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75. チンチン
しおりを挟む俺達は、姫と冒険者さんや騎士さん達が選んだデーモンメイド達に連れられて、地下王宮から1階王宮カジノに移動した。
どうやら『ミノ1番モフウフ本店』は、王宮の外に有るらしい。
姫がデーモンメイドを引き連れて、王宮カジノの来る事は珍しいらしく、お客や従業員、『漆黒の森』が運営している王宮ダンジョンに来ている冒険者達が、俺達から少し離れた場所からジロジロ見てくる。
決して近ずいてこないのは、姫の恐ろしさを知っているからだろう。
当の姫はというと、俺にデレデレで、必死にメイドに扮して、『ミノ1番モフウフ本店』の案内を、先頭を切って買って出ているのだ。
「姫様、カジノを出て、『ウルフデパート』を越えて、右側の区画に『ミノ1番モフウフ本店』がございます」
姫の隣には、超美人な巨乳のメイドが付き添っており、姫に『ミノ1番モフウフ本店』の場所を教えている。
どうやら、姫は自分が支配している街の超有名店の場所も知らないようだ……
多分、巨乳のメイドさんは、姫お付のメイドなのだろう。
他のデーモンメイドより風格があり、1人だけメイド服の装飾が違うのだ。
「マスター! 『ミノ1番モフウフ本店』は、『ウルフデパート』を越えて、右側の区画にあるのです!」
姫は巨乳メイドさんに、教えられたまま俺に道案内をする。
聞こえてたし! とは言わない。
姫は『漆黒の森』の女王なのだ。
女王が、下々がいくお店など知らなくて当然なのだ。
俺は4歳児だが、紳士の嗜みとして、姫と巨乳メイドとの話は聞いてない体を装い、無言で頷く。
『ミノ1番モフウフ本店』は5階建ての建物で、入り口には行列が出来ている。
入り口に着くと、初老のダークエルフが出てきて、俺に挨拶してきた。
「私は『ミノ1番』のオーナーのナンコー·サンアリでございます。
これはこれは、エリスさんの息子さんのアレン様でございますね!
それからこちらは、噂のアリスちゃんですか!
姫様の子供の時に瓜二つですね!
まるで、姫様の妹君と言っても誰も疑いません」
ナンコウ·サンアリは、温和な笑みを浮かべてアリスに話しかける。
「サンアリ! アリスちゃんは私の本当の妹なのです!」
アリスは、いつの間にか姫の妹になってしまったようだ。
確かに俺が姫と結婚すれば、アリスは姫の妹という事になるのだが、俺は姫と結婚する気などは更々無い……
「勿論、承知しております!
それではアレン様。アリス様!
どうぞこちらへ!
VIP席を御用意しておりますので!」
サンアリは姫の話を華麗にスルーし、そのまま俺達を席に案内する。
「わ……妾はガブリエルの妹などではないのじゃ!
ガブリエルは、妾の倒すべき目標なのじゃ!
妹などになったら、ガブリエルと闘えぬではないか!」
どうやらアリスは姫の身内になってしまうと、姫と闘えなくなってしまうかもしれない事が、とても心配みたいだ。
「大丈夫なのです! アリスちゃん!
私はいつでも、アリスちゃんとの勝負を受け付けているのです!」
姫が、アリスに魅力的な提案する。
「そうなのか?そしたら妾は、ガブリエルの妹で良いのじゃ!」
アリスは、あっさり姫が自分のお姉さんになる事を受け入れてしまった。
「アリスちゃん! 正気なの?
ガブリエルは、エリスさんを殺そうとしていた人なのよ!」
ジュリは必死になって、アリスに詰め寄る。
「多分、母様は気にしていないのじゃ!
シャンティの話によると、母様はゴトウ·サイトに助けられた事があって、それが原因でゴトウ·サイトが死んでしまったのじゃろ!
それでガブ姉が、母様を恨んでいたと。
しかし、ゴトウ·サイトの生まれ変わりの兄様を母様が産んだ事により、ガブ姉は兄様に嫌われないように、母様を許したと。
この時点で、この話は完全に丸く収まって居るではないか!
さてはジュリ。お主、兄様にヤキモチを焼いているのではないのか?」
アリスが核心をついてしまったようだ。
「えっ! そんな事ないよ!
私はただ、ガブリエルがエリスさんを殺そうとしてた事が許せないだけで!」
ジュリは、アリスにヤキモチを焼いていると言われて戸惑っている。
「シャンティ。母様は、ガブリ姉を恨んでおったのか?」
アリスは、シャンティ先生に問いかける。
「エリス奥様は、姫様を全く恨んでおりません!
そもそもエリス奥様には、恨むという感情がありませんので!」
「そういう事じゃ! 本人同士が憎しみ合っていないのに、部外者が騒ぐのは良く無いと思うのじゃ!」
まさか歳下のアリスに諭されるとは思っていなかったのか、ジュリは黙り込んでしまった。
アリスはアホだが、実際は前の世界での記憶もあるので、実質1000歳オーバーなのだが……
俺達はサンアリに案内され、魔道式エレベーターで5階VIP席に到着した。
VIP席は座敷席のようで、既に人数分のミノタウロスの心臓の刺身と、キムチのような物とサラダが用意されており、俺達の到着に合わせて、よく冷えたエールが運び込まれてくる。
俺達、お子様組のジュースも用意されており準備万端に整っているようだ。
「それでは今回の集まりは、ガリム王国のレイドの決起集会と聞いておりますので、ネム王子にお言葉を頂けますか?」
サンアリが音頭を取り、ネム王子が挨拶する事になり、皆、立ち上がる。
「折角の冷えたビールが温くなってしまうと、準備してくれた方に失礼になってしまうので、挨拶は無しでチンチンしましょう!」
ネム王子が、ジョッキを掲げる。
「それではチンチン!」
ネム王子がチンチンする。
「「「チンチン!」」」
続けて、騎士さんや冒険者さん達もエールの入ったジョッキを掲げチンチンする。
一応言っておくが、『チンチン』とは、この世界での乾杯の事である。
チンチンすると、シャンティ先生やアレックス、冒険者さんや騎士さん達が、エールを一気に飲み干す。
俺もジュースを1口飲んで座敷に座ろうとすると、姫に両脇を抱えられ、そのまま姫のももの上に乗せられてしまった。
「ええと……姫さん?」
「マスター! 何ですか?」
「この体勢は、おかしいですよね……」
「マスターは、私の事が嫌いなのですか?」
「好き嫌いで言われたら、嫌いではないかな……」
「そしたら、何も問題ないですね♡」
応援ありがとうございます!
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