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第693話 番外編『その時、レプリカでは』
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ライアンは神妙な顔をして静かに話し出した。ノエル達と別れた後、レプリカでも色んな事が起こったのだ。
「お前たちも絵美里にモニターが壊された事は知っているよな?」
「うん。あれは結局何だったの?」
「あれはお前たちも知っての通り、アメリアが仲間を犠牲にして自分の力を蓄えようとするのを仲間たちに見せたくなかったみたいなんだ。モニターは時間差があるスマホとは違って、地上で起こった事をそのまますぐにモニターに映し出してしまうだろう? それをこちらに居る仲間たちに見せたくなかったようなんだ」
「なるほどね。実際地上でもアメリアが無作為にエネルギーに仲間を変えて行くのを見て逃げた人たちも多かったもんね」
「ああ、そうなんだ。こちらへ戻ってきたアメリア兵達は随分取り乱しててさ」
ルークが言うと、ライアンを始めとするジャスミンもローズでさえも頷いている。
「それは当然です。今まで神だと崇めていた人が、急に豹変したら恐怖です」
「全く以てその通りでな。こちらに戻ってもその傷はなかなか癒えなさそうだ。可哀想だが地上に戻ったらあいつらは一旦保養所送りだな」
精神を破壊されてしまった者たちは凶暴で手がつけられない者もいれば、自害しようとする者まで居る。今はそういう人たちは一時隔離している状態だ。
「残っても戻っても地獄だね」
「ほんとにな」
ライアンはそれからルードが絵美里がモニターを壊そうと画策しているという情報を掴んだ事、それからその作戦に沿って自分たちも一時期バラバラになっていた事をノエル達に伝えた。
「そっか……やっぱりこっちでも色々大変だったんだね」
「ああ。だが、ドロシーとエマが立ち上げたお母さん会のおかげで誰も飢えずに済んでいるし、一人ぼっちで泣くものも居なかったようだしな。やはり戦場に家族が出向いた者たちの家族は怖かったみたいだ」
「そう言えばライラは?」
ふと思い出してノエルが言うと、突然テントが開いた。
飛び込んできたのはミアだ。ミアはまずは双子の元へ行って子どもたちを抱きしめると、その次にノエルとアミナス、そしてリーゼロッテを強く抱きしめる。
「皆! おかえりなさい!」
「母さん……苦しいです」
「泣かないでください、母さん」
「ミアさん! ただいま」
「ぐ、ぐるじい……意外とミアさん力強い……」
「た、ただいま」
「皆の活躍はちゃんと見てました。あの妖精手帳は役に立ちましたか?」
「もうすっごく役に立ったよ。ありがとう、ミアさん」
「流石母さんだと皆で褒め称えていました」
「その通りです。母さん、涙を拭いてください。俺たちは無事ですから」
「そうですね……皆無事でした……キリさんも元気ですか? 怪我などはしていませんか?」
ミアが思わず子どもたちに尋ねると、子どもたちはしっかりと頷いてくれる。
「父さんはいつも通り奥様に毒を吐いていました」
「元気に決まっています。父さんが母さんを残してポカをするはずがありません」
「そうですね! キリさんは約束は必ず約束を守る方ですから!」
そう言って涙を拭うミアを見て、ノエルとアミナスは顔を見合わせて首を傾げた。キリが約束を守る? それはミア限定ではないだろうか? そんな考えがふと脳裏を過るが、ノアも大概なので黙っておくことにする。
「皆! ライラさん連れてきたよ! あれ? ミアさん。もう来てたんだ」
「テオ様。すみません、噂を聞きつけて駆けつけてしまいました」
「突然居なくなったからそうかなって思ってた」
「皆! 無事だったのね! ほとんどのカメラが駄目になってしまったからどうしようかと思ってたけど、メガネ型のが残ってたの?」
ライラが不思議そうに言うと、子どもたちが頷いた。
「うん。ライラがかけてたメガネが残ってたんだ! それを今、アラン様がかけてくれてる」
「そうだったの。私、途中で意識を失ってしまったから、何も覚えてなくて。それから……リー君怒ってた?」
魔力を使い切ったライラは早々に戦線離脱をしてしまい、気づけばレプリカ送りになってしまっていた。やはりアリスのように無尽蔵に戦う事が出来なくて悔しいが、スマホに送られてくる映像を見ていた限り、あそこに自分が居てもきっと邪魔だっただろうと思うのでこれで良かったとも言える。
ライラの質問にノエルは肩を竦めて苦笑いを浮かべた。
「どうかな。あれは心配だったからじゃないかな。僕たちはその場に居なかったから詳しくは分からないけど、怒ってなんてないよ、多分」
「そうです。リー君さんはああ見えて人格者なので、そんな事では怒りません」
「リー君さんの怒りの原因はいつだって奥様ですから。ですが、とても心配はしていたと思います」
「そうね。ありがとう、皆! 戻ったらいっぱいハグしないと!」
ライラが頬を染めてそんな事を言うと、それを後ろで聞いていたジャスミンとローズが顔を見合わせてコソコソと言う。
「ローズ、もしかしたら妹か弟が出来るかもしれないわ」
「やった~! 弟が良い~」
まだ決まった訳でもないのに二人は喜んでいるが、ライラの父の予言ではこの二人がチャップマン商会を支えて行くと言っていたので、残念ながらその線はほぼ無いと言っていい。
「とにかく皆、無事で良かったわ。それから……本当にありがとう。あなた達の勇気のおかげできっと星は救われるわ」
ライラはそう言って子どもたちに頭を下げた。そんなライラの隣でミアも涙を浮かべて頭を下げている。それを見て子どもたちは顔を見合わせて照れたように微笑んで言う。
「ちがうよ。僕たちだけじゃない。皆で頑張ったんだよ」
ノエルの言葉に子どもたちは頷き、ライラとミアはとうとう涙をこぼして笑った。
「お前たちも絵美里にモニターが壊された事は知っているよな?」
「うん。あれは結局何だったの?」
「あれはお前たちも知っての通り、アメリアが仲間を犠牲にして自分の力を蓄えようとするのを仲間たちに見せたくなかったみたいなんだ。モニターは時間差があるスマホとは違って、地上で起こった事をそのまますぐにモニターに映し出してしまうだろう? それをこちらに居る仲間たちに見せたくなかったようなんだ」
「なるほどね。実際地上でもアメリアが無作為にエネルギーに仲間を変えて行くのを見て逃げた人たちも多かったもんね」
「ああ、そうなんだ。こちらへ戻ってきたアメリア兵達は随分取り乱しててさ」
ルークが言うと、ライアンを始めとするジャスミンもローズでさえも頷いている。
「それは当然です。今まで神だと崇めていた人が、急に豹変したら恐怖です」
「全く以てその通りでな。こちらに戻ってもその傷はなかなか癒えなさそうだ。可哀想だが地上に戻ったらあいつらは一旦保養所送りだな」
精神を破壊されてしまった者たちは凶暴で手がつけられない者もいれば、自害しようとする者まで居る。今はそういう人たちは一時隔離している状態だ。
「残っても戻っても地獄だね」
「ほんとにな」
ライアンはそれからルードが絵美里がモニターを壊そうと画策しているという情報を掴んだ事、それからその作戦に沿って自分たちも一時期バラバラになっていた事をノエル達に伝えた。
「そっか……やっぱりこっちでも色々大変だったんだね」
「ああ。だが、ドロシーとエマが立ち上げたお母さん会のおかげで誰も飢えずに済んでいるし、一人ぼっちで泣くものも居なかったようだしな。やはり戦場に家族が出向いた者たちの家族は怖かったみたいだ」
「そう言えばライラは?」
ふと思い出してノエルが言うと、突然テントが開いた。
飛び込んできたのはミアだ。ミアはまずは双子の元へ行って子どもたちを抱きしめると、その次にノエルとアミナス、そしてリーゼロッテを強く抱きしめる。
「皆! おかえりなさい!」
「母さん……苦しいです」
「泣かないでください、母さん」
「ミアさん! ただいま」
「ぐ、ぐるじい……意外とミアさん力強い……」
「た、ただいま」
「皆の活躍はちゃんと見てました。あの妖精手帳は役に立ちましたか?」
「もうすっごく役に立ったよ。ありがとう、ミアさん」
「流石母さんだと皆で褒め称えていました」
「その通りです。母さん、涙を拭いてください。俺たちは無事ですから」
「そうですね……皆無事でした……キリさんも元気ですか? 怪我などはしていませんか?」
ミアが思わず子どもたちに尋ねると、子どもたちはしっかりと頷いてくれる。
「父さんはいつも通り奥様に毒を吐いていました」
「元気に決まっています。父さんが母さんを残してポカをするはずがありません」
「そうですね! キリさんは約束は必ず約束を守る方ですから!」
そう言って涙を拭うミアを見て、ノエルとアミナスは顔を見合わせて首を傾げた。キリが約束を守る? それはミア限定ではないだろうか? そんな考えがふと脳裏を過るが、ノアも大概なので黙っておくことにする。
「皆! ライラさん連れてきたよ! あれ? ミアさん。もう来てたんだ」
「テオ様。すみません、噂を聞きつけて駆けつけてしまいました」
「突然居なくなったからそうかなって思ってた」
「皆! 無事だったのね! ほとんどのカメラが駄目になってしまったからどうしようかと思ってたけど、メガネ型のが残ってたの?」
ライラが不思議そうに言うと、子どもたちが頷いた。
「うん。ライラがかけてたメガネが残ってたんだ! それを今、アラン様がかけてくれてる」
「そうだったの。私、途中で意識を失ってしまったから、何も覚えてなくて。それから……リー君怒ってた?」
魔力を使い切ったライラは早々に戦線離脱をしてしまい、気づけばレプリカ送りになってしまっていた。やはりアリスのように無尽蔵に戦う事が出来なくて悔しいが、スマホに送られてくる映像を見ていた限り、あそこに自分が居てもきっと邪魔だっただろうと思うのでこれで良かったとも言える。
ライラの質問にノエルは肩を竦めて苦笑いを浮かべた。
「どうかな。あれは心配だったからじゃないかな。僕たちはその場に居なかったから詳しくは分からないけど、怒ってなんてないよ、多分」
「そうです。リー君さんはああ見えて人格者なので、そんな事では怒りません」
「リー君さんの怒りの原因はいつだって奥様ですから。ですが、とても心配はしていたと思います」
「そうね。ありがとう、皆! 戻ったらいっぱいハグしないと!」
ライラが頬を染めてそんな事を言うと、それを後ろで聞いていたジャスミンとローズが顔を見合わせてコソコソと言う。
「ローズ、もしかしたら妹か弟が出来るかもしれないわ」
「やった~! 弟が良い~」
まだ決まった訳でもないのに二人は喜んでいるが、ライラの父の予言ではこの二人がチャップマン商会を支えて行くと言っていたので、残念ながらその線はほぼ無いと言っていい。
「とにかく皆、無事で良かったわ。それから……本当にありがとう。あなた達の勇気のおかげできっと星は救われるわ」
ライラはそう言って子どもたちに頭を下げた。そんなライラの隣でミアも涙を浮かべて頭を下げている。それを見て子どもたちは顔を見合わせて照れたように微笑んで言う。
「ちがうよ。僕たちだけじゃない。皆で頑張ったんだよ」
ノエルの言葉に子どもたちは頷き、ライラとミアはとうとう涙をこぼして笑った。
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