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第553話 アウェーなアーロ
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子どもたちは大人には無い独創的なアイディアでこちらを助けようとしてくれている。何だか懐かしくなったルイスが小さく笑うと、そこへようやくアリス達が戻ってきた。
「たっだいま~! 大変大変、ちょっと皆集まって!」
広場に戻るなりアリスは子どもたちを下ろして駆けつけ一杯と言わんばかりに、ルイスがやかんに用意してくれていたお茶をカップに注いで一気飲みすると、皆に声をかけた。
その言葉に皆がわらわらと寄ってくる。
「あのね、妖精王が少し遅れそうなんだ!」
「なんで? 今地上大変な事になってるんだけど?」
ただでさええ非常事態だと言うのに一体どういう事だと言わんばかりにリアンがアリスに詰め寄ると、アリスは困ったように視線を泳がせてノアを見ている。
「実はね――」
ノアは今、核で起こっている事を全員に簡単に説明した。そこに妖精王の力が必要不可欠である事を伝えると、その途端に仲間たちが絶望したような顔をする。
「そ、それは困りましたね。では僕たちはこれからどうすれば……」
「ノア、まさかここで指咥えて待ってる訳じゃねぇよな?」
「もちろんだよ、師匠。戦闘班は妖精王が戻るまでは地上の掃除を、それからアメリアの方にも誰かが行かないと。誰が行く?」
「僕が行こうか」
ノアの問いかけに名乗りをあげたのはアンソニーだ。
けれどそれが妥当だと考えたのはアンソニーだけだったようで、他の皆はギョッとした顔をしている。
「いやあんた、超重要人物になんかあったらどうすんのさ! いくら不老不死でもその次元とやらに突き飛ばされたらどうなるか分かんないんだよ!?」
「それは君たちにも言える事だよ。不老不死だからこそ僕が行くと言っているんだ。体を破壊されるかもしれないリスクはここに居る全員にある。でも、もしかしたら僕にはそれは効かないかもしれない。違うかい?」
「違いはしないけど……」
「それにね、リー君。彼女は助かるためならどんな芝居でもする。例えば突然泣き出して目の前でドレスを脱がれたりしたらどうする?」
「え、どうもしないけど」
ライラ以外のそういうものは特に何も感じないリアンが即答すると、アンソニーは笑顔で頷く。
「うん、君はね。でもそれじゃあ他の人は?」
「あー……少なくとも変態とキリとアーロとパパ以外は動揺するよね、多分」
「そうなんだ。でもパパ以外の3人は地上組だよ、どう考えても」
「そだね。パパでは戦闘力に不安があるもんな……何だかんだ言いながら優しいし……」
そう言ってチラリとユアンを見ると、ユアンはアーロから逃げ回るのに必死になっている。
「お前、なんでわざわざこっちに来るんだよ!」
「分かりきった事を。俺もお前と一緒でここでは結構アウェーだ。それならば旧友であるお前の側が一番落ち着く」
「俺は落ち着かねぇんだよ! なんでこんな時だけ協調性発揮させるんだよ!」
「失礼だな。俺はこう見えて協調性の塊だ」
「嘘つけ! お前が協調性の塊だったら大半の人間は協調性の塊だ! いいからあっち行けよ」
「行かない。こんな機会は滅多に無いんだ。お前とは学生の頃にもあまり話す機会が無かった。これを機に歩み寄る努力をするべきだ」
「お前が一方的にグイグイ歩み寄ってきても意味ねぇだろ!?」
「ふむ、それにしてもお前は春の庭に入ったのか? 学生の頃のまんまじゃないか」
「何話すりかえようとしてんだよ。天気の話から入るお喋り入門みたいな事止めろよ、気持ち悪いな」
「駄目か。ではそうだな……この間リサが――」
「ねぇ、あれ誰か助けてあげなくていいの?」
しばらくそんあユアンとアーロを見ていたリアンがポツリと言うと、アンソニーは肩を竦めて笑った。
「助けた方がいいのかもしれないが、何だか楽しそうだから放っておこう。それで、僕が行っても構わないかい?」
「そうだね。それがもしかしたら一番いいのかも。僕はもうアメリアには警戒されすぎてるし、他にアメリアと面識があるのなんて誰も居ないし」
アンソニーの質問にノアが答えると、アンソニーは満足げに頷いた。
「父さん、大丈夫なのですか?」
「ああ、カール。大丈夫だ。あくまでも僕は妖精王と観測者の護衛だよ。そうだろう? ノア君」
「そうだね。アメリアを下手に捕まえるのはよした方がいいと思う」
「うん。ユアンもそう言っていたよ。彼女は他に何を持っているか分からないってね。そういう訳だからカール、君は地上の方を頼んだよ」
「分かりました。事が終わり次第すぐにこちらに合流してください」
「ああ、分かった」
「皆、今の聞こえてたよね? アンソニー王がアメリアの所に行ってくれる。カイン、ルイス、オルト兄さんにアルファさんは引き続きここで子どもたちとあちらからの情報をまとめて。それ以外は皆地上に出て少しでもオズとヴァニタスの負担を減らすように」
「分かった。組分けはどうすんの? またコイツと?」
リアンが顔を顰めながらアリスを指差すと、ノアは首を横に振った。
「たっだいま~! 大変大変、ちょっと皆集まって!」
広場に戻るなりアリスは子どもたちを下ろして駆けつけ一杯と言わんばかりに、ルイスがやかんに用意してくれていたお茶をカップに注いで一気飲みすると、皆に声をかけた。
その言葉に皆がわらわらと寄ってくる。
「あのね、妖精王が少し遅れそうなんだ!」
「なんで? 今地上大変な事になってるんだけど?」
ただでさええ非常事態だと言うのに一体どういう事だと言わんばかりにリアンがアリスに詰め寄ると、アリスは困ったように視線を泳がせてノアを見ている。
「実はね――」
ノアは今、核で起こっている事を全員に簡単に説明した。そこに妖精王の力が必要不可欠である事を伝えると、その途端に仲間たちが絶望したような顔をする。
「そ、それは困りましたね。では僕たちはこれからどうすれば……」
「ノア、まさかここで指咥えて待ってる訳じゃねぇよな?」
「もちろんだよ、師匠。戦闘班は妖精王が戻るまでは地上の掃除を、それからアメリアの方にも誰かが行かないと。誰が行く?」
「僕が行こうか」
ノアの問いかけに名乗りをあげたのはアンソニーだ。
けれどそれが妥当だと考えたのはアンソニーだけだったようで、他の皆はギョッとした顔をしている。
「いやあんた、超重要人物になんかあったらどうすんのさ! いくら不老不死でもその次元とやらに突き飛ばされたらどうなるか分かんないんだよ!?」
「それは君たちにも言える事だよ。不老不死だからこそ僕が行くと言っているんだ。体を破壊されるかもしれないリスクはここに居る全員にある。でも、もしかしたら僕にはそれは効かないかもしれない。違うかい?」
「違いはしないけど……」
「それにね、リー君。彼女は助かるためならどんな芝居でもする。例えば突然泣き出して目の前でドレスを脱がれたりしたらどうする?」
「え、どうもしないけど」
ライラ以外のそういうものは特に何も感じないリアンが即答すると、アンソニーは笑顔で頷く。
「うん、君はね。でもそれじゃあ他の人は?」
「あー……少なくとも変態とキリとアーロとパパ以外は動揺するよね、多分」
「そうなんだ。でもパパ以外の3人は地上組だよ、どう考えても」
「そだね。パパでは戦闘力に不安があるもんな……何だかんだ言いながら優しいし……」
そう言ってチラリとユアンを見ると、ユアンはアーロから逃げ回るのに必死になっている。
「お前、なんでわざわざこっちに来るんだよ!」
「分かりきった事を。俺もお前と一緒でここでは結構アウェーだ。それならば旧友であるお前の側が一番落ち着く」
「俺は落ち着かねぇんだよ! なんでこんな時だけ協調性発揮させるんだよ!」
「失礼だな。俺はこう見えて協調性の塊だ」
「嘘つけ! お前が協調性の塊だったら大半の人間は協調性の塊だ! いいからあっち行けよ」
「行かない。こんな機会は滅多に無いんだ。お前とは学生の頃にもあまり話す機会が無かった。これを機に歩み寄る努力をするべきだ」
「お前が一方的にグイグイ歩み寄ってきても意味ねぇだろ!?」
「ふむ、それにしてもお前は春の庭に入ったのか? 学生の頃のまんまじゃないか」
「何話すりかえようとしてんだよ。天気の話から入るお喋り入門みたいな事止めろよ、気持ち悪いな」
「駄目か。ではそうだな……この間リサが――」
「ねぇ、あれ誰か助けてあげなくていいの?」
しばらくそんあユアンとアーロを見ていたリアンがポツリと言うと、アンソニーは肩を竦めて笑った。
「助けた方がいいのかもしれないが、何だか楽しそうだから放っておこう。それで、僕が行っても構わないかい?」
「そうだね。それがもしかしたら一番いいのかも。僕はもうアメリアには警戒されすぎてるし、他にアメリアと面識があるのなんて誰も居ないし」
アンソニーの質問にノアが答えると、アンソニーは満足げに頷いた。
「父さん、大丈夫なのですか?」
「ああ、カール。大丈夫だ。あくまでも僕は妖精王と観測者の護衛だよ。そうだろう? ノア君」
「そうだね。アメリアを下手に捕まえるのはよした方がいいと思う」
「うん。ユアンもそう言っていたよ。彼女は他に何を持っているか分からないってね。そういう訳だからカール、君は地上の方を頼んだよ」
「分かりました。事が終わり次第すぐにこちらに合流してください」
「ああ、分かった」
「皆、今の聞こえてたよね? アンソニー王がアメリアの所に行ってくれる。カイン、ルイス、オルト兄さんにアルファさんは引き続きここで子どもたちとあちらからの情報をまとめて。それ以外は皆地上に出て少しでもオズとヴァニタスの負担を減らすように」
「分かった。組分けはどうすんの? またコイツと?」
リアンが顔を顰めながらアリスを指差すと、ノアは首を横に振った。
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