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第2章

第27話、真琴と合体

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 この熱はいったい?
 するとつい今しがた全身を支配していた熱と共に痺れる感覚が、次の瞬間には忽然と消えてしまっていた。
 代わりに身体はずっしりと重く、呼吸が荒くなってしまっている。
 そして——

『こんな時に、はぁっはぁっんぐ、どうしてしまったと、いうのだろうか? 』

 真琴の苦しそうな声が頭の中で響く、……この直接話しかけられる感覚って、ヴィクトリアさんの念話に似てる!

『あれっ、はぁはぁ、ユウトの、声がした? 』

「あんた、急にどうしたの? 」

 アズが語りかけてきた。

「えっ? いや、なんでも——」

 するとまた頭の中で真琴の声が響くと、強制的に視線が動き、アズを経由したのち倒れている俺の身体の方へと向けられる。

 と言うかこの感覚、これもどこかで?
 ……そうだ、悪鬼要塞で迷宮核に触れた時、見えてきた巾着袋の記憶の時と似ている気がする!
 と言うことは、これってもしかして、もしかして今の俺って。

『さっきからユウトの声が直接頭に聞こえるけど、はぁはぁ、これは——』

『まっ、真琴、ちょっと落ち着いて聞いてくれる? 』

『はっ、はい! 』

 そして俺は告げる。

『どうやら俺、真琴の中に入っちゃったかもしれないんだ』

『ふえぇっ? それはいったいどうして? 』

 驚愕する真琴の声と共に、俺の生身の身体を心底心配している真琴の感情が流れ込んでくる。

『俺にもよくは分からないんだけど、兎に角俺の身体の方は無事だと思うから、そっちは心配しないで』

『う、うん』

 と言うか、俺より真琴の身体の方が心配である。
 俺は少し窮屈ではあるけど暖かく柔らかい壁に包み込まれた感じがしてるのだけど、真琴の身体は熱っぽく酷く疲れていて呼吸も荒い。
 真琴が苦しんでいるなら、なにかしてあげたいのだけど——

 いや待てよ!
 そうか、もしこの真琴の苦しそうな状態が、真琴の身体に俺が入り込んでしまったがゆえに引き起こされているのなら、俺がここから出ていけば済む話。

『ユウト様、それは——』

 するとヴィクトリアさんから俺を止めようとする気遣いの感情が流れ込んで来たのだけど、俺は既に動いていた。
 そして全身に電流が流れるような痛み。

『ひぃぐぅっ』

 真琴が身体を小刻みに震わせ苦痛の声を漏らす。
 くはぁっ、なっ、なんだ今の痛み?
 四つん這いになっている真琴から出るため、俺は思いっきり立ち上がろうとした。
 しかし真琴の身体からは抜け出せなく、代わりにその反動で何度も真琴の肉体という器の中で俺の幽体が小刻みにバウンド、震える形となってしまった。
 そして俺が震えている間、真琴からは苦痛の呼気が塊として何度も出る。

『はぁはぁ、いっ、痛いよ』

 真琴は瞳をウルウルとさせている。

『ごご、ごめん! 』

 しかしこれはどうすればいいんだ?
 真琴から抜け出せない!?

『こうなっては仕方がありません、ご説明させて頂きます』

 ヴィクトリアさんだ、いつものように眼鏡をクイクイさせ始めた。

『現在真琴さんの中にユウト様が入られてしまっているわけですが、抜け出すためには真琴さんが力を抜きユウト様が先程よりも全力で立ち上がる事で、肉体から魂を一気に引き剥がす必要があります。
 ただこの方法は真琴さんの身体にかなりの痛みが伴うと共に、疲労困憊で動けなくなる可能性が高確率で付き纏う事になります。
 しかし他に手立てはございませんので、ご了承ください』

 なんだって!? それって——

『えぇ、このダンジョンでの後の戦闘は困難になるでしょう』

 そこでヴィクトリアさんが眼鏡のブリッジを支えながら、コツコツと足音を鳴らしその場を行ったり来たりし始める。

『そのためこの目の前にいる敵は、倒しておいたほうがよろしいかと。
 と言うのも、今の真琴さんは巨大なユウト様という存在を取り込んでいますので、力は断罪の縛りに囚われる以前よりも強力で、それでいてユウト様という存在を解する事により多次元まで影響を及ぼす事のないクリーンな力へとコントロールされています。
 さらに言うと、連続で今の状態をキープするのは時間の経過と共に危険になりますが、多少の間なら問題なく、また適度な運動はユウト様と真琴さんが離れる際、潤滑に行くよう肉体と魂をほぐしてくれるでしょう』

『でも今のままだと、どっちにしても戦えないのではないですか? 』

『先程から動こうとすると痛みが走る件についてですよね?
 それは一緒に動こうとしなかったからです。
 二人で同じように考え動き、それこそ呼吸すらもあわせ動きさえすれば、なんら問題ありません』

 要は二人羽織みたいな感じで動けばいいのか!

『真琴、今の聞いた? いけそう? 』

『う、うん』

『そしたら真琴は話すのも大変そうだから、俺が合図の声を出すからね! 』

『……ぁはぐっ』

 真琴が苦痛の声を上げる。
 どうやら声を出さずに俺への返答に頷きだけで答えようとしたみたいなんだけど、その動作が俺とは違うものだから痛みが走ったようだ。

『大丈夫? 』

『ごめん、はぁはぁ、ちょっと、ちょっとだけ待ってくれる? 』

『あっ、あぁ』

 しかし真琴には悪いんだけど、四つん這いになった女の子から直に息を荒げるのを聞くと言うのは、健全な男子高校生としては何か熱いものを感じてしまう。
 しかも真琴と一体化しているものだから、真琴の身体の隅々までが手に取るようにわかってしまうわけで——

 下を向きながらも重力に跳ねっ返る胸。
 苦痛に悶えくねくねと動く腰。
 そしてその腰と連動して振られる柔らかそうなお尻に、ハムハムしながら撫でたくなる太もも。

『……エッチ』

『えっ? あ、いや、何のこと? 』

 すると真琴から『ぜんぶ筒抜けなんですけど』っと伝わってくる。

『なんだと、これは、いや、違うんだ! 』

 自身の顔が耳まで真っ赤になると、滾る血流はとどまることを知らずに全身を駆け巡りだす。

『何が違うというのですかぁあっ、ユ、ュウト。
 なんか熱を帯びて、あっ、下の方も熱いよー』

『ごめん、でもこんな状態だと、勝手が違いすぎて抑えが全然効かないんだ』

『うぅうっ』

『って、あれ? 真琴? 』

『なっ、なに? 』

『いや、その。……真琴だって少し、エッチな気分になっているんじゃないのかなと』

『ばっ、ばか、キミは何を言ってるんだ? 
 ばかばか! ユウトのばか! 』

『えっ? あっ、いや、ごめん。
 本当にごめん。俺が全面的に悪かったです!
 今のはその、……無しにしては貰えないでしょうか? 』
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