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第433話 真面目なユアン
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「ちょっとあんた達! そんなとこで何サボってんの!? 早く来てくれないと暗くて何も見えないんだけど!?」
「リー君こんな所でも真面目だなぁ! はいはい、今行く~!」
ノエルからサイダーを受け取ったアリスはノエルの頭をグリグリ撫でてスキップするように懐中電灯と共に走り去って行ってしまった。
「真っ暗だね……何も見えないや。僕たちも早く追いつこ――」
ノエルが行った途端、辺りはパッと明るくなった。キリが自分のリュックから小型版の懐中電灯を取り出したのだ。
「お前も持ってんのかよ!」
「もちろんです。さ、行きましょう」
前方から子供たちとアリスのはしゃぎ声と、時折リアンの怒鳴り声が聞こえてくる。どうやらアリスを筆頭に子供たちは好き放題しているようだ。面倒なのでゆっくり行こうとしたキリとは違い、ユアンはソワソワしながら歩みを早める。
「そんなに急がなくても平気です。ああ見えて彼らはしっかりしていますよ」
「それはそうだろうが、何ていうか……性分なんだよ。ああいうまとまりがないのは見ててイライラする」
学生時代、入学当初からずっと生徒会に居たユアンだ。だからこそ協調性の無いアーロにいつもイライラしていたのはここだけの話だ。
「損な性分ですね。まぁでもスルガさんとリアン様が大変そうです。行きましょう」
出来るだけ面倒は避けたいキリは仕方なく足を早めて前の団体に追いつく。
「なんだ、あんたも持ってきてたんだ」
「ええ。どうですか?」
「うーん、闇雲に探してたんじゃ一生かかりそう。レックスにディノに聞いてもらった方が早いんじゃないの?」
リアンが言うと、しゃがんで石を探していたレックスがゆっくり首を振った。
「無理。一応聞いてみたけど、在り処までは知らないって」
「そうですか、ありがとうございます。お嬢様の強運でも見つかりませんか」
「難しいね。何せこの道だけじゃないし。せめてもうちょっと場所についてのヒントでもあればいいんだけど」
そう言ってリアンは腕組をして大きなため息を落とす。枝分かれしていた坑道はここだけではない。
「困りましたね……」
「まぁ他にヒントも無いんだし仕方ないね。で、そっちはあれから何か進展したの?」
リアンが言うと、アリスがここぞとばかりにバセット領で聞いた話をしだした。
「あったよ! リセットの時に地下に居た生物は生き残ってたんだって! だからリセット前の本が残ってたみたいなんだ! あとね、何かヤバい書類見つけた!」
「ふぅん。で、その書類を捏造してスチュアート家当主を騙して黙らせて放置してきたって事?」
「うん! 縛り上げて天井から吊るして来たよ!」
「……流石。あんた達本当に良く似た夫婦だよ」
ノアが絵美里を縛り上げた挙げ句に木から吊るしていたのを思い出してリアンが呆れるが、アリスは悪びれる事もなくニカッと笑っている。
「ですが肝心の賢者の石についての情報が少なすぎますね。このままではリアン様の言う通り、一生かかりそうです」
大人たちが困っているのをよそに、妖精王と子供たちはアミナスが持っている明かりを頼りに拳大のラピスラズリを見つけては懐中電灯にかざしてガックリと肩を落としていた。
「これも違うな……」
「これもちがーう」
「これもだわ……もしかして私達の拳大ではないんじゃないかしら?」
何気なくジャスミンが言うと、それを聞いてハッとしたようにテオが肩を掴んできた。
「ジャスミン! もしかしたら君は凄く良い事に気付いたかもよ。そもそもここに賢者の石を隠したのは誰なんだろう?」
テオの言葉に全員が考え込んだ。最初に古代妖精の元から賢者の石を持ち出したのはリセットを免れた賢者達だ。そしてその石をドラゴンの里に隠したという。ではその後、ここへ賢者の石を持ち込んだのは一体誰だろう?
「ドラゴンの里に隠してあったのだろう? では順当に考えればドラゴンがここへ持ち込んだのではないのか?」
何気なく妖精王が言うと、テオも納得したように頷いた。
「だとすれば、ドラゴンの拳大って可能性もあるよね?」
「そっか……さっきの母さまの話が本当だとしたら、リセットの時に生き残ったドラゴンが隠した可能性もあるって事か」
石を探しながらもアリスの話をちゃっかり聞いていたノエルが言うと、妖精王と子供たちはハッとして顔を見合わせた。
「その通りだ! でかしたぞ二人共! やはりテオは母さまの弟だな! そしてノエルは将来ぜひ城で仕事をしてくれ!」
「どうして今までその可能性を考えなかったんだろう! 爺ちゃん、バカでかい石探そう!」
「そうだな! 我らは2つあったという情報だけで思い込んでいたと言う事か!」
次々の子供たちが声を上げていると、そこへリアン達がやってきた。
「何か騒がしいけど、あんた達ちゃんと真面目に探してんの?」
「リー君! あのね、今テオとジャスミンが凄い事に気がついたんだよ!」
珍しく興奮した様子でノエルがリアンの手を取ると、リアンは不思議そうに首を傾げた。
「どういう事? 何に気づいたのさ」
「あのね、拳大ってドラゴンの拳なんじゃないかなって!」
ノエルが言うと、リアンの後ろからユアンが顔を出す。
「どういう事だよ?」
「僕たちは賢者の石が2つあったって聞いてたから、てっきり同じサイズの物が2つあったって思い込んでたけど、本当はそうじゃなくて、全く違うサイズの物が2つあったって事なんじゃないかなって」
「……確かにそうかもな……そうか、そもそも最初は2つじゃなかった可能性もあるな。ちょっと待てよ。レックス、ちょっとこっち来い」
ユアンはレックスを手招きすると、近寄ってきたレックスの胸におもむろに自分の拳を当てた。
「リー君こんな所でも真面目だなぁ! はいはい、今行く~!」
ノエルからサイダーを受け取ったアリスはノエルの頭をグリグリ撫でてスキップするように懐中電灯と共に走り去って行ってしまった。
「真っ暗だね……何も見えないや。僕たちも早く追いつこ――」
ノエルが行った途端、辺りはパッと明るくなった。キリが自分のリュックから小型版の懐中電灯を取り出したのだ。
「お前も持ってんのかよ!」
「もちろんです。さ、行きましょう」
前方から子供たちとアリスのはしゃぎ声と、時折リアンの怒鳴り声が聞こえてくる。どうやらアリスを筆頭に子供たちは好き放題しているようだ。面倒なのでゆっくり行こうとしたキリとは違い、ユアンはソワソワしながら歩みを早める。
「そんなに急がなくても平気です。ああ見えて彼らはしっかりしていますよ」
「それはそうだろうが、何ていうか……性分なんだよ。ああいうまとまりがないのは見ててイライラする」
学生時代、入学当初からずっと生徒会に居たユアンだ。だからこそ協調性の無いアーロにいつもイライラしていたのはここだけの話だ。
「損な性分ですね。まぁでもスルガさんとリアン様が大変そうです。行きましょう」
出来るだけ面倒は避けたいキリは仕方なく足を早めて前の団体に追いつく。
「なんだ、あんたも持ってきてたんだ」
「ええ。どうですか?」
「うーん、闇雲に探してたんじゃ一生かかりそう。レックスにディノに聞いてもらった方が早いんじゃないの?」
リアンが言うと、しゃがんで石を探していたレックスがゆっくり首を振った。
「無理。一応聞いてみたけど、在り処までは知らないって」
「そうですか、ありがとうございます。お嬢様の強運でも見つかりませんか」
「難しいね。何せこの道だけじゃないし。せめてもうちょっと場所についてのヒントでもあればいいんだけど」
そう言ってリアンは腕組をして大きなため息を落とす。枝分かれしていた坑道はここだけではない。
「困りましたね……」
「まぁ他にヒントも無いんだし仕方ないね。で、そっちはあれから何か進展したの?」
リアンが言うと、アリスがここぞとばかりにバセット領で聞いた話をしだした。
「あったよ! リセットの時に地下に居た生物は生き残ってたんだって! だからリセット前の本が残ってたみたいなんだ! あとね、何かヤバい書類見つけた!」
「ふぅん。で、その書類を捏造してスチュアート家当主を騙して黙らせて放置してきたって事?」
「うん! 縛り上げて天井から吊るして来たよ!」
「……流石。あんた達本当に良く似た夫婦だよ」
ノアが絵美里を縛り上げた挙げ句に木から吊るしていたのを思い出してリアンが呆れるが、アリスは悪びれる事もなくニカッと笑っている。
「ですが肝心の賢者の石についての情報が少なすぎますね。このままではリアン様の言う通り、一生かかりそうです」
大人たちが困っているのをよそに、妖精王と子供たちはアミナスが持っている明かりを頼りに拳大のラピスラズリを見つけては懐中電灯にかざしてガックリと肩を落としていた。
「これも違うな……」
「これもちがーう」
「これもだわ……もしかして私達の拳大ではないんじゃないかしら?」
何気なくジャスミンが言うと、それを聞いてハッとしたようにテオが肩を掴んできた。
「ジャスミン! もしかしたら君は凄く良い事に気付いたかもよ。そもそもここに賢者の石を隠したのは誰なんだろう?」
テオの言葉に全員が考え込んだ。最初に古代妖精の元から賢者の石を持ち出したのはリセットを免れた賢者達だ。そしてその石をドラゴンの里に隠したという。ではその後、ここへ賢者の石を持ち込んだのは一体誰だろう?
「ドラゴンの里に隠してあったのだろう? では順当に考えればドラゴンがここへ持ち込んだのではないのか?」
何気なく妖精王が言うと、テオも納得したように頷いた。
「だとすれば、ドラゴンの拳大って可能性もあるよね?」
「そっか……さっきの母さまの話が本当だとしたら、リセットの時に生き残ったドラゴンが隠した可能性もあるって事か」
石を探しながらもアリスの話をちゃっかり聞いていたノエルが言うと、妖精王と子供たちはハッとして顔を見合わせた。
「その通りだ! でかしたぞ二人共! やはりテオは母さまの弟だな! そしてノエルは将来ぜひ城で仕事をしてくれ!」
「どうして今までその可能性を考えなかったんだろう! 爺ちゃん、バカでかい石探そう!」
「そうだな! 我らは2つあったという情報だけで思い込んでいたと言う事か!」
次々の子供たちが声を上げていると、そこへリアン達がやってきた。
「何か騒がしいけど、あんた達ちゃんと真面目に探してんの?」
「リー君! あのね、今テオとジャスミンが凄い事に気がついたんだよ!」
珍しく興奮した様子でノエルがリアンの手を取ると、リアンは不思議そうに首を傾げた。
「どういう事? 何に気づいたのさ」
「あのね、拳大ってドラゴンの拳なんじゃないかなって!」
ノエルが言うと、リアンの後ろからユアンが顔を出す。
「どういう事だよ?」
「僕たちは賢者の石が2つあったって聞いてたから、てっきり同じサイズの物が2つあったって思い込んでたけど、本当はそうじゃなくて、全く違うサイズの物が2つあったって事なんじゃないかなって」
「……確かにそうかもな……そうか、そもそも最初は2つじゃなかった可能性もあるな。ちょっと待てよ。レックス、ちょっとこっち来い」
ユアンはレックスを手招きすると、近寄ってきたレックスの胸におもむろに自分の拳を当てた。
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