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第434話 若気の至り
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「なに?」
「いや、お前の体に入ってんのはせいぜいこのサイズだ。けどそんな都合良く子供の体に入れられる程のサイズの石をディノが持ってたとは考えにくい。てことはもしかしたら賢者の石は元々大きな物が1つで、そこからディノに古代妖精が友情の証だとか何とか言って分けたんじゃないかと思ったんだ。もしそうだとしたら、元のやつはあまりにも重くてドラゴンでないと運べなかったって考えるのが妥当か」
「ということは?」
「バカでかい一部が欠けた石を探せばいい」
「なるほど! ユアンは賢いな! とてもアリスと血が繋がってるとは思えないな! 痛いっ!」
馬鹿正直にライアンが言うと、後ろから静かに近寄ってきていたアリスがすかさずライアンの頭にゲンコツを落とした。
「聞こえてるんだからね! で、なになに?」
何だか盛り上がってる子供たちを覗き込んで話を聞いたアリスは、すぐさま立ち上がった。
「分かった! おっきい石ね! じゃ、一回元の所戻ろ!」
そう言ってアリスはクルリと方向転換して元の場所を目指した。小走りしだしたアリスを皆も慌てて追いかけてくる。
元の場所まで戻ってきたアリスは、円形の部屋の中央にどっかり座ると、何度か深呼吸をして目を閉じる。
「ちょっと待っててよ~……むむむむむ……」
「……おい、あれ何やってんだ?」
突然座り込んで目を瞑って唸りだしたアリスを見てユアンが顔をしかめて言うと、リアンも首を捻っている。
「さあ? 石と交信してんじゃないの? あいつにかかればその辺の石ころとだって会話出来るんでしょ、何かよく分かんないフィーリングとやらで」
「フィーリング……へえ……」
「パパさん、深く考えてはいけません。あなたの娘さんは奇妙奇天烈で人間っぽい猿ですが、たまにズバリと当てるのです。それがピンチであればあるほどその精度は上がります。何故か」
「お、おお。もうどっから突っ込んでいいのか、そもそも怒ったら良いのか喜んだらいいのか分かんねぇな。何なんだ、こいつ。本当にバセット家の従者なのか?」
「間違いなくバセット家の人間だよ。普通の所にこんな従者が居るわけないでしょ」
「バセット家……一体どうなってんだよ。俺はエリザベスともそんなに交流があった訳じゃないからよく知らねぇが、こいつら見てたらあいつがあんなになったのも何となく頷けるな……」
本当に謎が多すぎるバセット家だが、言われてみればエリザベスもなかなか破天荒だった気がする。
頭を抱えたユアンの背中をリアンがポンと慰めるように叩いて不敵に笑う。
「早く慣れた方がいいんじゃないの? 曲がりなりにも親戚じゃん」
「……それは……勘弁してほしいな……」
バセット家が嫌とかそういう事ではなく、それを認めてしまうとエリザベスと結婚したアーロとも親戚ということになってしまう。親戚ともなれば色んな事で顔を合わせなくてはならなくなってしまう。それが何よりも嫌なユアンだ。
「まぁね、あんたの心境としては嫌だよね、これと親子じゃね……そこだけは同情するよ、心から」
そう言ってまだ唸っているアリスをチラリと見たリアンに、ユアンが苦笑いを浮かべる。
「まぁ、こんなでも娘らしいからな……そこはもういいさ、別に」
「……へぇ。なんだ、あんたちゃんと娘だって認識してんだ。じゃ、僕もパパって呼ぼ!」
思いがけないユアンの優しい口調にリアンはニコッと笑った。
アリスの心の心配をしていたのはリアンも同じだ。突然現れたユアンという人間がアリスの事をどう思っているのか、自分たちに害はないのかそれを見極めようと思っていたけれど、どうやらそれは杞憂だったらしい。
普段は人見知りが激しいリアンだが、一度懐くと骨の髄までしゃぶりつく。
「何でだよっ!」
「いいじゃんいいじゃん。細かい事は言いっこ無しだって。あ、ほら終わったみたいだよ」
リアンが指差すと、アリスはまるで何かのお告げでも受けたかのように顔を輝かせた。
「こっちだ!」
「……ほんとかよ」
勢いよく違う通路を指さしたアリスにすかさずユアンが言うと、下から声が聞こえてきた。
「合ってると思うわ。私の未来視もここだって言ってる」
アリスと同じように目を閉じて瞑想していたジャスミンが言うと、それを聞いてそれまで半信半疑だった仲間たちがゾロゾロと動き出した。
「ジャスミンが言うなら当たりだな!」
「だな」
「よし! では皆の者、行くぞ!」
ライアンとルーク、そして妖精王が互いに手を繋いで歩き出したのを見て、ノエルがそっとアリスの手を取った。
「僕は母さまを信じるよ。行こ」
「アミナスも! アミナスも母さま信じる!」
「ふ、ふだりどぼ(ふ、二人とも)~~~! ハグッ!」
両手に繋がれた小さな手を握ってアリスが感動したように鼻声で言うと、二人はアリスとそっくりの笑顔でニカッと笑う。
パッと見感動的な親子愛を後ろから見ていたキリは、感心したように頷いた。
「アミナスは天然ですが、ノエルのあれは作戦でしょうね。お嬢様の暴走を止める為の」
「だろうね。ああいうの何回も見たよ。ねぇ、ノエルの先行きが不安しかないんだけど」
「お前ら子供のやる事そんなひねくれた見方してやるなよ。ノエルが可哀想だろ?」
「うわ、パパってばマジで良い人だね。でもさ、思い出して。あれ、ノアの息子なんだよ」
「……そうだった……な。いや、でも半分はアリスだろ!」
「いえ、そう思いたいのは無理もありませんが、お嬢様の血は99%はアミナスにいってます。そしてノア様の血は99%がノエルにいってますよ。つまり、ゴリラの子はゴリラだし、魔王の子は魔王です」
「……なぁ、もっかい聞くけど、こいつ本当にバセット家の従者なのか?」
何だか散々な言われようにユアンが不安げに言うと、そんなユアンの肩をアルファが叩いた。
「ユアン、ここはもうずっと昔からこんな感じです。むしろキリさんは随分丸くなりましたよね」
「そだね。それはほんとそう。学生の頃のキリはもっと酷かった。今は大分マイルドだよね」
「これ以上にかよ」
「俺も若かったんでしょうね。にしてもこの洞窟はさっきの所とは少し雰囲気が違いますね」
暗いし寒いのは変わりないが、何となく肌を刺す風の感覚が違う気がする。
「いや、お前の体に入ってんのはせいぜいこのサイズだ。けどそんな都合良く子供の体に入れられる程のサイズの石をディノが持ってたとは考えにくい。てことはもしかしたら賢者の石は元々大きな物が1つで、そこからディノに古代妖精が友情の証だとか何とか言って分けたんじゃないかと思ったんだ。もしそうだとしたら、元のやつはあまりにも重くてドラゴンでないと運べなかったって考えるのが妥当か」
「ということは?」
「バカでかい一部が欠けた石を探せばいい」
「なるほど! ユアンは賢いな! とてもアリスと血が繋がってるとは思えないな! 痛いっ!」
馬鹿正直にライアンが言うと、後ろから静かに近寄ってきていたアリスがすかさずライアンの頭にゲンコツを落とした。
「聞こえてるんだからね! で、なになに?」
何だか盛り上がってる子供たちを覗き込んで話を聞いたアリスは、すぐさま立ち上がった。
「分かった! おっきい石ね! じゃ、一回元の所戻ろ!」
そう言ってアリスはクルリと方向転換して元の場所を目指した。小走りしだしたアリスを皆も慌てて追いかけてくる。
元の場所まで戻ってきたアリスは、円形の部屋の中央にどっかり座ると、何度か深呼吸をして目を閉じる。
「ちょっと待っててよ~……むむむむむ……」
「……おい、あれ何やってんだ?」
突然座り込んで目を瞑って唸りだしたアリスを見てユアンが顔をしかめて言うと、リアンも首を捻っている。
「さあ? 石と交信してんじゃないの? あいつにかかればその辺の石ころとだって会話出来るんでしょ、何かよく分かんないフィーリングとやらで」
「フィーリング……へえ……」
「パパさん、深く考えてはいけません。あなたの娘さんは奇妙奇天烈で人間っぽい猿ですが、たまにズバリと当てるのです。それがピンチであればあるほどその精度は上がります。何故か」
「お、おお。もうどっから突っ込んでいいのか、そもそも怒ったら良いのか喜んだらいいのか分かんねぇな。何なんだ、こいつ。本当にバセット家の従者なのか?」
「間違いなくバセット家の人間だよ。普通の所にこんな従者が居るわけないでしょ」
「バセット家……一体どうなってんだよ。俺はエリザベスともそんなに交流があった訳じゃないからよく知らねぇが、こいつら見てたらあいつがあんなになったのも何となく頷けるな……」
本当に謎が多すぎるバセット家だが、言われてみればエリザベスもなかなか破天荒だった気がする。
頭を抱えたユアンの背中をリアンがポンと慰めるように叩いて不敵に笑う。
「早く慣れた方がいいんじゃないの? 曲がりなりにも親戚じゃん」
「……それは……勘弁してほしいな……」
バセット家が嫌とかそういう事ではなく、それを認めてしまうとエリザベスと結婚したアーロとも親戚ということになってしまう。親戚ともなれば色んな事で顔を合わせなくてはならなくなってしまう。それが何よりも嫌なユアンだ。
「まぁね、あんたの心境としては嫌だよね、これと親子じゃね……そこだけは同情するよ、心から」
そう言ってまだ唸っているアリスをチラリと見たリアンに、ユアンが苦笑いを浮かべる。
「まぁ、こんなでも娘らしいからな……そこはもういいさ、別に」
「……へぇ。なんだ、あんたちゃんと娘だって認識してんだ。じゃ、僕もパパって呼ぼ!」
思いがけないユアンの優しい口調にリアンはニコッと笑った。
アリスの心の心配をしていたのはリアンも同じだ。突然現れたユアンという人間がアリスの事をどう思っているのか、自分たちに害はないのかそれを見極めようと思っていたけれど、どうやらそれは杞憂だったらしい。
普段は人見知りが激しいリアンだが、一度懐くと骨の髄までしゃぶりつく。
「何でだよっ!」
「いいじゃんいいじゃん。細かい事は言いっこ無しだって。あ、ほら終わったみたいだよ」
リアンが指差すと、アリスはまるで何かのお告げでも受けたかのように顔を輝かせた。
「こっちだ!」
「……ほんとかよ」
勢いよく違う通路を指さしたアリスにすかさずユアンが言うと、下から声が聞こえてきた。
「合ってると思うわ。私の未来視もここだって言ってる」
アリスと同じように目を閉じて瞑想していたジャスミンが言うと、それを聞いてそれまで半信半疑だった仲間たちがゾロゾロと動き出した。
「ジャスミンが言うなら当たりだな!」
「だな」
「よし! では皆の者、行くぞ!」
ライアンとルーク、そして妖精王が互いに手を繋いで歩き出したのを見て、ノエルがそっとアリスの手を取った。
「僕は母さまを信じるよ。行こ」
「アミナスも! アミナスも母さま信じる!」
「ふ、ふだりどぼ(ふ、二人とも)~~~! ハグッ!」
両手に繋がれた小さな手を握ってアリスが感動したように鼻声で言うと、二人はアリスとそっくりの笑顔でニカッと笑う。
パッと見感動的な親子愛を後ろから見ていたキリは、感心したように頷いた。
「アミナスは天然ですが、ノエルのあれは作戦でしょうね。お嬢様の暴走を止める為の」
「だろうね。ああいうの何回も見たよ。ねぇ、ノエルの先行きが不安しかないんだけど」
「お前ら子供のやる事そんなひねくれた見方してやるなよ。ノエルが可哀想だろ?」
「うわ、パパってばマジで良い人だね。でもさ、思い出して。あれ、ノアの息子なんだよ」
「……そうだった……な。いや、でも半分はアリスだろ!」
「いえ、そう思いたいのは無理もありませんが、お嬢様の血は99%はアミナスにいってます。そしてノア様の血は99%がノエルにいってますよ。つまり、ゴリラの子はゴリラだし、魔王の子は魔王です」
「……なぁ、もっかい聞くけど、こいつ本当にバセット家の従者なのか?」
何だか散々な言われようにユアンが不安げに言うと、そんなユアンの肩をアルファが叩いた。
「ユアン、ここはもうずっと昔からこんな感じです。むしろキリさんは随分丸くなりましたよね」
「そだね。それはほんとそう。学生の頃のキリはもっと酷かった。今は大分マイルドだよね」
「これ以上にかよ」
「俺も若かったんでしょうね。にしてもこの洞窟はさっきの所とは少し雰囲気が違いますね」
暗いし寒いのは変わりないが、何となく肌を刺す風の感覚が違う気がする。
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