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確率の計算
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リカコさんがキレイに片付けられたテーブルの上に、葵ちゃんから物々交換してもらった資料を広げる。
お昼は回っているとはいえ、まだまだざわめきの残る店内で、あたし達は額を合わせてのお話し合い。
「私も軽く目を通した程度なんだけど、私たちが内偵に入ったことで入ったガサが4件。
5課が独自に進めていた案件で入ったガサが2件。
ここ3か月ほどの成果よ」
資料の中にはそれぞれのガサ入れのあった日付と、組の名前、系列が記されている。
「こことここ、なんかおかしい」
ジュニアが指すのは、2ヶ所の組の違法薬物や銃刀法に引っかかるような物の押収率。
うん。確かに他と比べてみるとちょっと低めかな。
でも。
「そこまで突出しておかしな数字じゃないだろ」
あたしと同じ疑問をもったカイリが口を挟むけど、ジュニアが別の数字を指さしてもう一度口を開く。
「ここをみてよ。押収した裏帳簿から見た取引の金額。これだけのお金が動いていたにしては確率的に現物が少なすぎる。
不動産関係の詐欺とかに動いていたお金は他の組とそんなに変わらないのに……。しかも僕たちが内偵に入ってる現場だよ。
取引で手に入れた品物を捌く時間的な余裕はなかったと思うと、現金なんかと一緒に最低限を残して移動させたんじゃないかな」
「事前にガサが入るとわかっているからこそできる。ってこと?」
「うん」
リカコさんの言葉にジュニアがうなずくけど、そんな確率の計算なんてさっぱり解らないよぉ。
まぁ、ジュニアが気になったのなら、きっと何かあるんだろうな。
「銀龍会と宝銀会。どっちも白銀組系の傘下じゃないか」
眉をひそめるイチに、ジュニアが続ける。
「そ。頭悪男たちのいた銀龍会も入ってるし、この2ヶ所の逮捕率の低さは異常値だよ。
絶対に何かある」
「かと言って内情を探るには情報が少なすぎるしなぁ。今回は5課にお友達もいないし。
うーん。リカコの会った森稜高校の生徒って誰?
そこから情報下せないかな?」
ジュニアの提案にリカコさんもあんまりいい顔はしない。
「イヤよ。そんなに仲のいい人じゃないし、何より学校生活を巻き込むことはしたくないわ」
「じゃあこの件はちょっと保留かな。キバとアギトも白銀組系と関わりがありそうだし。いろいろ手を伸ばしてみるから時間頂戴」
資料を手元に集めながらのジュニアの提案に異論はない。
「そうだ。カエはなんか報告があったんじゃねぇの? 説教くらったんだろ」
イチが送ってくる視線に、つい顔がにまぁっとしちゃった。〈おじいさま〉に呼び出された件のことね。
視界の隅で、リカコさんがやれやれといった顔をする。
「いひひ。やっぱり渋谷の通り魔の件だった。越智だぬきも同席していたんだけどさ、渋谷署から警視総監賞の話が来たら辞退しろって。
んで。〈おじいさま〉がそれはそれは楽しそうに越智が怒るのを見ていたから、辞退する代わりにみんなでお疲れ様会するから副賞の金一封だけは頂戴ってお願いしてみたの」
「やった。貰えたんだ?」
「もちろぉん。微々たる額だからおねだりして金額つりあげちゃった」
ジュニアと小さくハイタッチ。
「越智だぬきのイライラが目に見えて、ホント大変だったんだからね。またしばらくは風当たりが強くなるわよ」
「越智だぬきが怒ってても、もう誰も気にならないだろ」
「……まあね」
カイリの的確な一言にリカコさんもしっかりうなずいてたりして。
「せりかさんも、順調に回復しているみたいだよ。なかなかお見舞いってわけにもいかないけど、こっちに帰ってきたら盛大にお帰りパーティしてあげようね」
笑いかけるイチの顔は少しほっとしたようにあたしに笑い返してくれた。
お昼は回っているとはいえ、まだまだざわめきの残る店内で、あたし達は額を合わせてのお話し合い。
「私も軽く目を通した程度なんだけど、私たちが内偵に入ったことで入ったガサが4件。
5課が独自に進めていた案件で入ったガサが2件。
ここ3か月ほどの成果よ」
資料の中にはそれぞれのガサ入れのあった日付と、組の名前、系列が記されている。
「こことここ、なんかおかしい」
ジュニアが指すのは、2ヶ所の組の違法薬物や銃刀法に引っかかるような物の押収率。
うん。確かに他と比べてみるとちょっと低めかな。
でも。
「そこまで突出しておかしな数字じゃないだろ」
あたしと同じ疑問をもったカイリが口を挟むけど、ジュニアが別の数字を指さしてもう一度口を開く。
「ここをみてよ。押収した裏帳簿から見た取引の金額。これだけのお金が動いていたにしては確率的に現物が少なすぎる。
不動産関係の詐欺とかに動いていたお金は他の組とそんなに変わらないのに……。しかも僕たちが内偵に入ってる現場だよ。
取引で手に入れた品物を捌く時間的な余裕はなかったと思うと、現金なんかと一緒に最低限を残して移動させたんじゃないかな」
「事前にガサが入るとわかっているからこそできる。ってこと?」
「うん」
リカコさんの言葉にジュニアがうなずくけど、そんな確率の計算なんてさっぱり解らないよぉ。
まぁ、ジュニアが気になったのなら、きっと何かあるんだろうな。
「銀龍会と宝銀会。どっちも白銀組系の傘下じゃないか」
眉をひそめるイチに、ジュニアが続ける。
「そ。頭悪男たちのいた銀龍会も入ってるし、この2ヶ所の逮捕率の低さは異常値だよ。
絶対に何かある」
「かと言って内情を探るには情報が少なすぎるしなぁ。今回は5課にお友達もいないし。
うーん。リカコの会った森稜高校の生徒って誰?
そこから情報下せないかな?」
ジュニアの提案にリカコさんもあんまりいい顔はしない。
「イヤよ。そんなに仲のいい人じゃないし、何より学校生活を巻き込むことはしたくないわ」
「じゃあこの件はちょっと保留かな。キバとアギトも白銀組系と関わりがありそうだし。いろいろ手を伸ばしてみるから時間頂戴」
資料を手元に集めながらのジュニアの提案に異論はない。
「そうだ。カエはなんか報告があったんじゃねぇの? 説教くらったんだろ」
イチが送ってくる視線に、つい顔がにまぁっとしちゃった。〈おじいさま〉に呼び出された件のことね。
視界の隅で、リカコさんがやれやれといった顔をする。
「いひひ。やっぱり渋谷の通り魔の件だった。越智だぬきも同席していたんだけどさ、渋谷署から警視総監賞の話が来たら辞退しろって。
んで。〈おじいさま〉がそれはそれは楽しそうに越智が怒るのを見ていたから、辞退する代わりにみんなでお疲れ様会するから副賞の金一封だけは頂戴ってお願いしてみたの」
「やった。貰えたんだ?」
「もちろぉん。微々たる額だからおねだりして金額つりあげちゃった」
ジュニアと小さくハイタッチ。
「越智だぬきのイライラが目に見えて、ホント大変だったんだからね。またしばらくは風当たりが強くなるわよ」
「越智だぬきが怒ってても、もう誰も気にならないだろ」
「……まあね」
カイリの的確な一言にリカコさんもしっかりうなずいてたりして。
「せりかさんも、順調に回復しているみたいだよ。なかなかお見舞いってわけにもいかないけど、こっちに帰ってきたら盛大にお帰りパーティしてあげようね」
笑いかけるイチの顔は少しほっとしたようにあたしに笑い返してくれた。
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