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第二章
90.もっ君とチヨちゃん
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「樹ちゃん、おいで」
「ん?志木。どしたん?———わぷ」
優しく腕を引っ張られてそのまま正面から抱きこまれた。青野と違ってふんわりと。だけど、心地よい強さ———はぁ、分かってるよなぁ、俺のカレシは。
んーーー志木の匂いだ。体温で暖まって少し濃厚に立ち上る。ほんの少しの汗の匂いと体臭と混ざってるけど、それが志木のオリジナルの匂い。大好きな落ち着く匂いだ。
気持ちよくて、ついつい、すりりと顔を擦りつけてしまう。
「たっ、樹ちゃん!可愛いからそれやめて!幸せだけど、それ以上できないのが辛いっ!」
「おいおい、隠すのをやめてバカップル度合いが増したか?目の前でいちゃつくんじゃねぇよ」
「すまんな。樹ちゃんが可愛くてつい」
「けっ」
「青野、始めるぞ。志木と樹もいいか?」
「あぁ、すまん。樹ちゃん、始めるよ?」
「ん?ん……分かった。ふあぁ~」
「なぁに?樹、眠くなっちゃったの?」
「なんか心地よくなっちまって…志木の匂い落ち着く」
「ちょっと、樹?志木だけ?」
「んーん。雅樹も勝のも落ち着くよ」
「眠くて頭が回ってない感じも可愛いねぇ、樹君ってば…」
美鈴に優しい笑顔で頭をよしよしと撫でられた。やめろ、余計眠くなるだろうが。
役員は宝生を筆頭に、佐久間たちはいなくなっていて、その代わりに1年が新しく2名と2年が就任した。
1年の1人がなんていうか、頭ボサボサで前髪を長く垂らしてるせいで目元が隠れて印象が暗く見えるし、だるっとした雰囲気でやる気が無さそうに見える。
もう1人の子は子犬みたいでぷるぷるした雰囲気。だけど、目がキラキラしてて可愛い。特に、大我に憧れているみたいで、大我を見る目が輝いている。
分かる、分かるぞ。大我は頼りがいがあってカッコいいよな!!!
ボサお君が如月 木蓮で、子犬君が皐月 千夜。チヨ…名前も可愛いな、おい。ほんでボサおはやたらとキラキラしぃ名前だな!ボサおなのに!
なんて失礼な事を考えながら仕事をこなす。ボサおは第一印象こそやる気なく見えたけど、なかなかどうして1年なのに仕事っぷりが素晴らしい。堂々たる態度で先輩方にも引けを取らずにサクサクと進めていく。
おかげで、宝生たちがどれだけ仕事をしてなかったか、また、出来なかったかがよーーーっく分かった。
チヨちゃん(心の中で勝手に名前呼び)はボサおと比べて仕事は早くないけど、しっかりと進めてくれるから安心して任せられる。
細々した所で「そうか、こんなにスムーズに進むのか」と痛感する。
もはやアイツらが何のためにいたのか分からないほどだ。
「小鳥遊センパイ、これとこのファイルに綴じてる書類なんですけど、申請書と受領書を別々に綴じる必要ってありますか?これ、まとめた方が一目瞭然で良いと思うんですけど……」
「うわぁ……なんつー綴じ方を。うん、ボサ……もっ君の言う通りでいいよ!」
「ボサ……?もっ君……??」
「そう!木蓮だからな!」
「木蓮だから…もっ…もっ君」
「樹のネーミングセンスは独特だからな……」
「おい、大我どういう意味だ」
「いや……個性的でいいと思う…」
えー?俺的にはいいと思ったんだけどなぁ。親しみやすいし呼びやすいじゃん!
なぜ、大我によしよしと頭を撫でられているんだ。
そして目が痛々しいものを見る目をしているぞ。
「ふふふ」
「どうした?」
「なんかさ、大我に頭撫でられるの久しぶりだなぁと思って」
「すまん、つい…嫌じゃないか?」
「んにゃ、大我に撫でられるの好きだぜ、俺。なんかほわ~ってなる」
「そ、そうか」
「なーーーんか、先輩たちの空気が甘いんすけど。なにこの空気」
何故かもっ君がゲーッて舌を出しながら俺らを生暖かい目で見ている。
大我の手っていいぞぉ。肉厚で、俺の頭なんか片手で鷲掴み出来るくらい大きい。その手が程よい力でわしっと撫でてくれるんだ。
ほんで、たまにすげぇ優しく頬っぺたとか撫でてくれてさぁ、俺、小さい子供になった気分になるんだよな。安心できるっての?
ちょっぴりイライラしがちなもっ君も撫でてにらえばいいのに。
「しっ、獅子尾先輩……」
「ん?どうした皐月」
「こっ、これ終わりました」
「早かったな……うん。丁寧な仕事だな、ありがとう」
「……!!!」
チヨちゃんがカチコチに緊張しながら大我にファイルを渡し、中をパラパラと確認した大我が少し口の端を上げてお礼を言って肩をポン、と叩くと頬を染めたチヨちゃんがぱぁぁ!と顔を輝かせた。
「かっ…かわっ!!も、もっ君!チヨちゃん可愛いなっ!」
「そうなんすよ~。子犬みたいすよね…ん?チヨちゃん?」
「はぁ~…あんな可愛い弟か後輩欲しいな。猫可愛がりしたい」
「いや、先輩は可愛がるってより可愛がられるタイプかと」
「ん?なに?」
「いえ、なんでもないす」
「でも良かったぁ。大我ってさ、強面寡黙イケメンじゃん?前に後輩に怖がられる事が多いってちょっと気にしてたんだよ。もっ君もチヨちゃんも大我怖がってないし、むしろ懐いてるみたいだから嬉しい」
「俺は別に…千夜は獅子尾先輩にすげぇ憧れてるから」
「そうなの?」
「はい。前に千夜が……ちょっと質の悪い奴らに絡まれた時に助けてくれたのが獅子尾先輩で、その時から憧れてるんすよ」
「へぇ…え?!チヨちゃん大丈夫だったの?」
「はい、それは。あれから千夜を状況によっては1人にはしないようにしてます」
「えぇ…学校で?!」
「はい、学校で。ここってちょっと…いや、結構、特殊なんで、色々とあるんすよ」
「そ、そっかぁ……聖上は俺らからすると格式が高いから、校内は治安いいと思ってたよ」
「ん~……ま、一部の奴らの頭がおかしいんすよね」
「……風紀委員の大我も大変なんだな」
「そっすね」
でっかい犬(大我)とちっこい犬(チヨちゃん)がほのぼのとやり取りしているのを眺めていると、後ろから忍び寄ってきた青野にハグされた。
「びっくりさせんなよ!」
「チビ助ぇ、ん~……はぁ、これこれ、この匂い久しぶり」
「人のニオイを嗅ぐな!変態!なんか、微妙な気持ちになるだろうが!」
「えぇ~?感じちゃう?」
「……お前、マジで頭腐ってんの?」
「ちょ、チビ助そんな顔すんなよ!ちょっと傷つくだろう?」
「嘘つけよ。全然傷ついてないだろうが」
「バレた?でも、すげぇ顔してたぜ。別にいいだろ、減るもんじゃねぇし」
「色々減るわ!人間の尊厳とか!」
「お前、柴だもん」
「てめぇ……」
「先輩センパイ、こういうタイプに真面目に反応しちゃ駄目っすよ」
「あ゛ぁ゛?」
「青野、お前狂犬かよ。後輩にそんな凄むなよ!もっ君ごめんなぁ~」
「や、先輩が謝らなくていいすよ。俺、こういうの慣れてるんで」
「ん?志木。どしたん?———わぷ」
優しく腕を引っ張られてそのまま正面から抱きこまれた。青野と違ってふんわりと。だけど、心地よい強さ———はぁ、分かってるよなぁ、俺のカレシは。
んーーー志木の匂いだ。体温で暖まって少し濃厚に立ち上る。ほんの少しの汗の匂いと体臭と混ざってるけど、それが志木のオリジナルの匂い。大好きな落ち着く匂いだ。
気持ちよくて、ついつい、すりりと顔を擦りつけてしまう。
「たっ、樹ちゃん!可愛いからそれやめて!幸せだけど、それ以上できないのが辛いっ!」
「おいおい、隠すのをやめてバカップル度合いが増したか?目の前でいちゃつくんじゃねぇよ」
「すまんな。樹ちゃんが可愛くてつい」
「けっ」
「青野、始めるぞ。志木と樹もいいか?」
「あぁ、すまん。樹ちゃん、始めるよ?」
「ん?ん……分かった。ふあぁ~」
「なぁに?樹、眠くなっちゃったの?」
「なんか心地よくなっちまって…志木の匂い落ち着く」
「ちょっと、樹?志木だけ?」
「んーん。雅樹も勝のも落ち着くよ」
「眠くて頭が回ってない感じも可愛いねぇ、樹君ってば…」
美鈴に優しい笑顔で頭をよしよしと撫でられた。やめろ、余計眠くなるだろうが。
役員は宝生を筆頭に、佐久間たちはいなくなっていて、その代わりに1年が新しく2名と2年が就任した。
1年の1人がなんていうか、頭ボサボサで前髪を長く垂らしてるせいで目元が隠れて印象が暗く見えるし、だるっとした雰囲気でやる気が無さそうに見える。
もう1人の子は子犬みたいでぷるぷるした雰囲気。だけど、目がキラキラしてて可愛い。特に、大我に憧れているみたいで、大我を見る目が輝いている。
分かる、分かるぞ。大我は頼りがいがあってカッコいいよな!!!
ボサお君が如月 木蓮で、子犬君が皐月 千夜。チヨ…名前も可愛いな、おい。ほんでボサおはやたらとキラキラしぃ名前だな!ボサおなのに!
なんて失礼な事を考えながら仕事をこなす。ボサおは第一印象こそやる気なく見えたけど、なかなかどうして1年なのに仕事っぷりが素晴らしい。堂々たる態度で先輩方にも引けを取らずにサクサクと進めていく。
おかげで、宝生たちがどれだけ仕事をしてなかったか、また、出来なかったかがよーーーっく分かった。
チヨちゃん(心の中で勝手に名前呼び)はボサおと比べて仕事は早くないけど、しっかりと進めてくれるから安心して任せられる。
細々した所で「そうか、こんなにスムーズに進むのか」と痛感する。
もはやアイツらが何のためにいたのか分からないほどだ。
「小鳥遊センパイ、これとこのファイルに綴じてる書類なんですけど、申請書と受領書を別々に綴じる必要ってありますか?これ、まとめた方が一目瞭然で良いと思うんですけど……」
「うわぁ……なんつー綴じ方を。うん、ボサ……もっ君の言う通りでいいよ!」
「ボサ……?もっ君……??」
「そう!木蓮だからな!」
「木蓮だから…もっ…もっ君」
「樹のネーミングセンスは独特だからな……」
「おい、大我どういう意味だ」
「いや……個性的でいいと思う…」
えー?俺的にはいいと思ったんだけどなぁ。親しみやすいし呼びやすいじゃん!
なぜ、大我によしよしと頭を撫でられているんだ。
そして目が痛々しいものを見る目をしているぞ。
「ふふふ」
「どうした?」
「なんかさ、大我に頭撫でられるの久しぶりだなぁと思って」
「すまん、つい…嫌じゃないか?」
「んにゃ、大我に撫でられるの好きだぜ、俺。なんかほわ~ってなる」
「そ、そうか」
「なーーーんか、先輩たちの空気が甘いんすけど。なにこの空気」
何故かもっ君がゲーッて舌を出しながら俺らを生暖かい目で見ている。
大我の手っていいぞぉ。肉厚で、俺の頭なんか片手で鷲掴み出来るくらい大きい。その手が程よい力でわしっと撫でてくれるんだ。
ほんで、たまにすげぇ優しく頬っぺたとか撫でてくれてさぁ、俺、小さい子供になった気分になるんだよな。安心できるっての?
ちょっぴりイライラしがちなもっ君も撫でてにらえばいいのに。
「しっ、獅子尾先輩……」
「ん?どうした皐月」
「こっ、これ終わりました」
「早かったな……うん。丁寧な仕事だな、ありがとう」
「……!!!」
チヨちゃんがカチコチに緊張しながら大我にファイルを渡し、中をパラパラと確認した大我が少し口の端を上げてお礼を言って肩をポン、と叩くと頬を染めたチヨちゃんがぱぁぁ!と顔を輝かせた。
「かっ…かわっ!!も、もっ君!チヨちゃん可愛いなっ!」
「そうなんすよ~。子犬みたいすよね…ん?チヨちゃん?」
「はぁ~…あんな可愛い弟か後輩欲しいな。猫可愛がりしたい」
「いや、先輩は可愛がるってより可愛がられるタイプかと」
「ん?なに?」
「いえ、なんでもないす」
「でも良かったぁ。大我ってさ、強面寡黙イケメンじゃん?前に後輩に怖がられる事が多いってちょっと気にしてたんだよ。もっ君もチヨちゃんも大我怖がってないし、むしろ懐いてるみたいだから嬉しい」
「俺は別に…千夜は獅子尾先輩にすげぇ憧れてるから」
「そうなの?」
「はい。前に千夜が……ちょっと質の悪い奴らに絡まれた時に助けてくれたのが獅子尾先輩で、その時から憧れてるんすよ」
「へぇ…え?!チヨちゃん大丈夫だったの?」
「はい、それは。あれから千夜を状況によっては1人にはしないようにしてます」
「えぇ…学校で?!」
「はい、学校で。ここってちょっと…いや、結構、特殊なんで、色々とあるんすよ」
「そ、そっかぁ……聖上は俺らからすると格式が高いから、校内は治安いいと思ってたよ」
「ん~……ま、一部の奴らの頭がおかしいんすよね」
「……風紀委員の大我も大変なんだな」
「そっすね」
でっかい犬(大我)とちっこい犬(チヨちゃん)がほのぼのとやり取りしているのを眺めていると、後ろから忍び寄ってきた青野にハグされた。
「びっくりさせんなよ!」
「チビ助ぇ、ん~……はぁ、これこれ、この匂い久しぶり」
「人のニオイを嗅ぐな!変態!なんか、微妙な気持ちになるだろうが!」
「えぇ~?感じちゃう?」
「……お前、マジで頭腐ってんの?」
「ちょ、チビ助そんな顔すんなよ!ちょっと傷つくだろう?」
「嘘つけよ。全然傷ついてないだろうが」
「バレた?でも、すげぇ顔してたぜ。別にいいだろ、減るもんじゃねぇし」
「色々減るわ!人間の尊厳とか!」
「お前、柴だもん」
「てめぇ……」
「先輩センパイ、こういうタイプに真面目に反応しちゃ駄目っすよ」
「あ゛ぁ゛?」
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