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第二章
92.害虫とトマトは潰すために存在している(志木談)
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気配なく牧の後ろに忍び寄った志木がぬっと牧の頭に手を伸ばして鷲掴みするのを、俺ら3人は呆気にとられたまま見ていた。
「牧ぃ……俺らの前に堂々とくるたぁ、いーぃ度胸だな?」
「いだいいだいいだいいだい!!!潰れる!潰れるってばぁぁ!!!」
「潰そうとしてんだよ!」
「だから怖いってば、志木!お前が言うと洒落になんないんだよぉ!」
「洒落じゃねぇからな」
「あだだだだだだだだだ!!!!」
「し、志木…めきょめきょ音してるよ…」
「樹ちゃん、害虫とトマトは潰すために存在しているんだよ?」
「こえぇぇええええ!チ、チビ助止めろ!クズ野郎とはいえ、さすがに目の前で潰れた真っ赤なトマトは見たくねぇよ!」
顔を青くした青野が俺に抱きついて喚いた。
あまりにも怒気が凄くて俺も怖い。そんでもって、トマトの存在意義はそれじゃないと思う。虫も。いや、比喩って分かってるよ?
「青野…おめぇも潰されてぇか?」
「しししししし、志木…も、もうその辺で勘弁してやってぇ」
「ん?樹ちゃんはこの害虫の延命を望むの?」
「延命?!の、望むっていうか、えぇと、ここでは止めて欲しいなぁって…」
「そう。ここでは、ね。分かったよ」
「姫?!」
にっこりと笑った志木が牧の頭から一度手を離した。ほぉっと息をついた瞬間
「てめぇ!逃げんな!「逃げるわ!!!」」
再び頭を捕まえようとした志木からシュババッと逃げた牧が素早く逃げた。
「とにかく!姫を頼んだよぉ~!」
「てめぇが一番あぶねぇんだよ!」
「あはははははは~!姫、愛してるよ」
牧はまたしても猿のようにすばしっこく逃げていった。あいつ、ぜってぇ猿だってばよ。
それから、学祭当日まで俺は1人になる事は徹底的に許されなかった。
誰かしらが必ず傍にいて、かつ、防犯ブザーまで持たされたのであるよ。
過保護すぎねぇ?って思うけど、俺自身がポンコツだから、皆の言う事を大人しく聞くのが一番だと判断した。
「樹は今日から3日間、絶対に油断しないで。あと3日だけ我慢してね?」
「おう」
「俺ら3人は各担当のリーダーだからどうしてもお前の傍を離れなくちゃいけない場面がちょこちょこ出てくるからよ。そん時は非常に不本意ではあるが、アホ野とか1年2人のどちらかといろ。分かったな?」
「おう」
「樹ちゃん、防犯ブザーちゃんと持った?動作確認した?」
「おう。した。5つともしっかりと!」
「電波が届かない場所には近づかないでよ?ここはそんな場所はそんなにないとは思うけど、死角はどこにでもあるからね」
「?ん、分かった」
彼氏ズに言われる事をしっかりと脳みそに刻み込み、本番に備える。今日から学祭だ!!
「おい、お前らアプリの起動とモバイルバッテリーちゃんと持ったか?」
「あぁ」
「うん。志木も予備ちゃんと持ってる?」
「当然。5つ用意しといた」
「「俺も」」
3人がこそこそ話してる中にモバイルバッテリーとアプリとか聞こえたが、何でだ?バッテリーは分かるけど…アプリ?はて?
「なぁなぁ、アプリって何かに使うのか?俺も入れといた方がいいのか?」
「「「え゛っ!」」」
「なんだよ、そんなびっくりした顔して。俺だって一応、委員なんだからな!必要ならアプリ入れるぜ?」
「いや、いやいやいや。大丈夫。これは樹は必要ないから!」
「そう!お前が持ってても使う事ないから!」
「たっ、樹ちゃんのスマホメモリーを食うだけで終わるしさ。あ!そ、そうだ。獅子尾にも挨拶に行っておこう?今日は風紀の仕事も兼任してめちゃくちゃ忙しいみたいだから」
「ん?そうだな!行こう行こう!」
「「よくやった、志木……」」
獅子尾にエールを送るために意気揚々と志木と一緒に向かう後ろで2人が胸を撫でおろしているのなんて、全然気づかなかった。
ましてやそのアプリが俺の位置情報を把握するものだとも、スマホのみならずピアスにもGPSが仕込まれていた事なんぞつゆ知らず。
3人の俺に対する執着度を舐めていた。それを知るのはもっと後の事———
「ふわぁ~…美鈴すげぇ人気なんだな?!」
「そうですね。僕も初めて見た時はすごくびっくりしました」
「だよなぁ。さながらアイドルじゃんか」
「うちって、王道だからさ。目立つ役職は人気高いんすよ」
「王道?目立つ役職??」
「そ。朱雀先輩もそうだし、風紀委員長の獅子尾先輩もすげぇ人気すよ」
「マジかっっ!!!!!!!」
「けど、獅子尾先輩は朱雀先輩みたいに愛想良くないから、陰からコッソリ熱い視線を送るってのが精いっぱいみたいすけどね」
「ほえーーー」
な、なんか聖上の学園事情って俺の常識と照らし合わせるとぶっ飛んでんな。
「ちなみに、志木先輩達もすよ」
「は?俺?」
「はい。学祭の準備で頻繁にうち来てたじゃないすか。それでファンになった人たちが沢山いたみたいで。学外なんで朱雀先輩みたいに熱狂的になってないだけで、可能であればお近づきになりたいと思ってるみたいっす。志木、篠田、暁は鳳凰御三家って言われて密かにファンクラブできてます」
「お、おぉ……」
「ま、普通そんな反応になりますよね。俺らも最初はそうでしたもん」
「そう言うけど、木蓮は僕に比べるとそんなに驚いてなかったよね?」
「あー……まぁ、うん。俺は前知識があったからね」
「前知識?」
「あ、いや、なんでもないす」
「ふふふ。木蓮って秘密主義なんです」
「へぇー。美形で秘密主義とかミステリアスでいいな」
「そうなんですよ!木蓮ってなんか雰囲気がミステリアスなんですよね」
「も、もう、俺の事はいいのでっ!———獅子尾先輩っ!!」
もっ君がちょうど歩いてきた大我に声をかけて呼び止めた。
「樹、今日はこいつらから離れるなよ。俺が大丈夫な時は俺もいるし」
「おう。分かってる。ありがとな。でも、今日はめちゃくちゃ忙しいだろ?あんま無理すんなよ。俺自身もいつも以上に気を付けるからさ」
「無理はしてない。俺が心配だからだ」
「———ありがと」
「なぁなぁ、なんか甘酸っぱくね?———千夜?ちーーよ!」
「ん?あ、ごめん…ちょっとぼーっとしてた」
大我に激励と、何かあった時は防犯ブザーを可能なら全部鳴らして逃走する事、可能なら電話をする約束をして別れた。
「牧ぃ……俺らの前に堂々とくるたぁ、いーぃ度胸だな?」
「いだいいだいいだいいだい!!!潰れる!潰れるってばぁぁ!!!」
「潰そうとしてんだよ!」
「だから怖いってば、志木!お前が言うと洒落になんないんだよぉ!」
「洒落じゃねぇからな」
「あだだだだだだだだだ!!!!」
「し、志木…めきょめきょ音してるよ…」
「樹ちゃん、害虫とトマトは潰すために存在しているんだよ?」
「こえぇぇええええ!チ、チビ助止めろ!クズ野郎とはいえ、さすがに目の前で潰れた真っ赤なトマトは見たくねぇよ!」
顔を青くした青野が俺に抱きついて喚いた。
あまりにも怒気が凄くて俺も怖い。そんでもって、トマトの存在意義はそれじゃないと思う。虫も。いや、比喩って分かってるよ?
「青野…おめぇも潰されてぇか?」
「しししししし、志木…も、もうその辺で勘弁してやってぇ」
「ん?樹ちゃんはこの害虫の延命を望むの?」
「延命?!の、望むっていうか、えぇと、ここでは止めて欲しいなぁって…」
「そう。ここでは、ね。分かったよ」
「姫?!」
にっこりと笑った志木が牧の頭から一度手を離した。ほぉっと息をついた瞬間
「てめぇ!逃げんな!「逃げるわ!!!」」
再び頭を捕まえようとした志木からシュババッと逃げた牧が素早く逃げた。
「とにかく!姫を頼んだよぉ~!」
「てめぇが一番あぶねぇんだよ!」
「あはははははは~!姫、愛してるよ」
牧はまたしても猿のようにすばしっこく逃げていった。あいつ、ぜってぇ猿だってばよ。
それから、学祭当日まで俺は1人になる事は徹底的に許されなかった。
誰かしらが必ず傍にいて、かつ、防犯ブザーまで持たされたのであるよ。
過保護すぎねぇ?って思うけど、俺自身がポンコツだから、皆の言う事を大人しく聞くのが一番だと判断した。
「樹は今日から3日間、絶対に油断しないで。あと3日だけ我慢してね?」
「おう」
「俺ら3人は各担当のリーダーだからどうしてもお前の傍を離れなくちゃいけない場面がちょこちょこ出てくるからよ。そん時は非常に不本意ではあるが、アホ野とか1年2人のどちらかといろ。分かったな?」
「おう」
「樹ちゃん、防犯ブザーちゃんと持った?動作確認した?」
「おう。した。5つともしっかりと!」
「電波が届かない場所には近づかないでよ?ここはそんな場所はそんなにないとは思うけど、死角はどこにでもあるからね」
「?ん、分かった」
彼氏ズに言われる事をしっかりと脳みそに刻み込み、本番に備える。今日から学祭だ!!
「おい、お前らアプリの起動とモバイルバッテリーちゃんと持ったか?」
「あぁ」
「うん。志木も予備ちゃんと持ってる?」
「当然。5つ用意しといた」
「「俺も」」
3人がこそこそ話してる中にモバイルバッテリーとアプリとか聞こえたが、何でだ?バッテリーは分かるけど…アプリ?はて?
「なぁなぁ、アプリって何かに使うのか?俺も入れといた方がいいのか?」
「「「え゛っ!」」」
「なんだよ、そんなびっくりした顔して。俺だって一応、委員なんだからな!必要ならアプリ入れるぜ?」
「いや、いやいやいや。大丈夫。これは樹は必要ないから!」
「そう!お前が持ってても使う事ないから!」
「たっ、樹ちゃんのスマホメモリーを食うだけで終わるしさ。あ!そ、そうだ。獅子尾にも挨拶に行っておこう?今日は風紀の仕事も兼任してめちゃくちゃ忙しいみたいだから」
「ん?そうだな!行こう行こう!」
「「よくやった、志木……」」
獅子尾にエールを送るために意気揚々と志木と一緒に向かう後ろで2人が胸を撫でおろしているのなんて、全然気づかなかった。
ましてやそのアプリが俺の位置情報を把握するものだとも、スマホのみならずピアスにもGPSが仕込まれていた事なんぞつゆ知らず。
3人の俺に対する執着度を舐めていた。それを知るのはもっと後の事———
「ふわぁ~…美鈴すげぇ人気なんだな?!」
「そうですね。僕も初めて見た時はすごくびっくりしました」
「だよなぁ。さながらアイドルじゃんか」
「うちって、王道だからさ。目立つ役職は人気高いんすよ」
「王道?目立つ役職??」
「そ。朱雀先輩もそうだし、風紀委員長の獅子尾先輩もすげぇ人気すよ」
「マジかっっ!!!!!!!」
「けど、獅子尾先輩は朱雀先輩みたいに愛想良くないから、陰からコッソリ熱い視線を送るってのが精いっぱいみたいすけどね」
「ほえーーー」
な、なんか聖上の学園事情って俺の常識と照らし合わせるとぶっ飛んでんな。
「ちなみに、志木先輩達もすよ」
「は?俺?」
「はい。学祭の準備で頻繁にうち来てたじゃないすか。それでファンになった人たちが沢山いたみたいで。学外なんで朱雀先輩みたいに熱狂的になってないだけで、可能であればお近づきになりたいと思ってるみたいっす。志木、篠田、暁は鳳凰御三家って言われて密かにファンクラブできてます」
「お、おぉ……」
「ま、普通そんな反応になりますよね。俺らも最初はそうでしたもん」
「そう言うけど、木蓮は僕に比べるとそんなに驚いてなかったよね?」
「あー……まぁ、うん。俺は前知識があったからね」
「前知識?」
「あ、いや、なんでもないす」
「ふふふ。木蓮って秘密主義なんです」
「へぇー。美形で秘密主義とかミステリアスでいいな」
「そうなんですよ!木蓮ってなんか雰囲気がミステリアスなんですよね」
「も、もう、俺の事はいいのでっ!———獅子尾先輩っ!!」
もっ君がちょうど歩いてきた大我に声をかけて呼び止めた。
「樹、今日はこいつらから離れるなよ。俺が大丈夫な時は俺もいるし」
「おう。分かってる。ありがとな。でも、今日はめちゃくちゃ忙しいだろ?あんま無理すんなよ。俺自身もいつも以上に気を付けるからさ」
「無理はしてない。俺が心配だからだ」
「———ありがと」
「なぁなぁ、なんか甘酸っぱくね?———千夜?ちーーよ!」
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