24 / 54
24/54
しおりを挟む
「昨日のイトウ先生ったらさ~」
日の昇る前からの練習、その後の炊事にも慣れ始め、笑い話をしながら登校するという、実にチャラけた朝を迎えるワキミズ。その顔は健康的に締り、健康的に日に焼けていた。
男子と女子では下足箱の位置が若干違うので、一度エミィとは離れる。
ワキミズが下足箱にスニーカーを入れると、クラスメイトの一人が声を掛けてくる。数少ない友人であるマツダだった。其の姿は見るままに十代のオタクっぽく、野暮ったい黒の天然パーマのかかった頭髪に、そのような店に行けばいくらでもあるはずのおしゃれとは無縁なメガネ。身長は少しワキミズより高い位だが、猫背のためか、部活で姿勢も矯正されてきたワキミズと同じくらいの目線であった。
「なぁ、ワキミズ氏。サムライ部って何してるんですか?」
「ナニって……そりゃあ色々さ……なんてーの? 『日本人としての在るべき姿』其の追求と存続とか?」
ふーん……そんなものなのか。という意思をのせて鼻から息を抜くマツダ。
モチロン、この日本人としての~、というのはセンパイ達の弁であったが、この若造は、さも自慢げに口にした。若干、自分の世界に陶酔しているようでもあった。
「って言っても、サムライ部の人なんて有名人ばかりですものなぁ。ユキシロ先輩にツクモ先輩。校則で行ったら明らかにアウトな髪の色ですよね。なんで大丈夫ナンスカ」
苦笑交じりに問う友人に、
――マァ確かに。と同調する。
「それにハク部長さん? あの人、かなりスタイルがイイですよね」
「そう、そうなんだよ。着物の上からでも分かるくらいに、イイ胸してるんだよ!」
「おぉ、ワキミズ氏もキョヌー派でしたか」
グフ、グフフと爽やかな朝にそぐわぬ、生臭い話をしている二人。
「部長がどうかしましたか?」
ワキミズ達が意識を向けていない横から、ピョコンと顔を出すエミィ。
「イヤ、ナンデモナイヨー?」
大きく動揺する二人。そのうちの一人、マツダは「ソレジャ!」と、さっさと逃げていき取り残される形となった少年がひとり。
「イヤ、ホラ、部長ってキレイダネーって、話をしてて――ってんじゃダメカナ……」
「確かに、部長さんは綺麗ですよね。他の皆さんもですが、部長はあのいつも変わらない表情がミステリアスというか……それにバストが、何を食べたらあんなに特盛りになるのでしょうか?」
エミィはカバンを脇に挟み、両の手を己の胸にあてる仕草をする。
(イヤイヤ、貴女のムネも、相当なトクモリですよ)
彼の其の視線は嫌がおうにもYシャツの下存在している二つの桃に向かってしまう。
「あ、そろそろ、ホームルーム始まりますよー」
いつの間にか二人は教室の前まで至り、そそくさとそれぞれの席に着く。しかし、少年の頭部には、まだ見ぬ女性の白き肌、たわわな桃、鼻腔をくすぐるであろう芳香が大半を占め、若干前かがみになりつつあったところで、神経質そうな教師が壇上で挨拶を始めた。
その夜の屋敷。自分の部屋で座して本を読んでいたのはユキシロであった。彼はその氷色の瞳を灯りで揺らしながらひとり呟く。
「まぁ、基本はアタシが教えればいいんだけど……」
それと時を同じくして、庭に呼び出されていたのは、一年の三人。
「なんだろ……?」
「なんでしょうね、こんな時間にレンシューですか?
メィリオ、何か先輩から聞いてる?」
「いえ、お嬢様。今夜はツクモ先輩からの呼び出しだ、としか……」
などと、三人が顔を見合わせていると、ボムッという軽い炸裂音とともに白い煙が立つ。
――!
その方向、ワキミズにとっては背後へと意識と視線を向けると、そこには金髪をこんもりとしたアフロに仕立てたものの、身長はメィリオよりも低いツクモが現れた。
「今宵は拙者が忍びの、忍術の基本をお教えいたす。――なんてな」
と、おどけて見せる。
日の昇る前からの練習、その後の炊事にも慣れ始め、笑い話をしながら登校するという、実にチャラけた朝を迎えるワキミズ。その顔は健康的に締り、健康的に日に焼けていた。
男子と女子では下足箱の位置が若干違うので、一度エミィとは離れる。
ワキミズが下足箱にスニーカーを入れると、クラスメイトの一人が声を掛けてくる。数少ない友人であるマツダだった。其の姿は見るままに十代のオタクっぽく、野暮ったい黒の天然パーマのかかった頭髪に、そのような店に行けばいくらでもあるはずのおしゃれとは無縁なメガネ。身長は少しワキミズより高い位だが、猫背のためか、部活で姿勢も矯正されてきたワキミズと同じくらいの目線であった。
「なぁ、ワキミズ氏。サムライ部って何してるんですか?」
「ナニって……そりゃあ色々さ……なんてーの? 『日本人としての在るべき姿』其の追求と存続とか?」
ふーん……そんなものなのか。という意思をのせて鼻から息を抜くマツダ。
モチロン、この日本人としての~、というのはセンパイ達の弁であったが、この若造は、さも自慢げに口にした。若干、自分の世界に陶酔しているようでもあった。
「って言っても、サムライ部の人なんて有名人ばかりですものなぁ。ユキシロ先輩にツクモ先輩。校則で行ったら明らかにアウトな髪の色ですよね。なんで大丈夫ナンスカ」
苦笑交じりに問う友人に、
――マァ確かに。と同調する。
「それにハク部長さん? あの人、かなりスタイルがイイですよね」
「そう、そうなんだよ。着物の上からでも分かるくらいに、イイ胸してるんだよ!」
「おぉ、ワキミズ氏もキョヌー派でしたか」
グフ、グフフと爽やかな朝にそぐわぬ、生臭い話をしている二人。
「部長がどうかしましたか?」
ワキミズ達が意識を向けていない横から、ピョコンと顔を出すエミィ。
「イヤ、ナンデモナイヨー?」
大きく動揺する二人。そのうちの一人、マツダは「ソレジャ!」と、さっさと逃げていき取り残される形となった少年がひとり。
「イヤ、ホラ、部長ってキレイダネーって、話をしてて――ってんじゃダメカナ……」
「確かに、部長さんは綺麗ですよね。他の皆さんもですが、部長はあのいつも変わらない表情がミステリアスというか……それにバストが、何を食べたらあんなに特盛りになるのでしょうか?」
エミィはカバンを脇に挟み、両の手を己の胸にあてる仕草をする。
(イヤイヤ、貴女のムネも、相当なトクモリですよ)
彼の其の視線は嫌がおうにもYシャツの下存在している二つの桃に向かってしまう。
「あ、そろそろ、ホームルーム始まりますよー」
いつの間にか二人は教室の前まで至り、そそくさとそれぞれの席に着く。しかし、少年の頭部には、まだ見ぬ女性の白き肌、たわわな桃、鼻腔をくすぐるであろう芳香が大半を占め、若干前かがみになりつつあったところで、神経質そうな教師が壇上で挨拶を始めた。
その夜の屋敷。自分の部屋で座して本を読んでいたのはユキシロであった。彼はその氷色の瞳を灯りで揺らしながらひとり呟く。
「まぁ、基本はアタシが教えればいいんだけど……」
それと時を同じくして、庭に呼び出されていたのは、一年の三人。
「なんだろ……?」
「なんでしょうね、こんな時間にレンシューですか?
メィリオ、何か先輩から聞いてる?」
「いえ、お嬢様。今夜はツクモ先輩からの呼び出しだ、としか……」
などと、三人が顔を見合わせていると、ボムッという軽い炸裂音とともに白い煙が立つ。
――!
その方向、ワキミズにとっては背後へと意識と視線を向けると、そこには金髪をこんもりとしたアフロに仕立てたものの、身長はメィリオよりも低いツクモが現れた。
「今宵は拙者が忍びの、忍術の基本をお教えいたす。――なんてな」
と、おどけて見せる。
0
あなたにおすすめの小説
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
【純愛百合】檸檬色に染まる泉【純愛GL】
里見 亮和
キャラ文芸
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけた、たった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届くはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前にいる。
奇跡みたいな出会いは、優しいだけじゃ終わらない。
近づくほど切なくて、触れるほど苦しくて、それでも離れられない。
憧れの先にある“本当の答え”に辿り着くまでの、静かな純愛GL。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる