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第629話
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「大変です! 幽閉していたエミリーが姿を消しました!」
レプリカの作戦会議テントに駆け込んできたのはルーイだ。青ざめた様子でテントに飛びこんで発言をしたのだが、その言葉を聞いても誰一人驚かなかった。それどころかそれを聞いてルードが口の端だけを上げて不敵に笑う。
「かかったよ、親父」
「ああ、そのようだ。ルカ、手はずは整ってますね?」
「もちろんだ。行こう、ラルフ王」
「ああ」
そう言ってラルフとルカは立ち上がりテントを出ていく。その様子をポカンとして見ていたのはルーイで、しばらくしてすぐに何かに気付いた。
「人が悪いですよ! 我々にまで黙っているなど!」
「ははは、悪いとは思ったんですが、ルードがどうしても黙っておけというもので」
おっとりした様子で言うロビンにルーイはゴクリと息を呑む。ルードが廃嫡されるまで、この二人はルーデリアを守護する者達と呼ばれていた経歴がある。とにかく頭のキレるライト家の者達はそれぐらい優秀だったのだ。
そして今はそこにカインという現宰相もいる。これはもう何か裏で軍事作戦が動いていたに違いないのだ。
ルーイは大きなため息を落としてテントの入り口でしゃがみ込むと、じろりとロビンを見上げた。
「それで? 次の我々への指示は?」
「すぐに各地で捕まえた者達を何かしら理由をつけて開放してほしい。彼らは仲間たちを探し出し、次の作戦に移るはずだ」
「次の作戦、ですか?」
「ああ。アメリアはまだ何か企んでいる。その為にアンソニー王とカール、そしてニコラがあちらに前倒しで戻った。これだけ揃ってて何か起きない訳がない」
「親父の言う通り。肝心のアメリアも見つかっていない。彼らには彼ら独自の連絡網があり、それをこちらが特定出来ていない以上、今は泳がせるしかない。その一端を担うのが、恐らくエミリーなんだ」
「ですが、彼女は少し精神が……」
「そうだね。でもそれが芝居だという確証がない。何よりも精神が不安定なだけで、完全におかしくなっている訳でもない。最後の仕事をこなす事ぐらいは出来ると思うよ」
「……泳がせるのですか」
「そう。そしてあちらに戻ってもらう。君たちもね」
「! 畏まりました。すぐに準備します」
「うん、悟られないように」
「はい!」
ルーイはすぐさま二人に頭を下げて騎士団テントに戻り、そこで今の状況をセイとユーゴ、それからゾルにだけ告げた。
「分かった。それじゃあ武器は僕に任せて。理由をつけて一箇所に集めさせるから」
「ええ、頼みます」
「私は騎士団の配置換えを言い渡してきます。その間に捕らえている者達を開放させるようにしましょう」
「ああ、頼んだ。恐らくだが、騎士団の中にもスパイが居る可能性が高い。新しい、古いに関わらずアリス嬢のカードを持っていない者達が怪しいと俺は踏んでいる」
「嫁のカード……僕もある」
「私もです」
「俺もあるよぉ~」
「……もちろん俺も持たされた。このカードはある意味決め手になる最強カードだ。会員ナンバーでも尋ねたら炙り出せるかもしれないな」
苦笑いをして言うルーイに、セイとゾルが真顔で頷いてテントを後にした。そんな様子を見ていたユーゴがポツリと言う。
「隊長ぉ~あの二人生真面目なんだからさぁ~、あんな事言ったら本当に皆に会員番号聞いて回るよぉ~?」
「……すまん。冗談のつもりだったんだ……」
その後すぐにあちこちの騎士から何故か突然セイとゾルがやってきて、出会い頭にアリスのカップリング厨カードの会員番号を言わされたという苦情が相次いだのだが、それはまだ少し先の話だ。
こうして、レプリカでも最後の決戦に向けての事態は着々と動き出していた。
レプリカの作戦会議テントに駆け込んできたのはルーイだ。青ざめた様子でテントに飛びこんで発言をしたのだが、その言葉を聞いても誰一人驚かなかった。それどころかそれを聞いてルードが口の端だけを上げて不敵に笑う。
「かかったよ、親父」
「ああ、そのようだ。ルカ、手はずは整ってますね?」
「もちろんだ。行こう、ラルフ王」
「ああ」
そう言ってラルフとルカは立ち上がりテントを出ていく。その様子をポカンとして見ていたのはルーイで、しばらくしてすぐに何かに気付いた。
「人が悪いですよ! 我々にまで黙っているなど!」
「ははは、悪いとは思ったんですが、ルードがどうしても黙っておけというもので」
おっとりした様子で言うロビンにルーイはゴクリと息を呑む。ルードが廃嫡されるまで、この二人はルーデリアを守護する者達と呼ばれていた経歴がある。とにかく頭のキレるライト家の者達はそれぐらい優秀だったのだ。
そして今はそこにカインという現宰相もいる。これはもう何か裏で軍事作戦が動いていたに違いないのだ。
ルーイは大きなため息を落としてテントの入り口でしゃがみ込むと、じろりとロビンを見上げた。
「それで? 次の我々への指示は?」
「すぐに各地で捕まえた者達を何かしら理由をつけて開放してほしい。彼らは仲間たちを探し出し、次の作戦に移るはずだ」
「次の作戦、ですか?」
「ああ。アメリアはまだ何か企んでいる。その為にアンソニー王とカール、そしてニコラがあちらに前倒しで戻った。これだけ揃ってて何か起きない訳がない」
「親父の言う通り。肝心のアメリアも見つかっていない。彼らには彼ら独自の連絡網があり、それをこちらが特定出来ていない以上、今は泳がせるしかない。その一端を担うのが、恐らくエミリーなんだ」
「ですが、彼女は少し精神が……」
「そうだね。でもそれが芝居だという確証がない。何よりも精神が不安定なだけで、完全におかしくなっている訳でもない。最後の仕事をこなす事ぐらいは出来ると思うよ」
「……泳がせるのですか」
「そう。そしてあちらに戻ってもらう。君たちもね」
「! 畏まりました。すぐに準備します」
「うん、悟られないように」
「はい!」
ルーイはすぐさま二人に頭を下げて騎士団テントに戻り、そこで今の状況をセイとユーゴ、それからゾルにだけ告げた。
「分かった。それじゃあ武器は僕に任せて。理由をつけて一箇所に集めさせるから」
「ええ、頼みます」
「私は騎士団の配置換えを言い渡してきます。その間に捕らえている者達を開放させるようにしましょう」
「ああ、頼んだ。恐らくだが、騎士団の中にもスパイが居る可能性が高い。新しい、古いに関わらずアリス嬢のカードを持っていない者達が怪しいと俺は踏んでいる」
「嫁のカード……僕もある」
「私もです」
「俺もあるよぉ~」
「……もちろん俺も持たされた。このカードはある意味決め手になる最強カードだ。会員ナンバーでも尋ねたら炙り出せるかもしれないな」
苦笑いをして言うルーイに、セイとゾルが真顔で頷いてテントを後にした。そんな様子を見ていたユーゴがポツリと言う。
「隊長ぉ~あの二人生真面目なんだからさぁ~、あんな事言ったら本当に皆に会員番号聞いて回るよぉ~?」
「……すまん。冗談のつもりだったんだ……」
その後すぐにあちこちの騎士から何故か突然セイとゾルがやってきて、出会い頭にアリスのカップリング厨カードの会員番号を言わされたという苦情が相次いだのだが、それはまだ少し先の話だ。
こうして、レプリカでも最後の決戦に向けての事態は着々と動き出していた。
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