558 / 746
第556話 オズワルドは良い人?
しおりを挟む
「行っちゃった」
ポツリとノエルが言うと、そんなノエルの手をアミナスが強く握りしめてきた。
「大丈夫だよ、兄さま。母さま達は強いもん!」
「うん、そうだね。それじゃあ僕たちはこれからどうしよっか?」
ノエルが言うと、それまで何か考え事をしていたレオがふと何かを思い出したかのように口を開いた。
「リゼが心配です。ここへ連れてきましょう」
「連れてくるより、俺たちがあちらへ移動した方が良くないですか? いつでもディノの鍵を使えるようにしておいた方がいい気がします」
「それは確かにそうですね。どのみち俺たちがここに居ても出来る事はありませんし」
カイの意見に全員が頷いたのを見てレオは作戦会議真っ只中のアルファの服の裾を引っ張った。それに気づいたアルファがハッとして振り返る。
「あ、すみません。どうかしましたか?」
「俺たちはディノの部屋に戻ろうと思います。ここに居ても出来る事はありませんし、何よりもリゼが心配です」
レオが言うと、その言葉に反応したのはルイスだ。
「その方がいいかもしれんな。あそこには妖精王の結界があるのだろう?」
「らしいけどな。分かった。それじゃあお前たちにはリゼの護衛を頼むよ」
「子どもたち、気をつけるんだぞ。いくら妖精王の結界があると言え、勝手な事はしないようにな」
「ええ、分かっています。それでは行ってきます」
三人の大人達の言葉にレオはしっかりと返事をして広場を出た。どうやら大人たちは自分たちがただ大人しくディノの部屋で待っていると思っているようだが、そうはいかない。レプリカに移動した皆の分までこちらで頑張ると約束をしたのだ。
ただ大人しくリーゼロッテの護衛だけをしている訳にはいかない。
レックスの案内でディノの部屋まで戻ってきたノエルたちは、まず一番にリーゼロッテの安否を確認した。妖精王の話ではオズワルドも簡単にここへやってこれるという。だとしたら、またオズワルドがいつここへやってきてもおかしくは無い。
「レックス、リゼだけでもディノの目の部屋に避難させられないかな?」
「出来ない事は無いと思うけど、どうして?」
「もしも今の状態でまたオズがここに来ちゃったら大変だなって思ったんだ」
「兄さまどういう意味? オズはもうこっちの味方だよ?」
「あなたはどうでもいい話はよく聞いているのに、肝心な話は本当に何も聞いていませんね。先程言っていたでしょう? オズが人形たちに引きずられている、と。今地上に溢れているのはより強い負のエネルギーの塊です。そのエネルギーに影響されているという事は、オズはまたリゼを取り返しにくる可能性が高いということです」
「おお! なるほどぉ……でも、また来るかなぁ?」
「分かりません。分かりませんが、リゼを避難させておくに越した事は無いです」
オズワルドの意志とは関係なく、エネルギーの質で気分が左右されるのであれば、今のオズワルドの状態はとても危険だと言うことになる。
レオの言葉にアミナスとレックスはようやく納得したように頷いた。
「分かった。それじゃあ一旦ディノの目の部屋を開ける」
「うん、ありがとうレックス! カイ、そこにリゼを運んでくれる?」
「ええ、もちろんです」
ノエルに言われてカイは軽々ディノのベッドに上がると、ディノのお腹の辺りで眠っていたリーゼロッテを抱き上げた。
『子どもたち、姫をどうするつもりだ?』
「ディノ! 妖精王達と一緒なんじゃないの?」
突然のディノの声にノエルがハッとして眠るディノを見上げると、ディノは少しだけ笑いを含んだ声で言った。
『私は今、意識だけの存在だ。どこで誰が何をしていようと見ることが出来る』
「そっか。オズが負のエネルギーに引っ張られてるらしいんだ。だからディノの目の部屋にリゼを一旦避難させようかと思って。駄目かな?」
『構わないが、オズがここへ来る可能性はもうほぼ無いだろう』
「……どういう事?」
『今のオズは姫の事も忘れている。強い執着と執念、そして焦燥だけが残っている状態だ。その原因が分からないようで、彼はとても戸惑っている』
「そんな! リゼの事忘れちゃってるの!?」
ディノの声に思わずアミナスが叫ぶと、一瞬ディノの小さなため息のような音が聞こえた。
『ああ、残念だが。彼には今、とてつもない試練が訪れている。どこまでアリス達との約束を覚えていられるか、それが鍵になるだろう』
「オズは……大丈夫だもん。絶対に絶対に大丈夫だもん!」
涙を浮かべて叫んだアミナスの頭を慰めるようにノエルが撫でてくれた。
「僕もそう思うよ、アミナス。今は一時オズは忘れているかもしれない。でも、妖精王が全てを浄化したら、元に戻る。そんな気がする」
「俺もそう思います。一時の感情に流されるほど、オズは弱くはありません」
「その通りです。ああ見えてオズは義理堅いのです」
「僕もそう思う。オズは思っているよりもずっと優しい。彼ほど生物の事を理解しようとしている神は居ない」
『お前たちはオズの事をそう評価しているのか』
「ディノはオズをどう思ってるの?」
ディノの言葉にレックスが問いかけると、少しだけ間があった後ディノが話し始めた。
ポツリとノエルが言うと、そんなノエルの手をアミナスが強く握りしめてきた。
「大丈夫だよ、兄さま。母さま達は強いもん!」
「うん、そうだね。それじゃあ僕たちはこれからどうしよっか?」
ノエルが言うと、それまで何か考え事をしていたレオがふと何かを思い出したかのように口を開いた。
「リゼが心配です。ここへ連れてきましょう」
「連れてくるより、俺たちがあちらへ移動した方が良くないですか? いつでもディノの鍵を使えるようにしておいた方がいい気がします」
「それは確かにそうですね。どのみち俺たちがここに居ても出来る事はありませんし」
カイの意見に全員が頷いたのを見てレオは作戦会議真っ只中のアルファの服の裾を引っ張った。それに気づいたアルファがハッとして振り返る。
「あ、すみません。どうかしましたか?」
「俺たちはディノの部屋に戻ろうと思います。ここに居ても出来る事はありませんし、何よりもリゼが心配です」
レオが言うと、その言葉に反応したのはルイスだ。
「その方がいいかもしれんな。あそこには妖精王の結界があるのだろう?」
「らしいけどな。分かった。それじゃあお前たちにはリゼの護衛を頼むよ」
「子どもたち、気をつけるんだぞ。いくら妖精王の結界があると言え、勝手な事はしないようにな」
「ええ、分かっています。それでは行ってきます」
三人の大人達の言葉にレオはしっかりと返事をして広場を出た。どうやら大人たちは自分たちがただ大人しくディノの部屋で待っていると思っているようだが、そうはいかない。レプリカに移動した皆の分までこちらで頑張ると約束をしたのだ。
ただ大人しくリーゼロッテの護衛だけをしている訳にはいかない。
レックスの案内でディノの部屋まで戻ってきたノエルたちは、まず一番にリーゼロッテの安否を確認した。妖精王の話ではオズワルドも簡単にここへやってこれるという。だとしたら、またオズワルドがいつここへやってきてもおかしくは無い。
「レックス、リゼだけでもディノの目の部屋に避難させられないかな?」
「出来ない事は無いと思うけど、どうして?」
「もしも今の状態でまたオズがここに来ちゃったら大変だなって思ったんだ」
「兄さまどういう意味? オズはもうこっちの味方だよ?」
「あなたはどうでもいい話はよく聞いているのに、肝心な話は本当に何も聞いていませんね。先程言っていたでしょう? オズが人形たちに引きずられている、と。今地上に溢れているのはより強い負のエネルギーの塊です。そのエネルギーに影響されているという事は、オズはまたリゼを取り返しにくる可能性が高いということです」
「おお! なるほどぉ……でも、また来るかなぁ?」
「分かりません。分かりませんが、リゼを避難させておくに越した事は無いです」
オズワルドの意志とは関係なく、エネルギーの質で気分が左右されるのであれば、今のオズワルドの状態はとても危険だと言うことになる。
レオの言葉にアミナスとレックスはようやく納得したように頷いた。
「分かった。それじゃあ一旦ディノの目の部屋を開ける」
「うん、ありがとうレックス! カイ、そこにリゼを運んでくれる?」
「ええ、もちろんです」
ノエルに言われてカイは軽々ディノのベッドに上がると、ディノのお腹の辺りで眠っていたリーゼロッテを抱き上げた。
『子どもたち、姫をどうするつもりだ?』
「ディノ! 妖精王達と一緒なんじゃないの?」
突然のディノの声にノエルがハッとして眠るディノを見上げると、ディノは少しだけ笑いを含んだ声で言った。
『私は今、意識だけの存在だ。どこで誰が何をしていようと見ることが出来る』
「そっか。オズが負のエネルギーに引っ張られてるらしいんだ。だからディノの目の部屋にリゼを一旦避難させようかと思って。駄目かな?」
『構わないが、オズがここへ来る可能性はもうほぼ無いだろう』
「……どういう事?」
『今のオズは姫の事も忘れている。強い執着と執念、そして焦燥だけが残っている状態だ。その原因が分からないようで、彼はとても戸惑っている』
「そんな! リゼの事忘れちゃってるの!?」
ディノの声に思わずアミナスが叫ぶと、一瞬ディノの小さなため息のような音が聞こえた。
『ああ、残念だが。彼には今、とてつもない試練が訪れている。どこまでアリス達との約束を覚えていられるか、それが鍵になるだろう』
「オズは……大丈夫だもん。絶対に絶対に大丈夫だもん!」
涙を浮かべて叫んだアミナスの頭を慰めるようにノエルが撫でてくれた。
「僕もそう思うよ、アミナス。今は一時オズは忘れているかもしれない。でも、妖精王が全てを浄化したら、元に戻る。そんな気がする」
「俺もそう思います。一時の感情に流されるほど、オズは弱くはありません」
「その通りです。ああ見えてオズは義理堅いのです」
「僕もそう思う。オズは思っているよりもずっと優しい。彼ほど生物の事を理解しようとしている神は居ない」
『お前たちはオズの事をそう評価しているのか』
「ディノはオズをどう思ってるの?」
ディノの言葉にレックスが問いかけると、少しだけ間があった後ディノが話し始めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
120
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる