限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです

釈 余白(しやく)

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第六章 長月(九月)

118.九月三日 午前 新学期

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 夏休みが終わり二学期がやって来た。九遠学園の二学期初日は始業式だけで終わりということは無く、三限目から普通の授業が行われる。しかしHRで九月最後の日曜日に体育祭があるため体育の授業が多くなるとの説明がされると、運動嫌いの生徒からは不満の声が上がった。

「ハルと八早月ちゃんは運動得意だからいいけどさぁ。
 私は気が重いよ…… 男子がジロジロ見てくるのもヤダし」

「体育の代わりに英語が無くなるなら大歓迎だけど、単純に増えるのは面倒ね。
 私は体動かすことは苦ではないけれど、体育の授業は好きではないもの。
 体操着のままでいいならまだマシだけれどね」

「アタシは大歓迎! 部活対抗リレーもあるから練習がんばろっと。
 書道部はリレー出ないの? 順位は関係ないって言ってたでしょ?
 先輩とリレーするチャンスじゃん」

「部員二人だから人数足りないし、四宮先輩はそういうのやらなそう。
 私も余分に走るのは嫌だから出ない方がいいよ」

 二限目のHRはすぐに終わり、自習と言う名の休み時間だ。しかし体育委員は出場協議の割り当てを決めなければいけないので、教室の中を歩き回っていた。

「なあ、櫛田は足早いからリレー出てくれないか?
 クラスリレーは陸上部の出場禁止だって言うから板山使えないんだよ」

 八早月に声を掛けたのは、イケメンとしてクラスの女子から人気の高い郡上大勢ぐじょう たいせいだった。その横には同じ体育委員で可愛らしい感じの三田村愛美みたむら まなみがくっついている。

 クラス女子の間では、愛美の郡上狙いが見え見えだと陰口を叩かれているようだと言うのは夢路情報である。八早月も美晴もそっち方面には全く興味が無いのでいつも聞き流しているが、こう目の前にやって来たのを見ると、そう思われても仕方ないくらいには距離感が近い。

「私はあまり脚は早くないわよ? もっとほかの競技は無いのかしら?
 正直言って全員参加以外には出る気なかったのだけれど」

 八早月がそう答えると郡上大勢は不満そうに反論してきた。

「クラス対抗なんだからさ、みんなのために頑張るって気になれよ。
 そんなだからドッチボールだって三位で終わっちゃったんだからな。
 一年生だからって一番劣ってるわけじゃ無いって所を見せてやろうぜ」

「でも郡上君だって陸上部だからリレー出られないんじゃないの。
 それなのに人に押し付けるの、良くないと思いまーす」

「そうだそうだ、タイム計ってから決めればいいでしょ。
 どうせ三年生には勝てないんだしさ」

 美晴と夢路は容赦なく郡上を追い立てる。すると彼は仕方ないと言った風に引き下がって行き、黒板へ実施種目を順に書きだした。それによると全員参加なのは100m走と南中ソーランと言う聞きなれない競技のみだった。

 郡上は懸命に注目と声をかけたが全く聞き入れてもらえない。このままでは二限目が終わってしまいそうだ。八早月はいてもたってもいられず黒板の前までまで歩み出ると、両手で教壇を叩いた。

 すると教室内はシーンと静まり返り全員が黒板へ目を向けている。それを受けて郡上が慌てて話し出す。八早月は無言で自分の席へ戻って行った。

「そ、それじゃ参加競技の希望を聞いていきまーす。
 競技名の横の数字が人数だから溢れたらじゃんけんな。
 全員一つ以上は参加すること!
 じゃあ三田村は書記をやってくれ」

「全員参加って二つだけ?」
「他は全部でなくていいのー?」
「俺は騎馬戦とリレー出るぜ!」

 さっきまでそこらじゅうで勝手に話をしていたのに、八早月の一撃で嘘のようにまとまったように見える。美晴と夢路はなぜか得意そうに笑っており、それを見て八早月も白い歯を見せた。
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