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「セ、センパイ……足が……」
「っく……メィリオ……この痺れは――まさかお茶に毒でも!?」
「お、お嬢さま。恐らくこれはこの独特の座り方『正座』によるもの……かと……」
「まぁ、こんなもんのなのかねぇ。近頃の若いモンてのは……」
フト、ここでワキミズの脳裏に一つのイメージが浮かぶ。そう、先日エミィの部屋で見た白黒写真である。
「ここで、ボク達のことを若者って――
そんなに年が離れてる訳でもないでしょうに、センパイ」
「ん~? あぁ、『そういうことになってる』んだったな……」
ユキシロとそんなやり取りをしているうちに、場は砕け、ツクモが茶やら菓子やらを用意していた。
「そ、そのお茶は……?」
「あぁ、これはただの麦茶だ。エミィはどうやら御抹茶があまりお好みではなかったようだからなぁ」
「な、なんというか……こー、独特の香りというか――
紅茶なら大好きなのですが、苦みが何ともいえず……」
「おぉ、流石はエゲレスのお嬢様。しかし、……ワキミズ。
なんだ?
そのオメェさんが飲んでるのは」
「え? あぁ、これは昔から飲んでるお茶です。家を離れても実家から送ってくるんで飲んでるんですが――
少々癖がありますけど慣れるとウマイんですよ」
どうぞ、と差し出されたものに毒見役としてメィリオが口を付ける。
「――!?」
盛大に緑色の、いや、緑と形容する域を越えた其の毒々しい霧を吹き出す。
――お嬢様の飲まれる前に。と出しゃばった結果がこれである。
「メィリオ!
どうしたの!?
ワキミズさん!
これは何なのですか?
毒なのですか!?」
「アレー?
おっかしいなぁ……
甘くて、苦くて、辛くて、やっぱり苦くて――
美味しいでしょう?」
「こ、これは毒なんてものじゃありませんよ!
毒以上の何かです!」
お嬢様、飲んではなりませんよ。と息を荒く告げるメィリオのその姿は本当に苦しそうで、ツクモはこれを見てカッカッカッと笑っている。
――フム。
と、そんなやり取りを見て、目だけで通じあう二人はユキシロと部長。二人の視線の先にはワキミズの毒茶があった。
サテサテ、とその場を収め、ポンポンと手を打つのはツクモ。
「さぁて、そろそろ夕飯の準備だ。ほら、動いた動いた」
と、一同を立たせる。その時、つい三十分前に言われたことを忘れ、ワキミズは畳のヘリを踏んでしまった。
――ドドンッッ!!
ワキミズがそれを耳で感じると同時に自分の足元が跳ね上がるのを全身で感じた。爆音とともに畳が跳ね上がり、少年はそのまま吹っ飛んだ。ホコリは煙となってもうもうと立ち上り、辺りは騒然とする。
「な、なんだぁっ」
吹っ飛ばされたワキミズはなんとか、意識を保ちながらも爆心地に目を向ける。メィリオはパニックになりそうな己を御して、エミィの身の安全を確保しようと喚きながらも身を低く保ち状況を伺っている。
煙の中に、一対の紅い光が見える。やがてその光はヒトの形の影を纏い、影は肉を帯びて現れた。一本の槍を携えたその人は、着物の上からでもその筋骨隆々とした鬼の様な体格を見て取れた。髪と口元に確認出来たヒゲは黒地に白いものが混じっていることから、相応の歳であると推し量れた。
ワキミズが右を見ると、ユキシロと部長がそれぞれ、その鬼に構えていた。
「っく……メィリオ……この痺れは――まさかお茶に毒でも!?」
「お、お嬢さま。恐らくこれはこの独特の座り方『正座』によるもの……かと……」
「まぁ、こんなもんのなのかねぇ。近頃の若いモンてのは……」
フト、ここでワキミズの脳裏に一つのイメージが浮かぶ。そう、先日エミィの部屋で見た白黒写真である。
「ここで、ボク達のことを若者って――
そんなに年が離れてる訳でもないでしょうに、センパイ」
「ん~? あぁ、『そういうことになってる』んだったな……」
ユキシロとそんなやり取りをしているうちに、場は砕け、ツクモが茶やら菓子やらを用意していた。
「そ、そのお茶は……?」
「あぁ、これはただの麦茶だ。エミィはどうやら御抹茶があまりお好みではなかったようだからなぁ」
「な、なんというか……こー、独特の香りというか――
紅茶なら大好きなのですが、苦みが何ともいえず……」
「おぉ、流石はエゲレスのお嬢様。しかし、……ワキミズ。
なんだ?
そのオメェさんが飲んでるのは」
「え? あぁ、これは昔から飲んでるお茶です。家を離れても実家から送ってくるんで飲んでるんですが――
少々癖がありますけど慣れるとウマイんですよ」
どうぞ、と差し出されたものに毒見役としてメィリオが口を付ける。
「――!?」
盛大に緑色の、いや、緑と形容する域を越えた其の毒々しい霧を吹き出す。
――お嬢様の飲まれる前に。と出しゃばった結果がこれである。
「メィリオ!
どうしたの!?
ワキミズさん!
これは何なのですか?
毒なのですか!?」
「アレー?
おっかしいなぁ……
甘くて、苦くて、辛くて、やっぱり苦くて――
美味しいでしょう?」
「こ、これは毒なんてものじゃありませんよ!
毒以上の何かです!」
お嬢様、飲んではなりませんよ。と息を荒く告げるメィリオのその姿は本当に苦しそうで、ツクモはこれを見てカッカッカッと笑っている。
――フム。
と、そんなやり取りを見て、目だけで通じあう二人はユキシロと部長。二人の視線の先にはワキミズの毒茶があった。
サテサテ、とその場を収め、ポンポンと手を打つのはツクモ。
「さぁて、そろそろ夕飯の準備だ。ほら、動いた動いた」
と、一同を立たせる。その時、つい三十分前に言われたことを忘れ、ワキミズは畳のヘリを踏んでしまった。
――ドドンッッ!!
ワキミズがそれを耳で感じると同時に自分の足元が跳ね上がるのを全身で感じた。爆音とともに畳が跳ね上がり、少年はそのまま吹っ飛んだ。ホコリは煙となってもうもうと立ち上り、辺りは騒然とする。
「な、なんだぁっ」
吹っ飛ばされたワキミズはなんとか、意識を保ちながらも爆心地に目を向ける。メィリオはパニックになりそうな己を御して、エミィの身の安全を確保しようと喚きながらも身を低く保ち状況を伺っている。
煙の中に、一対の紅い光が見える。やがてその光はヒトの形の影を纏い、影は肉を帯びて現れた。一本の槍を携えたその人は、着物の上からでもその筋骨隆々とした鬼の様な体格を見て取れた。髪と口元に確認出来たヒゲは黒地に白いものが混じっていることから、相応の歳であると推し量れた。
ワキミズが右を見ると、ユキシロと部長がそれぞれ、その鬼に構えていた。
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