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第478話 たとえ離れていても
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ルークは涙を袖でグイッと拭った。
「わかったよ。俺は行く。その代わり約束だ。絶対に生き残れよ。星が砕けそうになったら、絶対に戻ってこいよ」
「約束する」
「約束じゃない。お願いだよ。バセット家の約束は軽いもんな」
真顔のルークにノエルは苦笑いを浮かべて頷いた。
「俺は……王になれるんだろうか。そんな器があるだろうか」
心を決めたルークを見てライアンがポツリというと、ノエルとレックスがじっとライアンを見て言った。
「僕は向いてると思う。そりゃちょっと気は弱いけど、ライアンは誰にでも優しいし、何よりも誰かに相談出来る人だから」
「僕もそう思う。ライアンが治める国を、僕は旅してみたい」
「っ! 二人共……そうか……それじゃあ俺もなんとしても生き残らないとな」
ルークのように涙を袖で拭ったライアンは、それでも止まらない涙を隠すためにマントで顔を覆った。
そんな二人を見ていたジャスミンとローズが頬を膨らませる。
「二人共チョロい~! 私たちは何を言われても残るよ~! ね、ジャスミン?」
「そうね。と、言いたいところだけど、私達が居た所で役に立たないのも事実なのよね。でもあちらに行くという決定を下すには何かが足りないの。心が動かないのよ」
「ジャスミンは相変わらず詩的だね。君は僕と一緒に向こうに行ってもらわないと困るんだよ」
ため息をつきながらテオが言うと、それを聞いて子どもたち全員が首を傾げた。そんな子どもたちにテオは言う。
「だってそうしないとローズとアリアが描いた千年続く商会計画が駄目になるかもしれないでしょ?」
それを聞いてローズがハッとした。
「そうだった~! ジャスミン! 私達もレプリカに行こ~!」
「ローズ……それにテオがそこまで商会の事を考えてくれてるなんて思わなかったわ。あの計画ではあなた私と結婚するって事になってるのよ?」
「構わないよ。何か問題あるの?」
「私とあなたじゃオーグ家に何のメリットも無いのよ?」
「そうかな? チャップマン商会との繋がりが出来るのはオーグ家にとって十分なメリットだと思うよ」
「没落したらどうするの?」
「どうもしないよ。その時はオーグ家が支援するし」
「私と離縁したくなったら?」
「ならないと思うよ。僕はジャスミンと居るの好きだよ。それに僕は人見知りだから結婚相手は見たこともない貴族の子女より僕の事をよく知ってるジャスミンの方が良いに決まってる。他に何か問題ある?」
「無い……けど……はぁ、分かったわ。私達もあちらに行くわ」
あまりにもはっきりとテオに言い切られてジャスミンは肩をすくめた。これはまたリアンの胃が火を噴きそうだ。
「ありがとう、皆。また、きっと会える。僕は英雄達の事も君たちの事も信じてる。僕たちは星を守る事を、君たちはレプリカでしか出来ない事を自分で探し出して頑張ろうね。次もまた胸を張って笑顔で会えるように」
ノエルがニコッと笑うと、子どもたちは全員真剣な眼差しで頷いてそれぞれの家へ戻っていった。
それをじっと見送っていたノエルの頬を、涙が一粒伝う。
「レックス……本当に、僕たちに出来るかな?」
「……出来る。僕も皆を、ノエルを信じてる」
レックスはディノがしてくれたようにノエルの頭をよしよしと撫でて、レックスと同じぐらいの体を抱きしめた。
ノエルだって怖いのだ。寂しいのだ。それでも最後まで笑っていたのは、彼の決意だ。人の心の機微が分からなかったレックスは、少しずつ人間の心に触れた事で沢山の感情を学んだ。
寂しい、悲しい、楽しい、嬉しい。どれも知らなければならなかった事だ。
「僕も最後まで頑張るよ。ノエル達とまた色んな所を旅したいから」
「……ぶん(うん)」
本当は最後まで皆と一緒にやり遂げるつもりだったけれど、この選択が正しかったのかどうかは分からないけれど、もう決めた事だ。絶対にまた皆と会うために、憂いのない未来を目指す為に。
ノエルは決意したように顔を上げてレックスを真正面からじっと見て冷たいレックスの手を取った。
レックスの深い深い青い目は、磨き上げられた鏡のようにノエルの姿を映し出している。
「頑張ろうね、レックス」
「うん。きっと、大丈夫」
しばらく二人はただ黙って手を繋いでいた。
この時の決意を、ノエルもレックスも、きっと一生忘れない。
「わかったよ。俺は行く。その代わり約束だ。絶対に生き残れよ。星が砕けそうになったら、絶対に戻ってこいよ」
「約束する」
「約束じゃない。お願いだよ。バセット家の約束は軽いもんな」
真顔のルークにノエルは苦笑いを浮かべて頷いた。
「俺は……王になれるんだろうか。そんな器があるだろうか」
心を決めたルークを見てライアンがポツリというと、ノエルとレックスがじっとライアンを見て言った。
「僕は向いてると思う。そりゃちょっと気は弱いけど、ライアンは誰にでも優しいし、何よりも誰かに相談出来る人だから」
「僕もそう思う。ライアンが治める国を、僕は旅してみたい」
「っ! 二人共……そうか……それじゃあ俺もなんとしても生き残らないとな」
ルークのように涙を袖で拭ったライアンは、それでも止まらない涙を隠すためにマントで顔を覆った。
そんな二人を見ていたジャスミンとローズが頬を膨らませる。
「二人共チョロい~! 私たちは何を言われても残るよ~! ね、ジャスミン?」
「そうね。と、言いたいところだけど、私達が居た所で役に立たないのも事実なのよね。でもあちらに行くという決定を下すには何かが足りないの。心が動かないのよ」
「ジャスミンは相変わらず詩的だね。君は僕と一緒に向こうに行ってもらわないと困るんだよ」
ため息をつきながらテオが言うと、それを聞いて子どもたち全員が首を傾げた。そんな子どもたちにテオは言う。
「だってそうしないとローズとアリアが描いた千年続く商会計画が駄目になるかもしれないでしょ?」
それを聞いてローズがハッとした。
「そうだった~! ジャスミン! 私達もレプリカに行こ~!」
「ローズ……それにテオがそこまで商会の事を考えてくれてるなんて思わなかったわ。あの計画ではあなた私と結婚するって事になってるのよ?」
「構わないよ。何か問題あるの?」
「私とあなたじゃオーグ家に何のメリットも無いのよ?」
「そうかな? チャップマン商会との繋がりが出来るのはオーグ家にとって十分なメリットだと思うよ」
「没落したらどうするの?」
「どうもしないよ。その時はオーグ家が支援するし」
「私と離縁したくなったら?」
「ならないと思うよ。僕はジャスミンと居るの好きだよ。それに僕は人見知りだから結婚相手は見たこともない貴族の子女より僕の事をよく知ってるジャスミンの方が良いに決まってる。他に何か問題ある?」
「無い……けど……はぁ、分かったわ。私達もあちらに行くわ」
あまりにもはっきりとテオに言い切られてジャスミンは肩をすくめた。これはまたリアンの胃が火を噴きそうだ。
「ありがとう、皆。また、きっと会える。僕は英雄達の事も君たちの事も信じてる。僕たちは星を守る事を、君たちはレプリカでしか出来ない事を自分で探し出して頑張ろうね。次もまた胸を張って笑顔で会えるように」
ノエルがニコッと笑うと、子どもたちは全員真剣な眼差しで頷いてそれぞれの家へ戻っていった。
それをじっと見送っていたノエルの頬を、涙が一粒伝う。
「レックス……本当に、僕たちに出来るかな?」
「……出来る。僕も皆を、ノエルを信じてる」
レックスはディノがしてくれたようにノエルの頭をよしよしと撫でて、レックスと同じぐらいの体を抱きしめた。
ノエルだって怖いのだ。寂しいのだ。それでも最後まで笑っていたのは、彼の決意だ。人の心の機微が分からなかったレックスは、少しずつ人間の心に触れた事で沢山の感情を学んだ。
寂しい、悲しい、楽しい、嬉しい。どれも知らなければならなかった事だ。
「僕も最後まで頑張るよ。ノエル達とまた色んな所を旅したいから」
「……ぶん(うん)」
本当は最後まで皆と一緒にやり遂げるつもりだったけれど、この選択が正しかったのかどうかは分からないけれど、もう決めた事だ。絶対にまた皆と会うために、憂いのない未来を目指す為に。
ノエルは決意したように顔を上げてレックスを真正面からじっと見て冷たいレックスの手を取った。
レックスの深い深い青い目は、磨き上げられた鏡のようにノエルの姿を映し出している。
「頑張ろうね、レックス」
「うん。きっと、大丈夫」
しばらく二人はただ黙って手を繋いでいた。
この時の決意を、ノエルもレックスも、きっと一生忘れない。
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