定ですけどね。ここはラピスラズリの部屋でしたか? 以前一度入った所ですよね?」
「そうそう、僕たちが一泊した部屋。綺麗だったよね」
「ええ、とても」
「いいないいな! 私も早く見たい! 二人だけズルイよ!」
「……ちょっと、誰のせいで寒い思いしたと思ってんの?」
「お嬢様のせいですね。綺麗でしたが、異常に寒かったです」

 何せ石ばかりの部屋だ。床ももちろん石だし空気は冷え切っていた。痛いわ寒いわで散々な一夜だったというのに、アリスはそんな事も知らずにもうドアの向こう側に夢中だ。

「はぁ、レックス、ドア開けて。早いとこ探しちゃお」
「うん」

 レックスはそう言ってドアにもう一度触れた。すると、ドアは自然と開いていった。
 
 
 
「メイリング城には初めて入ったなぁ」

 ノアはアンソニーとカールの案内でアランとシャルと共にゲートの研究をしていた部屋へやってきていた。

 意外なことにゲートの研究は地下ではなくメイリング城の一室で行っていたようで、その部屋は今は厳重に施錠されている。

「まさか城で研究していたとは思いませんでした。そりゃルカ様達にも見つけられないはずです」
「本当ですね。ですが城でこんな事をしていてアメリア達には見つからなかったんですか? 僕にはそれがとても不思議なんですが」
「アメリア達はこの城には住んでは居なかったからね。彼女たちは確かにメイリングを動かしてはいたけれど、それはあくまでも裏からだよ。城にはレヴェナが住んでいたんだ。それにアメリア達は表向けには前の戦争で処刑された事になっているし、若返ったとしてもアメリアの若い頃を知っている人がここには沢山いるから、アメリアがここをウロウロしていたら不審に思うだろう?」
「確かに」

 アメリアは曲がりなりにも一時は聖女としてレヴィウスとメイリングで名を馳せたのだ。当然若い頃のアメリアを知っている人たちも多く居る。

 納得したようにアランが言うと、ノアとシャルがニコッと笑う。

「そういう理由をつけてここには近寄らせなかったという事ですか」
「大事な事は全部ここでしてたんだね」
「ははは、まぁ最初から彼女たちは監視対象であって仲間や友人ではないからね。さて、入ろうか」

 アンソニーは軽快に笑って施錠を外した。

「ようこそ、僕たちの研究室へ。あ、ここでは靴は脱いでね」

 施錠を外したアンソニーが言いながらドアを開けると、部屋の中から白檀の香りがした。

「どれだけ窓を開けていても消えませんね」
「ほんとだね。もう家具とかに匂いが染み付いてるのかな」

 白檀の匂いに懐かしそうに目を細めたアンソニーは、部屋の中に入って窓を開け放った。その途端、レースのカーテンが嬉しそうに揺れる。

「ここが研究室? その割にはなんか……普通の部屋だね」
「本当ですね。それに何やら……和風です」
「和風?」

 シャルの言葉にアランが聞き返すと、シャルは部屋に置いてあった石で出来た何かを指さした。石はすり鉢状になっていて中には灰が沢山入っている。

「例えばこれ、火鉢です。暖炉のようなものですよ。それに床も。これは畳と言います」

 足元を指さしたシャルはこの世界に畳がある事に驚いている訳だが、しばらく部屋を見渡していたノアがふと言った。

「ここはヤエさんの部屋かな?」
「よく分かったね。厳密には、ここは僕たち三人の部屋だったんだ。表向きには王と王妃のプライベートの部屋という事になっている。今は僕とカールは遠い親戚という設定になっているから、僕たちがここへ入っても特に怪しまれる事はないんだよ」
「火鉢まで置いて本気だね」
「ははは。よくこの火鉢を囲んで芋を焼いたよ」
「母さんは焼き芋が好きでしたね」
「そうそう。週末になるとここで三人で昼寝をしたり遊んだり……懐かしいね」

 火鉢をそっと撫でながら目を細めたアンソニーを見て思わずアランとシャルが言葉を詰まらせた。

 一体どれほどの年月の間アンソニーは八重子だけを思い続けてきたのだろう。そんな中――。
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