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 「レンは恋人いないの?」
 「いませんね。今は仕事が楽しくていなくても十分です。最近はユーマ様と本のお話もできて前より充実していますしね」
 「僕もレンと色々本の話ができて楽しいよ」
 「ユーマ様は本当に可愛らしい方ですよね。さぁ、もう一杯紅茶はいかがですか?それとこちらが今日持ってきた本です。先日ユーマ様がお気に召していた本と同じ作者なのでこちらもお勧めしたく持って参りました」

 レンはそう言って持ってきていた袋を僕に渡してくれた。
 もう何冊もレンに本を借りていて借りた本全ての感想を僕は伝えていた。その為か、いつもレンが淹れてくれた紅茶を飲みながら読んでいるから表情を見られているのか分からないが、レンは僕がどんな内容を好み、どの作者が好きか把握している。
 でもそれはレンが一流のメイドだからかもしれない。
 こんなに気が利いて優しいレンに恋人がいないなんて不思議だ。もしかして仕事が忙しすぎるのが原因だったりして。

 「レン、休みはちゃんと貰えてる?」
 「どうしたんですか急に。きちんと頂いていますよ。私としてはもっとユーマ様のお世話をしたいくらいです」

 レンの優しい笑顔が眩しい。本当の兄には甘えられないからレンのことを兄のように慕い、そして仲間のように思っていた。

 「そういえばいつもお兄様の傍にいたメイド変わったんだね。前の子どうしたの?」

 この日は珍しく読書を休んでジェイドと一緒にレンの淹れてくれた紅茶を飲みながらレン手作りのクッキーを食べていた。
 レンの作るお菓子はどれも美味しくいつかジェイドにも食べさせてあげたいと思っていたのがやっと叶った。

 「あぁ、あの子なら恋人ができたとかでその方と一緒になる準備のために実家に帰ったという話ですよ。私はそこまで仲良くなかったので噂話程度でしか知りませんが。でもあの子確か私と同い年なはずですから14歳だったはずです。その年でもう結婚を考えるなんて早いですよね。よほど相手の方を好きなんですね」

 僕の言葉に不自然にジェイドのクッキーを食べる手が止まった気がしたけどそれよりレンの話の方が興味深い。

 「それは喜ばしい話だね。相手はどんな人なんだろうね。あれだけ可愛い子の相手ならかっこいいんだろうな」
 「ユーマ様が最近お気に入りの小説の2人のような感じかもしれませんね」
 「あぁ、あの2人か。でもほら1週間前に借りた小説の脇役だけど素敵なカップルがいたでしょ。あんな感じかもしれないよ」

 メイドの話からレンとの小説の中のカップルの話へと脱線して盛り上がっている横でジェイドが1人ぼー、とクッキーを食べていた。

 「ジェイドどうしたの?なんだか静かだよ」

 いつもは口を挟まないでもにこにこしながら話を聞いているのに、静かな様子のジェイドが気になり声をかけた。

 「あっ、いや。俺もあのメイドのことはよく知らないんだけどそんな年なんだな、と思って。もっと幼いのかと思ってたからびっくりしたんだよ」
 「そうだよね。僕もあの子僕と同い年くらいかと思ってたよ」

 この世界の結婚適齢期は20歳くらいだから14歳で結婚を考える相手がいるという人は多くないがいる。そんな人は貴族で政略結婚なのでメイドが、となるとほぼいないから尚更びっくりだ。
 そんな充実した毎日を送っていた僕の知らないところでそれは起こっていた。それはジェイドが怪我をした2日後でお兄様の部屋でのことだった。

 「んー、んー」

 ユーマの兄、クロードの部屋のテーブルの上でユーマが可愛いと言っていたクロード付きのメイドのミナトが裸で口に猿轡をされてテーブルの脚に両手両足を縛り付けられ寝かされていた。
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