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第559話 一番仲の良い友だち
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「心友って言うのは、一番仲の良い友だちって事だって聞いた。それだったらノエルが一番僕を理解しようとしてくれてると思う。そういうのが友達だって前に何かで読んだ」
「そうだね。僕とレックスはもう心友だ」
「うん。レオとカイは何だかお兄さんみたい。少しだけ……怖い」
「それも当たってる。あの二人は僕にとっては兄だよ。だから悪いことをしたら叱られるし、良い事をしたら褒めてくれる。あの二人は本当にかけがえのない存在なんだ。何よりもアミナスを制御するのに、僕だけでは絶対に無理だから、そういう意味でもあの二人は必要不可欠なんだよ」
「分かる。レオとカイが居るからアミナスはあんなにも自由。ちょっとだけ羨ましい」
見たことも会った事も無い兄という存在は、きっとレオとカイのような存在だったに違いない。レックスが胸を押さえてそんな事を言うと、ふとノエルが口を開いた。
「ねぇ、それじゃあアミナスはレックスの何なの?」
「アミナス……僕にも良く分からない。でも、アミナスが笑うと花が咲いたみたいにほっこりする。怒ってると嫌われたかと思って悲しくなる。泣いてたらどうにかしたくなる。でもこの感情が何か、僕にはよく分からない」
「そっか。うん、良いと思う! 僕もレックスなら色々と安心だし!」
「? ノエルにはこの感情の意味が分かる?」
「う~ん……分かるけど、その答えはいつか自分で見つけるべきだと思うよ。それに、僕もまだその感情を知らないんだ。頭では知っていてもね。だからその感情に関してはレックスの方が先輩だよ」
間違いなくレックスがアミナスに抱いている感情は恋愛感情だ。ノエルはまだ知識でしかその感情の事を説明する事は出来ないが、いつかレックスがその感情を理解した時、絶対に反対してくるであろうノアからレックスを守ろうと心に誓った。
「ノエルもよく分からないのか。病気ではない?」
「違う違う! むしろ、ごく普通の事だよ! さて、そろそろレオとカイが限界かもしれない。戻ろっか」
「安心した。うん、戻ろう。アミナスのパンチは凄く痛い」
いつだったか寝ぼけたアミナスに思い切り殴られた事があったが、鉱石で出来たレックスでさえ痛いと感じたのだ。あれは相当である。
「あはは! うん、そうだね」
ノエルはそう言ってもう一度ディノの目を見て部屋を後にした。
ディノの寝室に戻ると、床に倒れる双子と二人の間で仁王立ちしているアミナスの姿があった。
「アミナス! 一体何したの!?」
「な、何もしてないもん!」
「何もしてない事ないでしょ!? 何でもかんでも暴力で解決するなっていつもあれほど言われてるのに!」
ノエルはつかつかとアミナスに近寄ってアミナスに厳しい視線を向けると、レオとカイがヨロヨロと起き上がった。
「ノエル様、誤解です。俺たちは別に殴られた訳ではありません」
「お嬢様の気を引こうとけしかけたゲームで負けたのです。不甲斐ない……」
尊敬する父のようにはまだまだアミナスの気をそらす事は出来ないようだと痛感した双子は、この世の終わりだとでも言うようにヘコんでいた。
「そうなの? アミナスが手を出した訳じゃないの?」
「出してないもん! 罰ゲームでくすぐりの刑しただけだもん!」
あらぬ疑いをかけられて憤慨しながらアミナスが言うと、ノエルは申し訳なさそうな顔をしてアミナスを抱きしめてきた。
「そうなんだ、ごめんねアミナス。疑っちゃって」
「えへへ! いいよ!」
ノエルから頬にキスを受けてアミナスはすぐに破顔した。
単純明快なアミナスは兄のキス一つで機嫌が直るチョロイ女である。これはノアとアリスの喧嘩をずっと見てきたからなのだろう。
「レックス、大丈夫。アミナスが拗ねてる時は頬にキスすればすぐにご機嫌が直るんだ」
「分かった。やってみる」
コソコソとノエルに耳打ちされたレックスは、ノエルが言う事を真に受けてアミナスを見下ろすと、まだ頬を押さえて喜んでいるアミナスに言う。
「アミナス、連れて行かなくてごめん」
「え? ひゃあっ!」
振り返ったと同時にレックスにまで頬にキスされたアミナスは、あまりの衝撃にその場でポカンと立ち尽くしてしまった。
「あれ? だめだった?」
口をあんぐりと開けて立ち尽くすアミナスを見てレックスが言うと、途端にアミナスは熟れたリンゴよりも真っ赤になり、次いで今度は青りんごのように真っ青になった。
「サ、サンバどころじゃない! これはフラメンコだよ!!!」
アミナスは胸を押さえて大きく深呼吸をする。どうにか暴れ倒す心臓を落ち着かせなければ、本当に死んでしまうかもしれないと思ったのだ。
そんなアミナスをレックスは不思議そうに首を傾げて見ている。
「?」
「え、えらいこっちゃ……ディノが起きたら一番に診てもらわないと!」
「また心臓がサンバを踊ってるの?」
「今回はサンバじゃないよ! フラメンコ! もうね、飛び出しそうだよ!」
「それは危険。分かった、もうしない」
「うん! ディノに診てもらうまで我慢ね!」
「うん」
フラメンコというダンスがよく分からないが、心臓が飛び出しそうなのは良くないに決まっている。レックスは真顔で頷くと困ったようにノエルを見たが、ノエルはお腹を抱えて笑っているだけで心配する素振りも見せない。
そんなレックスの肩を耐えかねたようにレオが叩いた。
「レックス、大丈夫です。お嬢様の心臓はどこも悪くはありません。まぁ、お嬢様にもそのうち原因が分かるでしょう」
「……分かった」
とは言いつつ本当はよく分からないが、もしかしたらアミナスもレックスと同じように何かの感情を持て余しているだけなのかもしれないと思い、とりあえず頷いておいた。
「そうだね。僕とレックスはもう心友だ」
「うん。レオとカイは何だかお兄さんみたい。少しだけ……怖い」
「それも当たってる。あの二人は僕にとっては兄だよ。だから悪いことをしたら叱られるし、良い事をしたら褒めてくれる。あの二人は本当にかけがえのない存在なんだ。何よりもアミナスを制御するのに、僕だけでは絶対に無理だから、そういう意味でもあの二人は必要不可欠なんだよ」
「分かる。レオとカイが居るからアミナスはあんなにも自由。ちょっとだけ羨ましい」
見たことも会った事も無い兄という存在は、きっとレオとカイのような存在だったに違いない。レックスが胸を押さえてそんな事を言うと、ふとノエルが口を開いた。
「ねぇ、それじゃあアミナスはレックスの何なの?」
「アミナス……僕にも良く分からない。でも、アミナスが笑うと花が咲いたみたいにほっこりする。怒ってると嫌われたかと思って悲しくなる。泣いてたらどうにかしたくなる。でもこの感情が何か、僕にはよく分からない」
「そっか。うん、良いと思う! 僕もレックスなら色々と安心だし!」
「? ノエルにはこの感情の意味が分かる?」
「う~ん……分かるけど、その答えはいつか自分で見つけるべきだと思うよ。それに、僕もまだその感情を知らないんだ。頭では知っていてもね。だからその感情に関してはレックスの方が先輩だよ」
間違いなくレックスがアミナスに抱いている感情は恋愛感情だ。ノエルはまだ知識でしかその感情の事を説明する事は出来ないが、いつかレックスがその感情を理解した時、絶対に反対してくるであろうノアからレックスを守ろうと心に誓った。
「ノエルもよく分からないのか。病気ではない?」
「違う違う! むしろ、ごく普通の事だよ! さて、そろそろレオとカイが限界かもしれない。戻ろっか」
「安心した。うん、戻ろう。アミナスのパンチは凄く痛い」
いつだったか寝ぼけたアミナスに思い切り殴られた事があったが、鉱石で出来たレックスでさえ痛いと感じたのだ。あれは相当である。
「あはは! うん、そうだね」
ノエルはそう言ってもう一度ディノの目を見て部屋を後にした。
ディノの寝室に戻ると、床に倒れる双子と二人の間で仁王立ちしているアミナスの姿があった。
「アミナス! 一体何したの!?」
「な、何もしてないもん!」
「何もしてない事ないでしょ!? 何でもかんでも暴力で解決するなっていつもあれほど言われてるのに!」
ノエルはつかつかとアミナスに近寄ってアミナスに厳しい視線を向けると、レオとカイがヨロヨロと起き上がった。
「ノエル様、誤解です。俺たちは別に殴られた訳ではありません」
「お嬢様の気を引こうとけしかけたゲームで負けたのです。不甲斐ない……」
尊敬する父のようにはまだまだアミナスの気をそらす事は出来ないようだと痛感した双子は、この世の終わりだとでも言うようにヘコんでいた。
「そうなの? アミナスが手を出した訳じゃないの?」
「出してないもん! 罰ゲームでくすぐりの刑しただけだもん!」
あらぬ疑いをかけられて憤慨しながらアミナスが言うと、ノエルは申し訳なさそうな顔をしてアミナスを抱きしめてきた。
「そうなんだ、ごめんねアミナス。疑っちゃって」
「えへへ! いいよ!」
ノエルから頬にキスを受けてアミナスはすぐに破顔した。
単純明快なアミナスは兄のキス一つで機嫌が直るチョロイ女である。これはノアとアリスの喧嘩をずっと見てきたからなのだろう。
「レックス、大丈夫。アミナスが拗ねてる時は頬にキスすればすぐにご機嫌が直るんだ」
「分かった。やってみる」
コソコソとノエルに耳打ちされたレックスは、ノエルが言う事を真に受けてアミナスを見下ろすと、まだ頬を押さえて喜んでいるアミナスに言う。
「アミナス、連れて行かなくてごめん」
「え? ひゃあっ!」
振り返ったと同時にレックスにまで頬にキスされたアミナスは、あまりの衝撃にその場でポカンと立ち尽くしてしまった。
「あれ? だめだった?」
口をあんぐりと開けて立ち尽くすアミナスを見てレックスが言うと、途端にアミナスは熟れたリンゴよりも真っ赤になり、次いで今度は青りんごのように真っ青になった。
「サ、サンバどころじゃない! これはフラメンコだよ!!!」
アミナスは胸を押さえて大きく深呼吸をする。どうにか暴れ倒す心臓を落ち着かせなければ、本当に死んでしまうかもしれないと思ったのだ。
そんなアミナスをレックスは不思議そうに首を傾げて見ている。
「?」
「え、えらいこっちゃ……ディノが起きたら一番に診てもらわないと!」
「また心臓がサンバを踊ってるの?」
「今回はサンバじゃないよ! フラメンコ! もうね、飛び出しそうだよ!」
「それは危険。分かった、もうしない」
「うん! ディノに診てもらうまで我慢ね!」
「うん」
フラメンコというダンスがよく分からないが、心臓が飛び出しそうなのは良くないに決まっている。レックスは真顔で頷くと困ったようにノエルを見たが、ノエルはお腹を抱えて笑っているだけで心配する素振りも見せない。
そんなレックスの肩を耐えかねたようにレオが叩いた。
「レックス、大丈夫です。お嬢様の心臓はどこも悪くはありません。まぁ、お嬢様にもそのうち原因が分かるでしょう」
「……分かった」
とは言いつつ本当はよく分からないが、もしかしたらアミナスもレックスと同じように何かの感情を持て余しているだけなのかもしれないと思い、とりあえず頷いておいた。
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