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第620話
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その時、突然そんなディノ達に水を差すようにノアがパンと手を打った。
「さて! それじゃあ感動の再会は全部終わったら勝手にやってもらうとして、リー君、ちょっとレプリカに繋いでくれる?」
「あんたね、もうちょっとなんかこう……いや、もういいや。繋ぐのはいいけど、一体何するつもり?」
「ん? あっちの進捗はどうかなと思って」
「……どういう事? あんた、もしかしてあの子達に何かやらせてたの?」
「まぁね。どうせなら最後まで参戦したいかなと思って」
言いながらノアは後ろに隠れていたAMINASを振り返ってしゃがみこむ。
「どう? 集まった? AMINAS」
「うん! 大収穫だよ! きっとヴァニタスもビックリだよ!」
「そっか。それじゃあお仕事頼んだよ、AMINAS。全てが終わったら自分でキャラクターのカテゴリにアバターを入れて出てくるんだよ?」
「うん! それじゃあ行ってきます! パパ、お兄ちゃん!」
「ええ、また後で。気をつけるんですよ。データは丁重に扱ってくださいね!」
「はぁい!」
そう言ってAMINASはその場で霧のように掻き消えた。それを間近に見ていた仲間たちは唖然としている。そんな中、リアンだけはいつも通りだ。
「で、あんた何させたの? レプリカの子たちに」
「ああ、そうだった。AMINASのドレスの切れ端を持ってそこら中飛んで回ってもらってたんだよ」
「はあ!? い、いつの間にそんな事頼んだんですか!?」
「おお、珍しくアランが荒ぶっているぞ」
「ルイス、お前は黙ってろよ。で、どういう事? ノア」
「そのまんまだよ。アメリアの偵察は一旦中止して、AMINASの所へ行ってドレスの切れ端を受け取ったらまた世界中を飛び回ってってお願いしたんだ。まさか僕たちだけでヴァニタスが弱体化するだけのエネルギーを集められるとは思って無かったでしょ?」
「それはそうだけど……なるほどな。で、あの偵察隊に頼んだのか。てかな、言えよ! そういう事は行動を起こす前に!」
「思いついたのはAMINASのドレスを見た時だったんだから仕方ないでしょ。それにあの時にはもう皆散り散りになってたし」
「そうかもだけど、せめてメッセージ送れよな! アリスちゃんじゃないんだから!」
「え、何で私が引き合いに出されるの?」
カインの言葉にアリスが思わず呟くと、そんなアリスにキャロラインとライラが言う。
「仕方ないわ、アリス。だってアリスも連絡しないんだもの」
「そうよ。そういう意味ではあなた達似た者夫婦よ」
「……」
この二人に真顔で言われたら流石のアリスも歯向かうことは出来ない。しょんぼりと項垂れたアリスはおもむろにノエルとアミナスを抱きしめた。
「母さま、私もだから大丈夫だよ!」
「アミナス、それは慰めになってないよ」
「うぅ……慰めようとしてくれてるのか何なのかよく分かんないよ、二人共」
アリスが鼻をすすりながら二人を抱きしめていると、どこからともなく良い匂いがしてきた。ふと匂いに釣られるように顔を上げると、部屋の隅でアーロとユアンが何故か仲良く料理をしている。
「おいアーロ、もうちょっとコショウ振れ」
「ああ」
アーロはインディゴに「こしょう」と呟いて鍋の上で振った。それを見てユアンが感心したようにインディゴを見ている。
「便利だな、こいつ」
「そうだろう? お前も地上に出てレインボー隊を持ったら是非調味料を入れておくといい」
「いや、それはどうだろうな」
「なんだ、まだ死ぬ気か」
「そうじゃなくて、もっと他に便利な使い方がありそうなのにわざわざ調味料持ち歩きたくねぇんだよ。てか、そもそも調理場以外で料理したくねぇ」
「そうか? ああ、そう言えばお前は昔から潔癖だったな」
何かを思い出したアーロが言うと、それにユアンは反発してくる。
「別に潔癖じゃねぇよ。調理場にきったない格好で入ってくるほうがおかしいだろ。お前とかエリザベスとかキャスパーとか、屋上の埃つけたまま調理場来やがって」
「俺ははたいていたぞ。そういうのを一切気にしなかったのはリサだけだ。キャスパーは知らん」
「そうかよ。あいつはとにかくいつも薄汚れてたんだよ。一体どこで何してたのか知らんが」
言いながらユアンは鍋をかき混ぜた。そこへアリスとアミナスが匂いに釣られたようにフラフラとやってくる。
「美味しい……匂いがする……」
「おじいちゃん……何作ってるの?」
「お前ら動物じゃねぇんだから匂いで寄ってくんなよ。そろそろ腹減るだろうと思ったんだよ。特にチビ達は育ちざかりだろ」
「私も! 私も育ち盛りだよ!」
「嘘つけ! 子供が二人も居て育ち盛りもくそもあるか。大人は我慢しろ。おいアミナス、あいつらも呼んできてやってくれ」
「は~い! 皆~おじいちゃんがご飯作ってくれたよ~!」
「ズルイ……!」
「ズルくない。せいぜい余ることを願うんだな」
「いいもん! 私にはおにぎりがあるもん!」
そう言ってアリスは踵を返して歩き出したけれど、その口元は笑顔だ。何だかユアンとの距離が縮まったような気がして、何よりもアミナス達の事を気にかけてくれているのが嬉しかったのだ。
「さて! それじゃあ感動の再会は全部終わったら勝手にやってもらうとして、リー君、ちょっとレプリカに繋いでくれる?」
「あんたね、もうちょっとなんかこう……いや、もういいや。繋ぐのはいいけど、一体何するつもり?」
「ん? あっちの進捗はどうかなと思って」
「……どういう事? あんた、もしかしてあの子達に何かやらせてたの?」
「まぁね。どうせなら最後まで参戦したいかなと思って」
言いながらノアは後ろに隠れていたAMINASを振り返ってしゃがみこむ。
「どう? 集まった? AMINAS」
「うん! 大収穫だよ! きっとヴァニタスもビックリだよ!」
「そっか。それじゃあお仕事頼んだよ、AMINAS。全てが終わったら自分でキャラクターのカテゴリにアバターを入れて出てくるんだよ?」
「うん! それじゃあ行ってきます! パパ、お兄ちゃん!」
「ええ、また後で。気をつけるんですよ。データは丁重に扱ってくださいね!」
「はぁい!」
そう言ってAMINASはその場で霧のように掻き消えた。それを間近に見ていた仲間たちは唖然としている。そんな中、リアンだけはいつも通りだ。
「で、あんた何させたの? レプリカの子たちに」
「ああ、そうだった。AMINASのドレスの切れ端を持ってそこら中飛んで回ってもらってたんだよ」
「はあ!? い、いつの間にそんな事頼んだんですか!?」
「おお、珍しくアランが荒ぶっているぞ」
「ルイス、お前は黙ってろよ。で、どういう事? ノア」
「そのまんまだよ。アメリアの偵察は一旦中止して、AMINASの所へ行ってドレスの切れ端を受け取ったらまた世界中を飛び回ってってお願いしたんだ。まさか僕たちだけでヴァニタスが弱体化するだけのエネルギーを集められるとは思って無かったでしょ?」
「それはそうだけど……なるほどな。で、あの偵察隊に頼んだのか。てかな、言えよ! そういう事は行動を起こす前に!」
「思いついたのはAMINASのドレスを見た時だったんだから仕方ないでしょ。それにあの時にはもう皆散り散りになってたし」
「そうかもだけど、せめてメッセージ送れよな! アリスちゃんじゃないんだから!」
「え、何で私が引き合いに出されるの?」
カインの言葉にアリスが思わず呟くと、そんなアリスにキャロラインとライラが言う。
「仕方ないわ、アリス。だってアリスも連絡しないんだもの」
「そうよ。そういう意味ではあなた達似た者夫婦よ」
「……」
この二人に真顔で言われたら流石のアリスも歯向かうことは出来ない。しょんぼりと項垂れたアリスはおもむろにノエルとアミナスを抱きしめた。
「母さま、私もだから大丈夫だよ!」
「アミナス、それは慰めになってないよ」
「うぅ……慰めようとしてくれてるのか何なのかよく分かんないよ、二人共」
アリスが鼻をすすりながら二人を抱きしめていると、どこからともなく良い匂いがしてきた。ふと匂いに釣られるように顔を上げると、部屋の隅でアーロとユアンが何故か仲良く料理をしている。
「おいアーロ、もうちょっとコショウ振れ」
「ああ」
アーロはインディゴに「こしょう」と呟いて鍋の上で振った。それを見てユアンが感心したようにインディゴを見ている。
「便利だな、こいつ」
「そうだろう? お前も地上に出てレインボー隊を持ったら是非調味料を入れておくといい」
「いや、それはどうだろうな」
「なんだ、まだ死ぬ気か」
「そうじゃなくて、もっと他に便利な使い方がありそうなのにわざわざ調味料持ち歩きたくねぇんだよ。てか、そもそも調理場以外で料理したくねぇ」
「そうか? ああ、そう言えばお前は昔から潔癖だったな」
何かを思い出したアーロが言うと、それにユアンは反発してくる。
「別に潔癖じゃねぇよ。調理場にきったない格好で入ってくるほうがおかしいだろ。お前とかエリザベスとかキャスパーとか、屋上の埃つけたまま調理場来やがって」
「俺ははたいていたぞ。そういうのを一切気にしなかったのはリサだけだ。キャスパーは知らん」
「そうかよ。あいつはとにかくいつも薄汚れてたんだよ。一体どこで何してたのか知らんが」
言いながらユアンは鍋をかき混ぜた。そこへアリスとアミナスが匂いに釣られたようにフラフラとやってくる。
「美味しい……匂いがする……」
「おじいちゃん……何作ってるの?」
「お前ら動物じゃねぇんだから匂いで寄ってくんなよ。そろそろ腹減るだろうと思ったんだよ。特にチビ達は育ちざかりだろ」
「私も! 私も育ち盛りだよ!」
「嘘つけ! 子供が二人も居て育ち盛りもくそもあるか。大人は我慢しろ。おいアミナス、あいつらも呼んできてやってくれ」
「は~い! 皆~おじいちゃんがご飯作ってくれたよ~!」
「ズルイ……!」
「ズルくない。せいぜい余ることを願うんだな」
「いいもん! 私にはおにぎりがあるもん!」
そう言ってアリスは踵を返して歩き出したけれど、その口元は笑顔だ。何だかユアンとの距離が縮まったような気がして、何よりもアミナス達の事を気にかけてくれているのが嬉しかったのだ。
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