媚薬の恋 一途な恋

万実

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時計塔最上階

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アレクも用事があると言っていたし、それは上の階でのことなのかな。

私は「うん」と言って立ち上がった。

上の階へは中央にある階段で移動した。

二階には、広いスペースの壁面に棚があり、そこには記録のファイルや工具等ががずらりと並び、その近くには机に椅子が置いてある。

一階部分に比べると、仕事場的な感じで簡素にみえる。

アレクはそこからファイル一冊と工具箱を一つ、そして手袋を取り出した。

「僕の用事はこの上の階、時計のメンテナンスなんだ」

「それって生徒会長の仕事のうちなの?」

「そうだよ。これがなかなか面白くてね」

「へえ」

私はアレクの後について三階に上った。

大時計の中は、たくさんの歯車がみえる。大きいものや小さいもの。私は部品の事は全くわからないけど、アレクはファイルを開き、楽しそうにチェックしている。

「ティア、僕の仕事の間はそこに掛けて待ってて。暇だったら本を読んでいるといい」

窓際に椅子があり、ちょうど本を読むには明るくて良さそう。

だけど、それよりも···。

「アレク、ありがとう。私に何かできることはない?」

「うーん、初めてだと難しいかな。そうだ、僕の仕事を一緒に見る?」

私は力いっぱい頷いて、見学させて貰うことにした。

本はいつでも読めるけど、アレクが楽しく仕事する所なんて滅多に見ることは出来ないよ。

それを見られるのって凄く貴重じゃない!?

生徒会室では無表情か、もしくは機嫌悪くしているのしか見たことないからね。

是非とも今はそちらを優先したい。

アレクは手袋を嵌め工具箱からスパナを取り出し、部品の緩みを調べては締めていく。

埃を取り除き、油を挿してと慣れた手付きで作業する姿はとても楽しそうだ。

見ているこちらも楽しくなってくる。

普段の冷酷な彼とは大違いで、こんなに生き生きとしている姿は初めて見る。

ホントにギャップが物凄い。

「アレクはこういう作業が好きなの?」

「好きかどうかは考えたことないな。でも楽しいよね」

私は色んな顔を持つ彼が気になって、いつの間にかもっと知りたいと思うようになっていた。

「さあ、メンテは終わり」

あ、終わっちゃったのか。

なんだかもっと見ていたかった気がするけど、次があるもんね。

工具一式を片付けて、私達は階下へと降りた。

「そういえば、本を入れるバッグがないよね。これを使って」

そう言ってアレクはカーキ色の革の肩掛けバッグを手渡してきた。

「ありがとう」

肩掛けバッグの中に先程借りた本を入れ込む。

「今日は時計塔を閉め切るからもう入れないよ。忘れ物は無い?」

「大丈夫だよ」

アレクは頷くと先程の肩掛けカバンを持ってくれた。
うーん。なかなか親切だ。

時計塔から出て、厳重に鍵を掛け私達は学園を後にした。
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