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第432話 アリスとアミナスの正しい接し方
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「えっ!? ま、待って! それもう決定!? 嘘でしょぉ!? まだ二人ともモダモダしてたじゃん~!」
知らぬ間にルーイにプロポーズを先に越されていたと知ってユーゴがルーイの肩を掴んで揺さぶると、ルーイがスッと視線をユーゴから逸した。
「何だよぉ! 二人して言えよぉ!」
「す、すまん」
いつ言おうかと二人して悩んでいる間に物事が進みすぎて、今までズルズルと報告出来なかったルーイとイヴリンだ。
「まぁ、とりあえずおめでと! それじゃあ僕たちは行ってくるから二人はお留守番よろしく~」
騎士団の嬉しい報告と欲に目が眩んでいるという事実にリアンは笑いながらようやくドアをくぐった。
中では既にアリスとアミナスがロッククライミングよろしく、壁に張り付いている。
「どう? 見つかりそう?」
「リアン様、流石にそれは無理です。ここのラピスラズリがどれほどあると?」
入り口付近で想像を絶するラピスラズリの量に怯んでいたアルファが答えると、リアンは苦笑いを浮かべた。
「それもそだね。お~い、あんた達~上からこれで照らしてよ~」
リアンはそう言ってリュックの中からアリスイチオシの『いつでもどこでもお日さまの下のように君』を取り出した。早い話がバカでかい懐中電灯である。
「お! リー君気がきくぅ! アミナス! ゴー!」
「イエス・サー!」
そう言ってアミナスは自分についていた命綱をアリスの腰に引っ掛けてそのままシュルシュルと降りてきた。そしてリアンから懐中電灯を受け取ってまた天井に戻っていく。そんな様子を見ていたリアンは一言ポツリと呟く。
「猿だね。子猿だよ、あれは」
「親猿にそっくりです。俺の目にはもう二人共猿にしか見えません」
「ステータスは?」
「人っぽい子猿ですよ」
「あ、そうなんだ。じゃあやっぱ猿なんだね」
何かに納得したリアンが言うと、キリも隣で真顔で頷く。猿達の働きによって、それまで暗かったラピスラズリの部屋が一気に明るくなった。
「で、さっき見せてくれたメモ、何て書いてたんだっけか?」
ユアンがキリに身を寄せて言うと、キリは胸ポケットから一枚のメモを取り出した。
「大きさは拳大で、色はラピスラズリよりも濃い青、そして光に翳すと虹色に輝くそうです」
「ふぅん。じゃあ、あの何かよく分からん眩しい奴でそこらへん照らして歩けば早ぇんじゃねぇの」
「言われてみればそうです。お嬢様! アミナス! あなた達、それを背負って天井を移動してください」
「りょうか~い! そんじゃアミナス持っててね。で、私にくっついてて」
「分かった!」
子猿、もといアミナスはアリスの背中に自分の体を縛り付けると懐中電灯を後ろ手で握りしめる。
「これでいい~?」
「ええ、ありがとうございます。それでは皆さん、虹色に光る石を探してください。ではその通路から行きましょう」
キリの掛け声とともに大人も子供も壁一面に埋め込まれている大小様々な大きさの石を探し始めた。時折、アミナスに下からこちらを照らせ、と掛け声をかけつつゆっくりと坑道の中を進んでいく。
どれほど坑道を進んだのか、ずっと天井に張り付いていたアリスとアミナスはそろそろ腕が痺れてきていた。
しかし降りる訳にはいかない。何せラピスラズリは天井にもびっしりくっついているのだ。
「ねぇねぇ、ちょっとだけ降りて休憩してもいい~?」
流石に腕がだるくなってきたアリスが言うと、ノエルが心配そうにこちらを見上げてくる。
「もちろんだよ! 早く二人共降りてきて。お肉は無いけど、サイダー持ってきてるよ」
「ノエルぅ~! うちの子は本当に天使なのでは!? すぐ降りるね!」
「兄さま、私の分もある!?」
「もちろんあるよ。アミナスも降りといで」
そう言って両手を広げたノエルを見てアミナスはパッと顔を輝かせた。
「うん! よいしょっと」
アミナスはそれを聞くなりアリスに固定していた紐と懐中電灯をすり替えてノエルに向かって飛び降りようとすると、ノエルはギョッとしたような顔をして固まった。
「ちょちょちょ! 飛ぶ気!?」
「うん! とうっ!」
「わあぁぁぁ!」
言うが早いかアミナスは何の躊躇いもなくノエルの腕の中に向かって飛び降りてくる。
ノエルもそこそこ動けるが、流石に天井から落ちてくる妹を受け止められるほどの筋力はまだ備わっていない。そんな時、右往左往するノエルの横からスッとカイが出てきて、落ちてきたアミナスを軽々と受け止めた。
「あ、ありがとカイ」
思わず胸を撫で下ろしながらノエルが言うと、カイは受け止めたアミナスの頭にゲンコツを落としてノエルに向き直って言った。
「この場合お礼を言うのはお嬢様では」
「ああ、うん、そうだね。アミナス! カイが居なかったらどうなってたと思ってるの!?」
カイのげんこつを食らって無言で痛がっているアミナスにノエルが言うと、後ろから一部始終を見ていたキリが淡々と言った。
「別にどうにもなりません。今の場合はノエルが避ければいいのです」
「え?」
そう言ってキリは、アミナスがカイによって華麗に受け止められたのを見て顔を輝かせているアリスを見て言った。
「こんな風に」
「キリ~! 私も私も~!」
キリの返事も聞かずアリスが天井からアミナスの真似をして飛び降りると、何を思ったかキリはアリスを受け止めようとするどころか、その場から一歩下がった。
「どえぇぇ!? 何で避けるのよぉ! ふんっ!」
キリはまるっきりアリスを受け止める気など無い。それが分かったアリスは体を縮めてクルリと回ると、猫のように着地した。
「ちょっとあんた! 何で避けんのよ!」
「今まで俺とノア様が高いところから飛び降りるあなたを一度でも受け止めた事がありましたか?」
「……言われてみれば無い……兄さまも絶対に避けて、落ちた私見て笑ってた!」
「そうでしょう? ノエル、レオ、カイ、いいですか。お嬢様もアミナスもあんな所から少々落ちたぐらいでどうにもなりません。今後、ああいう場合は迷わず避けてください。ですが、ノエルが落ちてきた場合は別です。死ぬ気で受け止めるように」
「うん、そうする」
「分かりました」
「善処します」
「……なぁおい、あいつ本当にバセット家の執事か?」
真顔でそんな事を話し合うキリ一家にユアンがポツリと言うと、前方からひたすら石探しをしていたリアンの怒鳴り声が聞こえてきた。
知らぬ間にルーイにプロポーズを先に越されていたと知ってユーゴがルーイの肩を掴んで揺さぶると、ルーイがスッと視線をユーゴから逸した。
「何だよぉ! 二人して言えよぉ!」
「す、すまん」
いつ言おうかと二人して悩んでいる間に物事が進みすぎて、今までズルズルと報告出来なかったルーイとイヴリンだ。
「まぁ、とりあえずおめでと! それじゃあ僕たちは行ってくるから二人はお留守番よろしく~」
騎士団の嬉しい報告と欲に目が眩んでいるという事実にリアンは笑いながらようやくドアをくぐった。
中では既にアリスとアミナスがロッククライミングよろしく、壁に張り付いている。
「どう? 見つかりそう?」
「リアン様、流石にそれは無理です。ここのラピスラズリがどれほどあると?」
入り口付近で想像を絶するラピスラズリの量に怯んでいたアルファが答えると、リアンは苦笑いを浮かべた。
「それもそだね。お~い、あんた達~上からこれで照らしてよ~」
リアンはそう言ってリュックの中からアリスイチオシの『いつでもどこでもお日さまの下のように君』を取り出した。早い話がバカでかい懐中電灯である。
「お! リー君気がきくぅ! アミナス! ゴー!」
「イエス・サー!」
そう言ってアミナスは自分についていた命綱をアリスの腰に引っ掛けてそのままシュルシュルと降りてきた。そしてリアンから懐中電灯を受け取ってまた天井に戻っていく。そんな様子を見ていたリアンは一言ポツリと呟く。
「猿だね。子猿だよ、あれは」
「親猿にそっくりです。俺の目にはもう二人共猿にしか見えません」
「ステータスは?」
「人っぽい子猿ですよ」
「あ、そうなんだ。じゃあやっぱ猿なんだね」
何かに納得したリアンが言うと、キリも隣で真顔で頷く。猿達の働きによって、それまで暗かったラピスラズリの部屋が一気に明るくなった。
「で、さっき見せてくれたメモ、何て書いてたんだっけか?」
ユアンがキリに身を寄せて言うと、キリは胸ポケットから一枚のメモを取り出した。
「大きさは拳大で、色はラピスラズリよりも濃い青、そして光に翳すと虹色に輝くそうです」
「ふぅん。じゃあ、あの何かよく分からん眩しい奴でそこらへん照らして歩けば早ぇんじゃねぇの」
「言われてみればそうです。お嬢様! アミナス! あなた達、それを背負って天井を移動してください」
「りょうか~い! そんじゃアミナス持っててね。で、私にくっついてて」
「分かった!」
子猿、もといアミナスはアリスの背中に自分の体を縛り付けると懐中電灯を後ろ手で握りしめる。
「これでいい~?」
「ええ、ありがとうございます。それでは皆さん、虹色に光る石を探してください。ではその通路から行きましょう」
キリの掛け声とともに大人も子供も壁一面に埋め込まれている大小様々な大きさの石を探し始めた。時折、アミナスに下からこちらを照らせ、と掛け声をかけつつゆっくりと坑道の中を進んでいく。
どれほど坑道を進んだのか、ずっと天井に張り付いていたアリスとアミナスはそろそろ腕が痺れてきていた。
しかし降りる訳にはいかない。何せラピスラズリは天井にもびっしりくっついているのだ。
「ねぇねぇ、ちょっとだけ降りて休憩してもいい~?」
流石に腕がだるくなってきたアリスが言うと、ノエルが心配そうにこちらを見上げてくる。
「もちろんだよ! 早く二人共降りてきて。お肉は無いけど、サイダー持ってきてるよ」
「ノエルぅ~! うちの子は本当に天使なのでは!? すぐ降りるね!」
「兄さま、私の分もある!?」
「もちろんあるよ。アミナスも降りといで」
そう言って両手を広げたノエルを見てアミナスはパッと顔を輝かせた。
「うん! よいしょっと」
アミナスはそれを聞くなりアリスに固定していた紐と懐中電灯をすり替えてノエルに向かって飛び降りようとすると、ノエルはギョッとしたような顔をして固まった。
「ちょちょちょ! 飛ぶ気!?」
「うん! とうっ!」
「わあぁぁぁ!」
言うが早いかアミナスは何の躊躇いもなくノエルの腕の中に向かって飛び降りてくる。
ノエルもそこそこ動けるが、流石に天井から落ちてくる妹を受け止められるほどの筋力はまだ備わっていない。そんな時、右往左往するノエルの横からスッとカイが出てきて、落ちてきたアミナスを軽々と受け止めた。
「あ、ありがとカイ」
思わず胸を撫で下ろしながらノエルが言うと、カイは受け止めたアミナスの頭にゲンコツを落としてノエルに向き直って言った。
「この場合お礼を言うのはお嬢様では」
「ああ、うん、そうだね。アミナス! カイが居なかったらどうなってたと思ってるの!?」
カイのげんこつを食らって無言で痛がっているアミナスにノエルが言うと、後ろから一部始終を見ていたキリが淡々と言った。
「別にどうにもなりません。今の場合はノエルが避ければいいのです」
「え?」
そう言ってキリは、アミナスがカイによって華麗に受け止められたのを見て顔を輝かせているアリスを見て言った。
「こんな風に」
「キリ~! 私も私も~!」
キリの返事も聞かずアリスが天井からアミナスの真似をして飛び降りると、何を思ったかキリはアリスを受け止めようとするどころか、その場から一歩下がった。
「どえぇぇ!? 何で避けるのよぉ! ふんっ!」
キリはまるっきりアリスを受け止める気など無い。それが分かったアリスは体を縮めてクルリと回ると、猫のように着地した。
「ちょっとあんた! 何で避けんのよ!」
「今まで俺とノア様が高いところから飛び降りるあなたを一度でも受け止めた事がありましたか?」
「……言われてみれば無い……兄さまも絶対に避けて、落ちた私見て笑ってた!」
「そうでしょう? ノエル、レオ、カイ、いいですか。お嬢様もアミナスもあんな所から少々落ちたぐらいでどうにもなりません。今後、ああいう場合は迷わず避けてください。ですが、ノエルが落ちてきた場合は別です。死ぬ気で受け止めるように」
「うん、そうする」
「分かりました」
「善処します」
「……なぁおい、あいつ本当にバセット家の執事か?」
真顔でそんな事を話し合うキリ一家にユアンがポツリと言うと、前方からひたすら石探しをしていたリアンの怒鳴り声が聞こえてきた。
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