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第1話
021. 登場人物が増え始めます7
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あわあわと手を伸ばして、マグを助けようとした。
「お前は……
飯時に来た奴だな。
俺らの肉はうまかったか?」
「ハハ……」
目の前に切っ先を突き付けられ、たじろいでしまった。
食い物の恨みは恐ろしいというけど、剣を向けるほどのこと?
なんなら、そのご飯も結局アナタたちが盗んで来たって聞いてますよ。
「お前にもたっぷり、礼をしてやるとして……
まずはこっちのかわいい子ネコちゃんからだ。
パックリと一口で、イッてみようかぁ?」
「おう、きょうだい。
オレにも味見させてくれよ」
あぁ、何もできない自分が恨めしい。
下劣な笑いを隠そうともしないこいつらに、刃をちらつかせられては拳を振り上げることも出来ないだなんて。
「ハクとアニーは……
それぞれ戦ってるし……
あぁ、どうしたらいいんだよぉ~」
どうすることも出来ず、泣きそうな顔になっていた。
すると、頭上からマグの笑い声がした。
「だいじょーぶだってば」
巨漢につまみあげられたマグはまるで子ネコが母ネコに咥えられて運ばれているように見えたが、のんきにアハハと笑って言ってのけた。
「こんな状況で、だいじょうぶって……」
賊たちが一斉に吹き出す。
「何を言うかと思えばっ。
お嬢ちゃんが、なにをするってんだ」
ガッハッハと笑う悪漢。
その手に握られたナイフが少女に向かう。
黄緑色の髪を赤く染めるという悪夢をボクの頭が鮮明に想起させた。
「こうするんだよっ」
マグはニット帽から小さな枝を取り出した。
くるりと無造作に振るうと、濃い緑の葉っぱを付けた小枝が風を受けて円を描いた。
すると、その軌跡が視認できるようになり、いくつかの光の粒が円の上を動いた。
見覚えのある、その光の粒の形。
発光量こそ違うものの、先ほどマグの身体についていたゴミと同じだった。
光の粒は円を外れ、滑るように下に落ちていった。
その先の、ひげ面の巨漢の足元まで落下すると、パチンと弾けて消えてしまった。
「これが、なに?」
なんだぁ?
なんかしたのか?
どうやら、ボクが見えたものはこの賊たちには見えていないらしい。
あたかも先ほどのハクやアニーたちと同じように。
ほんの少ししてだった。
突然、その場に突風が吹き込んだ。
風も特にない、安定していた天候だった場所に局所的にだ。
渦を巻いた風がマグを持ち上げていた男の足をすくい、その場に転倒させた。
あわわ
空から少女が降ってきた。
ストン。
小さな枝を振った少女は、ボクの助けも必要とせず、その場に着地。
新体操か何かの競技だったなら高得点をたたき出すほどの華麗さで。
「こ、この――!」
もう一人の男は前歯の抜けた口を大きく開いて、噛みつかんばかりの勢いで覆いかぶさってきた。
バサバサ。
突如、近くにあった木が枝を揺らして、大量の木の葉が落ちてきた。
ソレは運がいいのか悪いのか、歯抜けの男の頭に直撃し、視界を覆われた男の手がマグやボクを探そうと右往左往していた。
その様子を見てニコニコと笑うマグ。
不可解な現象に思わず笑う少女に視線を落とした。
「どういうこと?」
「お願いしただけだよ」
「答えになってないんだけど」
いい加減にしやがれ!
ボクとマグを黒い影が包んだ。
見上げると鬼の形相をした男が二人、立ちはだかっていた。
「あ、あの……」
もう、勘弁して――
恐怖で命乞いの言葉が口から出なかった。
それでも、そばにいる子を守ろうと庇った手が強張っていた。
ドサッ。
必死に目を閉じていたが、地面に何か重いものが落ちる音がした。
まさか、と思って抱き寄せたマグを見たが、首がつながっていることで安心した。
彼女は相も変わらずニコニコとしていた。
その視線の先には、さっきの二人の鬼よりもさらに大きく、険しい顔をした男が立っていた。
「三匹目の鬼だ」
ボクの口から、眼に入った情報がそのままこぼれ出た。
声が聞こえたのか、視線をこちらに向けてくる。
大柄な薄い金髪の鬼と目があった。
ボクは死を覚悟した。
「お前は……
飯時に来た奴だな。
俺らの肉はうまかったか?」
「ハハ……」
目の前に切っ先を突き付けられ、たじろいでしまった。
食い物の恨みは恐ろしいというけど、剣を向けるほどのこと?
なんなら、そのご飯も結局アナタたちが盗んで来たって聞いてますよ。
「お前にもたっぷり、礼をしてやるとして……
まずはこっちのかわいい子ネコちゃんからだ。
パックリと一口で、イッてみようかぁ?」
「おう、きょうだい。
オレにも味見させてくれよ」
あぁ、何もできない自分が恨めしい。
下劣な笑いを隠そうともしないこいつらに、刃をちらつかせられては拳を振り上げることも出来ないだなんて。
「ハクとアニーは……
それぞれ戦ってるし……
あぁ、どうしたらいいんだよぉ~」
どうすることも出来ず、泣きそうな顔になっていた。
すると、頭上からマグの笑い声がした。
「だいじょーぶだってば」
巨漢につまみあげられたマグはまるで子ネコが母ネコに咥えられて運ばれているように見えたが、のんきにアハハと笑って言ってのけた。
「こんな状況で、だいじょうぶって……」
賊たちが一斉に吹き出す。
「何を言うかと思えばっ。
お嬢ちゃんが、なにをするってんだ」
ガッハッハと笑う悪漢。
その手に握られたナイフが少女に向かう。
黄緑色の髪を赤く染めるという悪夢をボクの頭が鮮明に想起させた。
「こうするんだよっ」
マグはニット帽から小さな枝を取り出した。
くるりと無造作に振るうと、濃い緑の葉っぱを付けた小枝が風を受けて円を描いた。
すると、その軌跡が視認できるようになり、いくつかの光の粒が円の上を動いた。
見覚えのある、その光の粒の形。
発光量こそ違うものの、先ほどマグの身体についていたゴミと同じだった。
光の粒は円を外れ、滑るように下に落ちていった。
その先の、ひげ面の巨漢の足元まで落下すると、パチンと弾けて消えてしまった。
「これが、なに?」
なんだぁ?
なんかしたのか?
どうやら、ボクが見えたものはこの賊たちには見えていないらしい。
あたかも先ほどのハクやアニーたちと同じように。
ほんの少ししてだった。
突然、その場に突風が吹き込んだ。
風も特にない、安定していた天候だった場所に局所的にだ。
渦を巻いた風がマグを持ち上げていた男の足をすくい、その場に転倒させた。
あわわ
空から少女が降ってきた。
ストン。
小さな枝を振った少女は、ボクの助けも必要とせず、その場に着地。
新体操か何かの競技だったなら高得点をたたき出すほどの華麗さで。
「こ、この――!」
もう一人の男は前歯の抜けた口を大きく開いて、噛みつかんばかりの勢いで覆いかぶさってきた。
バサバサ。
突如、近くにあった木が枝を揺らして、大量の木の葉が落ちてきた。
ソレは運がいいのか悪いのか、歯抜けの男の頭に直撃し、視界を覆われた男の手がマグやボクを探そうと右往左往していた。
その様子を見てニコニコと笑うマグ。
不可解な現象に思わず笑う少女に視線を落とした。
「どういうこと?」
「お願いしただけだよ」
「答えになってないんだけど」
いい加減にしやがれ!
ボクとマグを黒い影が包んだ。
見上げると鬼の形相をした男が二人、立ちはだかっていた。
「あ、あの……」
もう、勘弁して――
恐怖で命乞いの言葉が口から出なかった。
それでも、そばにいる子を守ろうと庇った手が強張っていた。
ドサッ。
必死に目を閉じていたが、地面に何か重いものが落ちる音がした。
まさか、と思って抱き寄せたマグを見たが、首がつながっていることで安心した。
彼女は相も変わらずニコニコとしていた。
その視線の先には、さっきの二人の鬼よりもさらに大きく、険しい顔をした男が立っていた。
「三匹目の鬼だ」
ボクの口から、眼に入った情報がそのままこぼれ出た。
声が聞こえたのか、視線をこちらに向けてくる。
大柄な薄い金髪の鬼と目があった。
ボクは死を覚悟した。
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