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第446話 いいとこ持ってくオリバー

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「……リアン様、いつの間にそんな技を……」
「ライラの特訓に付き合ってたからね。それにトーマスさんが大分昔にくれた増幅のお守りも持って――っ!?」
「リー君!」
「リアン様!」

 三人は違和感に気づいて空を見上げて息を呑んだ。

 竜巻からかろうじて逃れたドラゴンが、まっすぐにリアンめがけて飛んできていたのだ。ドラゴンの飛ぶスピードは尋常ではないほど早い。

「っ」

 あっという間にリアンの眼の前までやてきたドラゴンが口を開いたその時、リアンの体がフワリと浮いた。

「これで色々チャラにしてくれたら嬉しいんすけど! っと」

 リアンを抱えたオリバーは言いながらその場から離れてドラゴンの火をやり過ごし、リアンをアリスとキリが隠れていた亀裂に投げ込んだ。

「モブ! あんたも早く逃げ……ん?」

 亀裂から顔を出したリアンが青ざめて顔を出して叫ぶと、何故かドラゴンはオリバーの前でひれ伏している。

 この光景はどこかで見たことがあるな、と思いながら記憶を辿っていると、おもむろにオリバーがリュックから何かを取り出した。

「ノアから借りてきて良かったっすよ」
「そ、それ! ディノの目!」
「そっす。あんた達がドラゴンの谷に居るって言うから急いで借りてきたんすよ」

 眉を下げてオリバーが笑うとリアンとアリスが亀裂から飛び出してきてオリバーに抱きついてきた。二人に抱きつかれたオリバーはよろけながらもどうにか耐えている。

「流石モブ! 3で人気ナンバーワンの男! 地味だけど!」
「ほんだよ! ああ、もう死ぬかと思った! ありがとう、モブ! 地味だけど!」
「いや、地味なの今関係なくないすか!? ったく。あんた達は相変わらず何の準備もしないで突撃しようとするんすから」
「モブさん、ありがとうございました。あなたが来なければお嬢様が勝手にゴーして崖ごとあちこちを破壊している所でした」
「……本気で間一髪だったんすね」

 ドラゴンよりも何よりも本気のアリスが怖いオリバーが言うと、リアンもキリも頷いた。

「それよりも良かったの? 僕まだ招集かけてないのによく来たね」
「何となくそろそろかなって。空が変なのに気づいたんすよ。ほら」

 そう言ってオリバーが西の空を指差すと、全員がそちらを見て息を呑んだ。

「それからこれ。ノアが転送してくれたんすけど、オズが見つかったらしいっす」
「これ……もうちょっとって事?」

 その異様な光景にリアンが青ざめながら言うと、アリスとキリも真顔で頷いた。

「この写真にうっすら写ってるの、これオルゾ山っすよね? 何となくあの渦と関係してるような気がして慌てて来たんすよ」
「確かに……モブは以外と勘と頭がいいんだね」

 何気なく失礼な事をアリスが言うと、何故かキリが隣で頷いた。

「お嬢様は知らないかもしれませんが、モブさんはこう見えて学生時代の成績は優秀でしたよ。常にトップ10には入っていたようですし、だからこそあれだけの長期休みをとっても学園側も何も言わなかったのでしょう」
「な、なんでそんな事知って……あ、サーチ!?」
「ええ。あなたにサーチをかけた時のステータスで知りました。地味なのに頭はいいのだなぁ、そうか、地味だからこそか、と思った記憶があります」
「あんたが一番失礼なんすよ! で、こっからどうすんすか?」
「とりあえずこの崖がどうなってるかだよね。ドラゴンの谷自体はここの事なんだろうけど、里を探さないと」

 腕組をしてリアンが言うと、はるか遠くからユーゴの声が聞こえてきた。

「おぉ~い! 入り口こっちだよぉ~! え、何でドラゴンがひれ伏してんのぉ~? モブもいるじゃぁ~ん!」

 何も知らないユーゴはオリバーの前で恭しく頭を下げるドラゴンを見て笑った。そんなユーゴにアリス達の脳裏に一瞬殺意が過ったのは言うまでもない。

「呑気だね、相変わらず。あんたもごめんね。仲間たちは平気だった?」
「ぎゅ」

 リアンの質問にドラゴンは頭を下げたまま頷いた。何となくだが何を言ってるのかが分かったリアンは両手で顔を覆って呻く。

「どうしよう! 何となくこの子が何言ってるのか分かる! ヤバい、こいつと居すぎたせいだ!」
「どんな動揺の仕方なんすか。それよりもどうして俺たちを襲ったんすか?」

 ドラゴンは確かに友好的ではないが、決して事を荒立てたりはしない。無益な戦いはしないのだ。それだけ賢いはずなのに、どうして襲ってきたのかが分らない。

「ぎゅ……ぎゅぎゅぎゅ」
「ふんふん。それで?」
「ぎゅぎゅ、ぎゅぎゅぎゅぎゅー」
「なるほどね……アメリア達か。分かった! 私達に任せて! 絶対に赤ちゃんたちを取り戻すからね!」
「ぎゅぎゅ?」
「ほんとだよ! 私を誰だと思ってるの? 正義の使者、アリスだゾ!」
「ぎゅっ!」
「うむ! 任せたまえ! では行こう、仲間たち! ぎゃん!」

 ドラゴンと会話をして歩き出そうとしたアリスの頭をキリが打った。

「歩き出そうとする先にまずは通訳をしてください」
「うぅ……えっとぉ、なんかね、アメリア達がドラゴン達の里に迷い込んできたんだって。で、最初は優しくしてたら、急に豹変して赤ん坊達をドラ質にして立てこもったらしいんだ。で、これ以上仲間が来ないように見張ってたんだって」
「ねぇ! そんな長い単語話してなかったよ!?」
「リー君、そのくだり何回やるんすか。でもやっぱりアメリア達はドラゴンの子供を人質にしてたんすね。命知らずな事を……」
「全くです。ですが、あの人達のやりそうな事です。行きましょう」

 アリスが最初にドラゴンの卵を拾ってきた時はどうしてくれようか、などと本気で考えたキリだったが、今はもうそんな風には思わない。ドラゴンは図体こそデカいが本質はとても家族思いで仲間意識が高い。大陸のドラゴンは気が荒いなどと言われていたが、あれも仲間を守ろうとしていたからこそだ。

「うん! ギッタンバッタンにしてやる! 弱い者を盾にするようなやり方、ほんっとうに気に食わないっ!」

 珍しくアリスが素直に怒ると、リアンとオリバーが二人してアリスの顔を覗き込んできた。

「どしたの? まともじゃん」
「っすね。何か変なもん食ったんすか?」
「失礼な! 私はいっつもまともだよ! ちょっとお転婆なだけだもん!」
「ああ、良かった。いつものコイツだ」
「っすね」
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