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第645話
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「父さま、僕たちはどうしたらいいの?」
ノエルが過去に手紙を書くノアの元へ行って尋ねると、ノアは顔を上げてノエルの頭を撫でていった。
「君たちはここで待機だよ。ディノに魔力を返すのは最後の最後だ。いいね?」
「……分かった」
始めから分かっていた事だが、やはり最後の戦いには参加させてはもらえないと分かったノエルは、素直に頷いて子どもたちの元へ戻る。
「それじゃあ僕たちも行くよ。誰かから合図があるまで、君たちはここで大人しくしてるんだよ」
「絶対に動いちゃ駄目だゾ! 約束だからね」
ノアとアリスはそう言って子どもたち一人一人を抱きしめて、ついでにディノも抱きしめる。
「うん。父さま、母さま、皆も気をつけてね」
「が、があざば……どうざば……」
ノエルが言うと、隣でアミナスが泣き出してしまった。そんなアミナスに苦笑いしながら残りのメンバーも部屋を後にする。
そんな皆の後ろ姿を見て何だか胸が締め付けられるような苦しさにノエルは大きく息を吐いた。
ノアの考えは正しい。ただノエルには一つだけ懸念があった。ノアが何故、今この時に手紙を書いたのか、だ。
アンソニーの話ではノアからの手紙はここが最後だったと言っていた。
ノエルは腕を組んで考え込むと、皆の居る核に戻ってこれについて話した。
「……確かにノエル様の言う通りですね」
「旦那様は何故ここから手紙を出したのでしょう?」
「やっぱり変でしょ? 僕のただの考え過ぎならいいんだけどさ」
考え込むノエルとレオとカイを余所に、ディノとレックスとリーゼロッテはアミナスを囲んで楽しくお喋りなどしている。全く、呑気なものだ。
その時だ。突然、置いてあったモニターが勝手にレプリカと繋がった。
けれどそこには誰も映っておらず、怒声のようなものがあちこちから聞こえてくる。
モニターから聞こえてくる怒声にアミナスが何事かと近寄ってくると、そんなアミナスに続いてレックスとディノ、そしてリーゼロッテもやってきた。
「兄さま~何見てるの~? え、ちょ! これどういう事!?」
「アミナス……分からない。あちらでは一体何が起こってるんだろう……皆はどこへ行っちゃったんだろう」
モニターには相変わらず誰も映されていない。まさか何かあったのか? ノエルがそう思ったその時、突然画面に絵美里が映し出された。
『あ~らら、まだこんな所にもモニターが! 隠したつもりなんでしょうけど、甘いわねぇ。さすが子供だわ。浅はかすぎて笑っちゃう!』
「……絵美里」
画面一杯に映し出された絵美里は最後に会った時と比べると随分と元気だ。目の下には真っ黒のクマが出来ているが、そんな事など気にならないほどのハイテンションに思わずノエルは息を呑む。
『ふ、ふふふ! 気分がいいわ。とても気分がいいの! こんな感覚どれぐらいぶりかしら!? やっと昔の私と決別出来たわ。もう誰の言いなりにもならない! 私は私の人生を生きるの! 乃亜と一緒にね! そうでしょう? ノエルちゃん。あなたのママはもうすぐ私よ』
「残念だけど僕の母さまはアリスだけ。何があっても僕は、僕たちはあなたの元になんて行かないよ」
『そんな強がりを言っていられるのは今のうちだけよ。いずれあなた達は私に頭を下げに来るわ。どうか私達の子供にしてくださいってね! その時までさようなら~』
最後のモニターを見つけた絵美里はノエル達と会話をした後、遠慮なくぶち壊してテントの中を見渡した。
テントの中は乱雑に物が置かれていて特に気になるような物は何も無い。というか、人が居た気配すら無い。
「ここにも居ない……やっぱりあいつらの子は皆あちらに残ってるのかしら? まぁいいわ。あっちに着いたら一番に子どもたちを囚えて見せしめに殺せばいいのよね」
先程子どもたちばかりが集められたテントも見てみたが、そこにも居なかった。
それどころか英雄と呼ばれる人たちの肉親達でさえまだ誰も見つかっていない。
「どこかから漏れたのね。王族の所へ直接向かうのは無理だし……」
どうせならこちらでも功績を上げようと思っていた絵美里だが、どうやら王族の肉親は全て手厚く保護されているらしい。遠目から見た王族だけが集まるテントの警備は今もなお厚くなっている。あれではとてもではないが手は出せない。
「はぁ~つまらない! 早く暴れたいのにな~! ふふ、アリスみたい!」
いつも破天荒で暴れる事ばかりを考えているアリス。憎らしいノアの嫁の顔を思い出して絵美里はニィーっと不敵に笑う。
ノアの好みがああいう女なのであれば、絵美里もそうなればいい。絵美里はそれも厭わない。何故ならもうとっくに絵美里という人格は捨ててきたのだから。
「そろそろ始まるかしらね~お祭りが!」
そう言って絵美里は入り口にあった木箱を無意味に蹴りつけると、テントを後にする。
それから程なく、アメリアから渡された不思議な水晶が光りだした。絵美里はその水晶を地面に置き、水晶と共に託された詠唱を唱えると、突然足元が光りだし、それはじわじわと広がっていく。
「皆! 行くわよ!」
絵美里の号令に兵士たちは叫んで光に飛び込んだ。
ノエルが過去に手紙を書くノアの元へ行って尋ねると、ノアは顔を上げてノエルの頭を撫でていった。
「君たちはここで待機だよ。ディノに魔力を返すのは最後の最後だ。いいね?」
「……分かった」
始めから分かっていた事だが、やはり最後の戦いには参加させてはもらえないと分かったノエルは、素直に頷いて子どもたちの元へ戻る。
「それじゃあ僕たちも行くよ。誰かから合図があるまで、君たちはここで大人しくしてるんだよ」
「絶対に動いちゃ駄目だゾ! 約束だからね」
ノアとアリスはそう言って子どもたち一人一人を抱きしめて、ついでにディノも抱きしめる。
「うん。父さま、母さま、皆も気をつけてね」
「が、があざば……どうざば……」
ノエルが言うと、隣でアミナスが泣き出してしまった。そんなアミナスに苦笑いしながら残りのメンバーも部屋を後にする。
そんな皆の後ろ姿を見て何だか胸が締め付けられるような苦しさにノエルは大きく息を吐いた。
ノアの考えは正しい。ただノエルには一つだけ懸念があった。ノアが何故、今この時に手紙を書いたのか、だ。
アンソニーの話ではノアからの手紙はここが最後だったと言っていた。
ノエルは腕を組んで考え込むと、皆の居る核に戻ってこれについて話した。
「……確かにノエル様の言う通りですね」
「旦那様は何故ここから手紙を出したのでしょう?」
「やっぱり変でしょ? 僕のただの考え過ぎならいいんだけどさ」
考え込むノエルとレオとカイを余所に、ディノとレックスとリーゼロッテはアミナスを囲んで楽しくお喋りなどしている。全く、呑気なものだ。
その時だ。突然、置いてあったモニターが勝手にレプリカと繋がった。
けれどそこには誰も映っておらず、怒声のようなものがあちこちから聞こえてくる。
モニターから聞こえてくる怒声にアミナスが何事かと近寄ってくると、そんなアミナスに続いてレックスとディノ、そしてリーゼロッテもやってきた。
「兄さま~何見てるの~? え、ちょ! これどういう事!?」
「アミナス……分からない。あちらでは一体何が起こってるんだろう……皆はどこへ行っちゃったんだろう」
モニターには相変わらず誰も映されていない。まさか何かあったのか? ノエルがそう思ったその時、突然画面に絵美里が映し出された。
『あ~らら、まだこんな所にもモニターが! 隠したつもりなんでしょうけど、甘いわねぇ。さすが子供だわ。浅はかすぎて笑っちゃう!』
「……絵美里」
画面一杯に映し出された絵美里は最後に会った時と比べると随分と元気だ。目の下には真っ黒のクマが出来ているが、そんな事など気にならないほどのハイテンションに思わずノエルは息を呑む。
『ふ、ふふふ! 気分がいいわ。とても気分がいいの! こんな感覚どれぐらいぶりかしら!? やっと昔の私と決別出来たわ。もう誰の言いなりにもならない! 私は私の人生を生きるの! 乃亜と一緒にね! そうでしょう? ノエルちゃん。あなたのママはもうすぐ私よ』
「残念だけど僕の母さまはアリスだけ。何があっても僕は、僕たちはあなたの元になんて行かないよ」
『そんな強がりを言っていられるのは今のうちだけよ。いずれあなた達は私に頭を下げに来るわ。どうか私達の子供にしてくださいってね! その時までさようなら~』
最後のモニターを見つけた絵美里はノエル達と会話をした後、遠慮なくぶち壊してテントの中を見渡した。
テントの中は乱雑に物が置かれていて特に気になるような物は何も無い。というか、人が居た気配すら無い。
「ここにも居ない……やっぱりあいつらの子は皆あちらに残ってるのかしら? まぁいいわ。あっちに着いたら一番に子どもたちを囚えて見せしめに殺せばいいのよね」
先程子どもたちばかりが集められたテントも見てみたが、そこにも居なかった。
それどころか英雄と呼ばれる人たちの肉親達でさえまだ誰も見つかっていない。
「どこかから漏れたのね。王族の所へ直接向かうのは無理だし……」
どうせならこちらでも功績を上げようと思っていた絵美里だが、どうやら王族の肉親は全て手厚く保護されているらしい。遠目から見た王族だけが集まるテントの警備は今もなお厚くなっている。あれではとてもではないが手は出せない。
「はぁ~つまらない! 早く暴れたいのにな~! ふふ、アリスみたい!」
いつも破天荒で暴れる事ばかりを考えているアリス。憎らしいノアの嫁の顔を思い出して絵美里はニィーっと不敵に笑う。
ノアの好みがああいう女なのであれば、絵美里もそうなればいい。絵美里はそれも厭わない。何故ならもうとっくに絵美里という人格は捨ててきたのだから。
「そろそろ始まるかしらね~お祭りが!」
そう言って絵美里は入り口にあった木箱を無意味に蹴りつけると、テントを後にする。
それから程なく、アメリアから渡された不思議な水晶が光りだした。絵美里はその水晶を地面に置き、水晶と共に託された詠唱を唱えると、突然足元が光りだし、それはじわじわと広がっていく。
「皆! 行くわよ!」
絵美里の号令に兵士たちは叫んで光に飛び込んだ。
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