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第625話
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そんな中、そんな事など何も知らないスマホを仕舞いながら今度はアリスに唐揚げのレシピを聞くリアンを見て、ニコラがポツリと言った。
「話には聞いてたけどリー君は優秀だなぁ。ねぇ君、全部終わったらメイリングで宰相とかやらない?」
突然のニコラの申し出にリアンは食べていた唐揚げをポロリと落としそうになっている。それを聞いてアンソニーが笑い出した。
「ははは、何をまた突然言い出すのかと思ったら」
「ちょっとあんた兄貴でしょ? 弟の暴挙止めなよ」
「それは無理だ。ニコラは昔からこうと決めたら必ずやる男なんだよ」
「それはそうですね。叔父さんはそういう方です。リー君さん、諦めてください」
「いやいや、いくら誘われてもどんなに高待遇でも僕は絶対にそんなのしないよ。それに僕はモブとセットだから。僕を雇うんならモブも雇わなきゃなんだからね」
「だから! なんであんたはそうやっていつも俺を引き合いに出すんすか!」
やっぱり突然巻き込まれたオリバーがリアンを睨むが、リアンはそんなオリバーの睨みなど、どこ吹く風だ。
「全然構わないよ! 二人も優秀な人材が入るとなると、メイリングが立ち直るのも早いかもしれないね!」
「ぜ、全然抑止力になってないじゃん! モブ、どうすんの!?」
「俺のせいじゃないっすよ! あ、じゃあアリスもどっすか? 俺たちいっつもセットなんで」
何の気無しにオリバーが言うと、それに面白そうにノアが乗っかってくる。
「アリスもメイリングに行くの? それじゃあ僕たちもだね、キリ」
「そうですね。あなた達、もしかしたら戦争が明けたらメイリングに移住になるかもしれません」
「えー! バセット領の皆と離れたくないよ! ドラゴンとか妖精とかクマとか他の子も一緒じゃないと嫌だよ!」
ノアとキリの言葉にアミナスが不満そうに声を上げた。それを聞いて何かを察したノエルと双子も頷いている。
「だそうだよ。いや~メイリングか~。アリス、メイリングではもしかしたら今のバセット領の倍ぐらいの大きさの土地もらえるかもしれないよ!」
「本当!? よーっし、それじゃあ一番大きな森がある土地貰って~そこに地下の動物たちのお引越しでしょ~それから畑も広げないと! 妖精たちも来るだろうから~――」
指折りしながらメイリングに行ったらやるべきことを数えだしたアリスに、とうとうニコラが引きつった。
「うん、ごめん。今の話は無かった事にしとこう。下手したら混乱のどさくさに紛れてメイリングがバセット国になりそうだ」
「ははは、賢明だね。だから言ったじゃないか。この家は相当変わっているよって」
「そうですよ。リー君さんとモブさんだけならまだしも、ここの領地まるごと受け入れるのはそれなりの覚悟が必要です。ねぇ? ルイス王、キャロライン王妃」
「……何故俺たちに振るんだ」
カールに言われてそっとアリスを見ると、アリスは何かを期待した目でキャロラインを見つめている。そんなアリスの視線を受けてキャロラインは戸惑ったように言った。
「私達は何て答えれば正解なのかしら……」
「もう! キャロライン様ってば照れ屋さんなんだから! ふふ、拙者が居なかったら寂しいと、皆の前ではっきり宣言して構わないのですぞ!? 拙者はいつでもキャロライン様の愛を受け入れる準備は万端ゆえ!」
「こ、怖いのよ、あなたのそういう所が……でも、それはそうね。学生時代からずっと一緒だからか、アリスがルーデリアから居なくなるのは寂しいわ。もちろんリー君もモブさんもノアもキリも子供達も。だからニコラ様ごめんなさい。この子達はもう私の体の一部のような存在なの。どれほど好条件でも簡単に送り出す事は出来ないわ」
「ぎゃどだいんざばぁぁぁ(キャロラインさまぁぁぁ)!!! ずぎっっ(すきっっ)!!!」
はっきりとニコラに断ってくれたキャロラインにアリスが感極まって飛びつくと、キャロラインは相変わらずよろけはするが、ちゃんと抱きとめてくれる。
「ちょっとちょっと~いいわね~キャロラインちゃん! ライラちゃん、今のは間違いなく名台詞よ!」
「はい!」
観測者に名指しされたライラはその場ですぐさま立ち上がって頬を紅潮させた。 レスターが以前観測者の元から持ち帰ってきたキャンディ・ハートの発売前の新作を見てライラはピンときたのだ。この人こそがあの憧れのキャンディ・ハートなのだと!
本人は身分をずっと隠しているのでライラはアリスのオタク精神に則ってそれを暴いたりはしない。こっそり萌えるだけだ。
そんな憧れの人に名指しされた! 名前呼ばれた! 認識されてた! そう思うだけで有頂天になってしまいそうである。
「ちょちょ! ライラ、こんな所で放電しないで!」
「あ、ごめんなさい」
リアンに言われてライラは胸を押さえてすぐさま深呼吸をしてポケットからアース線を取り出す。そんなライラを見てリアンは苦笑いだ。
「おかえり、観測者さん。妖精王は?」
「ただいま。これからよ。私も最後まで見てたかったけど、追い出されちゃったわ」
「そりゃそうですよ。はっきり言って邪魔でしかないでしょうし」
観測者の発言にはっきりと邪魔だと言い切ったシャルを見て観測者は引きつるが、まぁ大体シャルの言い分は当たっている。
「それは僕たちも含めてだけどね。今は地上には居ないほうがいい。何が起こるか分からないし」
ノアの言葉に仲間たちは無言で頷いてモニターに視線を移すと、そこには今正にオズワルドと対峙する妖精王の姿があった。
「話には聞いてたけどリー君は優秀だなぁ。ねぇ君、全部終わったらメイリングで宰相とかやらない?」
突然のニコラの申し出にリアンは食べていた唐揚げをポロリと落としそうになっている。それを聞いてアンソニーが笑い出した。
「ははは、何をまた突然言い出すのかと思ったら」
「ちょっとあんた兄貴でしょ? 弟の暴挙止めなよ」
「それは無理だ。ニコラは昔からこうと決めたら必ずやる男なんだよ」
「それはそうですね。叔父さんはそういう方です。リー君さん、諦めてください」
「いやいや、いくら誘われてもどんなに高待遇でも僕は絶対にそんなのしないよ。それに僕はモブとセットだから。僕を雇うんならモブも雇わなきゃなんだからね」
「だから! なんであんたはそうやっていつも俺を引き合いに出すんすか!」
やっぱり突然巻き込まれたオリバーがリアンを睨むが、リアンはそんなオリバーの睨みなど、どこ吹く風だ。
「全然構わないよ! 二人も優秀な人材が入るとなると、メイリングが立ち直るのも早いかもしれないね!」
「ぜ、全然抑止力になってないじゃん! モブ、どうすんの!?」
「俺のせいじゃないっすよ! あ、じゃあアリスもどっすか? 俺たちいっつもセットなんで」
何の気無しにオリバーが言うと、それに面白そうにノアが乗っかってくる。
「アリスもメイリングに行くの? それじゃあ僕たちもだね、キリ」
「そうですね。あなた達、もしかしたら戦争が明けたらメイリングに移住になるかもしれません」
「えー! バセット領の皆と離れたくないよ! ドラゴンとか妖精とかクマとか他の子も一緒じゃないと嫌だよ!」
ノアとキリの言葉にアミナスが不満そうに声を上げた。それを聞いて何かを察したノエルと双子も頷いている。
「だそうだよ。いや~メイリングか~。アリス、メイリングではもしかしたら今のバセット領の倍ぐらいの大きさの土地もらえるかもしれないよ!」
「本当!? よーっし、それじゃあ一番大きな森がある土地貰って~そこに地下の動物たちのお引越しでしょ~それから畑も広げないと! 妖精たちも来るだろうから~――」
指折りしながらメイリングに行ったらやるべきことを数えだしたアリスに、とうとうニコラが引きつった。
「うん、ごめん。今の話は無かった事にしとこう。下手したら混乱のどさくさに紛れてメイリングがバセット国になりそうだ」
「ははは、賢明だね。だから言ったじゃないか。この家は相当変わっているよって」
「そうですよ。リー君さんとモブさんだけならまだしも、ここの領地まるごと受け入れるのはそれなりの覚悟が必要です。ねぇ? ルイス王、キャロライン王妃」
「……何故俺たちに振るんだ」
カールに言われてそっとアリスを見ると、アリスは何かを期待した目でキャロラインを見つめている。そんなアリスの視線を受けてキャロラインは戸惑ったように言った。
「私達は何て答えれば正解なのかしら……」
「もう! キャロライン様ってば照れ屋さんなんだから! ふふ、拙者が居なかったら寂しいと、皆の前ではっきり宣言して構わないのですぞ!? 拙者はいつでもキャロライン様の愛を受け入れる準備は万端ゆえ!」
「こ、怖いのよ、あなたのそういう所が……でも、それはそうね。学生時代からずっと一緒だからか、アリスがルーデリアから居なくなるのは寂しいわ。もちろんリー君もモブさんもノアもキリも子供達も。だからニコラ様ごめんなさい。この子達はもう私の体の一部のような存在なの。どれほど好条件でも簡単に送り出す事は出来ないわ」
「ぎゃどだいんざばぁぁぁ(キャロラインさまぁぁぁ)!!! ずぎっっ(すきっっ)!!!」
はっきりとニコラに断ってくれたキャロラインにアリスが感極まって飛びつくと、キャロラインは相変わらずよろけはするが、ちゃんと抱きとめてくれる。
「ちょっとちょっと~いいわね~キャロラインちゃん! ライラちゃん、今のは間違いなく名台詞よ!」
「はい!」
観測者に名指しされたライラはその場ですぐさま立ち上がって頬を紅潮させた。 レスターが以前観測者の元から持ち帰ってきたキャンディ・ハートの発売前の新作を見てライラはピンときたのだ。この人こそがあの憧れのキャンディ・ハートなのだと!
本人は身分をずっと隠しているのでライラはアリスのオタク精神に則ってそれを暴いたりはしない。こっそり萌えるだけだ。
そんな憧れの人に名指しされた! 名前呼ばれた! 認識されてた! そう思うだけで有頂天になってしまいそうである。
「ちょちょ! ライラ、こんな所で放電しないで!」
「あ、ごめんなさい」
リアンに言われてライラは胸を押さえてすぐさま深呼吸をしてポケットからアース線を取り出す。そんなライラを見てリアンは苦笑いだ。
「おかえり、観測者さん。妖精王は?」
「ただいま。これからよ。私も最後まで見てたかったけど、追い出されちゃったわ」
「そりゃそうですよ。はっきり言って邪魔でしかないでしょうし」
観測者の発言にはっきりと邪魔だと言い切ったシャルを見て観測者は引きつるが、まぁ大体シャルの言い分は当たっている。
「それは僕たちも含めてだけどね。今は地上には居ないほうがいい。何が起こるか分からないし」
ノアの言葉に仲間たちは無言で頷いてモニターに視線を移すと、そこには今正にオズワルドと対峙する妖精王の姿があった。
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