柳兎学園・江戸文化作法研究会 ~サムライ部での青春のワンシーン~

花山オリヴィエ

文字の大きさ
25 / 54

25/54

しおりを挟む
 ハイ?
 ニンジュツ?

 一同が頭上に疑問符を浮かばせていると、アフロの忍者はどこから取り出したのか、風呂敷包みをそれぞれに手渡す。

「ハイ、んじゃあ、それに着替えてこーい」 

 言われるまま、流されるままに風呂敷包みを開くと、中にはまっ黒な忍者装束と、怪しい道具が入っていた。ツクモの指導の下、忍者装束を着て忍びの道具を身につける。普段の稽古着よりも体に密着するが、四肢を動かすのに違和感はなく、屋敷の中、障子の向こうで着替えを終え、再度庭に出てきたエミィに至っては、その豊かな果実を際立たせ、ワキミズは視線をそらせずにいた。
 当の彼女は、そんな視線に気づく事も無く、喜び飛び跳ねている。

「スゴい! 流石はニンジャです! ニンニンでござる!
 ……で、良いんでしたっけ?」
「お、おじょうさま~、それは作り話、フィクションの中のイメージ像ですよ~」

 いささか興奮気味であった彼女を横に置いたツクモ。
「ん? メィリオ。オメェ、昼間のユキシロの体術鍛錬の時もそうだったが、今回もそのぶかぶかのスーツでやるのか?」
「えぇ、先ずもってワタクシの――」
「あぁ、ワカッタワカッタ。それならそれで、好きにするがいいさ。んじゃあ……まず、手裏剣はこう持つ。んでもって……次にこの衣のココから……」

 道具の説明をツラツラと始める。

「ま、大まかでいいんだよ。んじゃ、今夜は屋敷の屋根裏を使って諜報活動の練習をしてみるよ~ん」

 ツクモはあくまで軽く、ライトに、大雑把に話を進めていった。

 ツクモ、ワキミズ、エミィ、メィリオの四人は屋敷の屋根裏にもぐりこみ、それこそネズミか何かのようにゴソゴソと埃にまみれていた。

「まず、ここがいつもの大広間だろ?
 そんであっちが……」

 大きな屋敷とはいえ、屋根裏ともなればそれなりの狭さ。

「さすがはニンジャさんですね。こんなに狭いのにツクモ先輩は軽々と動いておられます」
「えぇ、しかもその都度、我々のいる場所、下にある部屋の説明も挟みながらです」
「あぁ、しかもそこに鼻歌交じりに……だ」

 三人の視線や意識を意に介さず、すらすらと説明を続ける。

「いいか?
 こうして穴を開け、糸を垂らす。
 そうして糸を伝わせることで忍びこんだ先の標的の杯や料理に毒や薬を盛るわけだ」
「ところで先輩、その手に持ってるその灯りはなんですか?」
「ん? これか? これは龕灯提灯(がんどうちょうちん)っていう代物だ。中の火のついた部分をくるっと回してどの方向に向けても闇を照らせるってわけよ」
「そんな……電池式の懐中電灯を使えばイイものを……」

 ――ン?ナンカイッタカ? 
 ――イイエ、ナンニモ。

 そんなやり取りをしているうちに、次の部屋の上にたどり着いた。

「ここは?」
「ん~、ここはハクの部屋だな」

 ここでメィリオが一つの疑問を投げかける。

「地図も無いのに、こんなにすらすらと……まさか、日常的にこうしてワタクシたちの部屋の上を……?」
「カッカッカ、そんなことよりだ。ハクがこの時間に自分の部屋にいないってことは、風呂に行ってるってことだ」

 キュピピーン!

「「お風呂ですって?」」

 ここでワキミズとエミィの目が怪しく発光し、同時に同じ文句が口をついた。

「行ってみましょう!」
「えぇ、是非とも!」

 これにはメィリオが慌てる。

「ま、マズイですよー、それに男性であるワキミズさんならともかく、お嬢様まで何を言っておられるのですか!」

「フッフッフ、メィリオ。如何に女性同士とはいえ、あの部長のバストを気にならない者はいないのですよ」
「お、おじょうさま~……ツクモ先輩、二人をとめてくださいよ~」
「んじゃ、風呂はこっちだぜぃ、カッカッ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...