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第545話 太古の技術
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「そなたが言っていただろう? 水晶に凄まじいエネルギーが詰まっている、と」
「言ったね」
「それが大正解だったのだ。お前たち、アメリアを見つけたそうだな? あやつは今、どこに居る?」
「ディノの坑道だけど」
「そうか……ではやはりアメリアが次元を開いたのだな」
視線を伏せた妖精王に、ノアも何かに気づいたように眉をしかめて観測者を見る。
「あなたの思っている通りよ。彼女は原子複製転移装置を破壊して次元を開いたのよ。私が姉妹星に行くのに毎度使うその水晶。それはこの星の中心に2つ置いてあるの。そこが一番星からのエネルギーが溜まるからね。そこからゲートにエネルギーを供給して私は次元と空間を移動している。これは太古の技術よ」
観測者の言葉にノアは考え込むように頷いた。
「やっぱりこの世界の技術は退化したんだね。それで? アメリアはどうやってあの装置を壊したのかな? その方法をあなたは知ってる?」
「もちろん知っているわ。けれどそれはあなた達に教える事は出来ない。あの原子複製転移装置を開発したのは今で言うバレンシア家。そしてそれを悪用したのがスチュアート家よ。彼らはその技術を深く知っていた。でもバレンシア家はその知識を捨てたみたいね。また過ちを犯してしまわないように、何も残さなかった。けれどスチュアート家は逆。その技術を使ってこの世界を乗っ取ろうとしてたんじゃないかしら。そしてようやくその時が来た。アメリアが持っている原子複製転移装置は意図的に壊されているわ。こうなったら何が起こるか私にも分からない」
「なるほど。つまり、とても厄介な事になってるって事か。やっぱりあの時無理矢理にでもアメリアを拘束すべきだったかな?」
大きなため息をつきながらノアが言うと、キリが首を振った。
「いいえ、あの時はあれが最前だったのではないでしょうか。もしもあの時不用意にアメリアに近づいていたら、あなたも原子とやらに戻されていた可能性があります」
「そうね。近づかなくて正解よ、ノアちゃん。原子複製転移装置は私の知る限り人間は、というよりも生物は複雑すぎてまだ構成出来なかったの。食料を出す分には余裕だったんだけれどね、生物は難しい。つまり、壊すのも難しい。でも何かは必ず起こるわ。それこそ……酷いことになっていたかもしれない」
「……良かったよ、手を出さなくて」
メリットとデメリットをいつだって秤にかけるノアだが、あの時は何よりも金のピンを取り返すのを最優先させた。どうやらそれが功を奏したようだ。
「父さま、危ない事はしないってお願いだからね」
ホッと胸を撫で下ろしたノアの手をノエルが掴んだ。
「分かってるよ、ノエル。大丈夫、危ない事はしない。で、最初の質問に戻るんだけど、君たちはこれからどこへ行こうとしてるの?」
「核だよ。アメリアが次元を開いたおかげでディノの声が届くようになったんだ。次元を塞ぐ方法はレックス、というか賢者の石が知ってるみたい」
ノエルが言うと、ノアは口元に手を当てて頷いた。
「なるほど。それをしてレックスの負担になることは?」
「無いってディノが言ってた。いつも僕がディノと話してた時みたいに賢者の石に聞けって」
「そっか、分かった。まぁ万が一今レックスに何かあっても――」
そこまで言ってノアは口を噤むと、ふと何かに気づいたかのように振り向いて身構えた。そんなノアの態度に思わず全員が身構えたが、やってきたのは――。
「とうっ! 皆してどこ行くの!? 私も行く!」
「アリス! せめて足音は立ててほしかったかな?」
勢いよく飛びついてきたアリスをどうにか抱きかかえたノアが言うと、アリスはすぐさまテヘペロをしてニカッと笑った。
「兄さまなら気付くと思ったんだもん! あ! もしやもしやこの人は!?」
アリスはそう言って見たことの無い男性を見て目を輝かせた。そんなアリスを見て男性の方も苦笑いしている。
「やっと会えたわ、はじめまして、アリス。私が観測者よ」
「ひょぉ! はじめまして! アリスだよ! 私もずーっと会いたかったんだ! 手を貸してくれてありがとう! あとね、ソラさんにもお礼言っておいてね!」
「あら、ソラにも?」
「うん! だって、ソラさんが今星を管理してくれてるんでしょ? 凄いことらしいってリー君が言ってた!」
「そうね、確かに凄いことだわ。でもソラにお礼なんている?」
思わず観測者が妖精王を見ると、妖精王は鼻を鳴らしながら言った。
「いらぬ。自分で蒔いた種だ」
「でもさ、ソラさんが管理するって言い出してくれなかったら妖精王、今も自由に動けなかったじゃん。それにソラさんが本気出したら星一つ壊すことも容易いでしょ? それをしなかったって事は! この星をソラさんも助けたいんだよ! だからお礼言うの。ありがとう!」
「……なんて素直でポジティブな子なの……」
「まぁ、これがアリスの良い所だな。分かった。というよりも、ソラもきっと聞いているだろう。盛大に礼を言ってやれ」
「うん! さて、それでこれから皆で何するの? どこ行くの?」
観測者との挨拶が終わってアリスは子どもたちに無理やりキスして回ると、もう一度全員を見渡した。そして一連の出来事を聞いて青ざめる。
「そ、それは急がないとだよ! どうしてこんな所で油売ってるの!」
「それはお嬢様が我々を止めたからでは」
相変わらずなアリスにキリが真顔で言うと、アリスはおもむろにレックスを抱き上げて走り出した。少しもじっとしていられないアリスだ。何よりもこれから妖精王とオズワルドの戦いが始まろうかという時に次元がどうたら言ってる場合ではない。
「言ったね」
「それが大正解だったのだ。お前たち、アメリアを見つけたそうだな? あやつは今、どこに居る?」
「ディノの坑道だけど」
「そうか……ではやはりアメリアが次元を開いたのだな」
視線を伏せた妖精王に、ノアも何かに気づいたように眉をしかめて観測者を見る。
「あなたの思っている通りよ。彼女は原子複製転移装置を破壊して次元を開いたのよ。私が姉妹星に行くのに毎度使うその水晶。それはこの星の中心に2つ置いてあるの。そこが一番星からのエネルギーが溜まるからね。そこからゲートにエネルギーを供給して私は次元と空間を移動している。これは太古の技術よ」
観測者の言葉にノアは考え込むように頷いた。
「やっぱりこの世界の技術は退化したんだね。それで? アメリアはどうやってあの装置を壊したのかな? その方法をあなたは知ってる?」
「もちろん知っているわ。けれどそれはあなた達に教える事は出来ない。あの原子複製転移装置を開発したのは今で言うバレンシア家。そしてそれを悪用したのがスチュアート家よ。彼らはその技術を深く知っていた。でもバレンシア家はその知識を捨てたみたいね。また過ちを犯してしまわないように、何も残さなかった。けれどスチュアート家は逆。その技術を使ってこの世界を乗っ取ろうとしてたんじゃないかしら。そしてようやくその時が来た。アメリアが持っている原子複製転移装置は意図的に壊されているわ。こうなったら何が起こるか私にも分からない」
「なるほど。つまり、とても厄介な事になってるって事か。やっぱりあの時無理矢理にでもアメリアを拘束すべきだったかな?」
大きなため息をつきながらノアが言うと、キリが首を振った。
「いいえ、あの時はあれが最前だったのではないでしょうか。もしもあの時不用意にアメリアに近づいていたら、あなたも原子とやらに戻されていた可能性があります」
「そうね。近づかなくて正解よ、ノアちゃん。原子複製転移装置は私の知る限り人間は、というよりも生物は複雑すぎてまだ構成出来なかったの。食料を出す分には余裕だったんだけれどね、生物は難しい。つまり、壊すのも難しい。でも何かは必ず起こるわ。それこそ……酷いことになっていたかもしれない」
「……良かったよ、手を出さなくて」
メリットとデメリットをいつだって秤にかけるノアだが、あの時は何よりも金のピンを取り返すのを最優先させた。どうやらそれが功を奏したようだ。
「父さま、危ない事はしないってお願いだからね」
ホッと胸を撫で下ろしたノアの手をノエルが掴んだ。
「分かってるよ、ノエル。大丈夫、危ない事はしない。で、最初の質問に戻るんだけど、君たちはこれからどこへ行こうとしてるの?」
「核だよ。アメリアが次元を開いたおかげでディノの声が届くようになったんだ。次元を塞ぐ方法はレックス、というか賢者の石が知ってるみたい」
ノエルが言うと、ノアは口元に手を当てて頷いた。
「なるほど。それをしてレックスの負担になることは?」
「無いってディノが言ってた。いつも僕がディノと話してた時みたいに賢者の石に聞けって」
「そっか、分かった。まぁ万が一今レックスに何かあっても――」
そこまで言ってノアは口を噤むと、ふと何かに気づいたかのように振り向いて身構えた。そんなノアの態度に思わず全員が身構えたが、やってきたのは――。
「とうっ! 皆してどこ行くの!? 私も行く!」
「アリス! せめて足音は立ててほしかったかな?」
勢いよく飛びついてきたアリスをどうにか抱きかかえたノアが言うと、アリスはすぐさまテヘペロをしてニカッと笑った。
「兄さまなら気付くと思ったんだもん! あ! もしやもしやこの人は!?」
アリスはそう言って見たことの無い男性を見て目を輝かせた。そんなアリスを見て男性の方も苦笑いしている。
「やっと会えたわ、はじめまして、アリス。私が観測者よ」
「ひょぉ! はじめまして! アリスだよ! 私もずーっと会いたかったんだ! 手を貸してくれてありがとう! あとね、ソラさんにもお礼言っておいてね!」
「あら、ソラにも?」
「うん! だって、ソラさんが今星を管理してくれてるんでしょ? 凄いことらしいってリー君が言ってた!」
「そうね、確かに凄いことだわ。でもソラにお礼なんている?」
思わず観測者が妖精王を見ると、妖精王は鼻を鳴らしながら言った。
「いらぬ。自分で蒔いた種だ」
「でもさ、ソラさんが管理するって言い出してくれなかったら妖精王、今も自由に動けなかったじゃん。それにソラさんが本気出したら星一つ壊すことも容易いでしょ? それをしなかったって事は! この星をソラさんも助けたいんだよ! だからお礼言うの。ありがとう!」
「……なんて素直でポジティブな子なの……」
「まぁ、これがアリスの良い所だな。分かった。というよりも、ソラもきっと聞いているだろう。盛大に礼を言ってやれ」
「うん! さて、それでこれから皆で何するの? どこ行くの?」
観測者との挨拶が終わってアリスは子どもたちに無理やりキスして回ると、もう一度全員を見渡した。そして一連の出来事を聞いて青ざめる。
「そ、それは急がないとだよ! どうしてこんな所で油売ってるの!」
「それはお嬢様が我々を止めたからでは」
相変わらずなアリスにキリが真顔で言うと、アリスはおもむろにレックスを抱き上げて走り出した。少しもじっとしていられないアリスだ。何よりもこれから妖精王とオズワルドの戦いが始まろうかという時に次元がどうたら言ってる場合ではない。
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