213 / 222
213. デート(2)
しおりを挟む「何これ! 凄い! どうなってるの!」
アンちゃんは、興奮気味に魔道具を手に取り、隅々を確認している。
アンちゃんの魔道具に対する好奇心は底抜けで、既に、俺の存在を忘れているのでは?と、思う程である。
俺も最初は、アンちゃんと一緒になって魔道具を見ていたのだ。
しかし、アンちゃんの好奇心は、俺の好奇心の遥か上をいっていた。
俺は機能や見た目だけしか見ていないのだが、アンちゃんは、さらにその先の作り方が気になるらしい。
ひたすら、「これはどうなってるの?もしかしてこうなってるのかな?やっぱりこうか!」とか、独り言を言いながら魔道具を捏ねくり回して見るのだ。
時には、製作者を呼んで、ああだこうだと専門的な話を聞いたりもする。
俺も最初は、アンちゃんの隣でフンフン聞いていたのだが、難し過ぎて眠くなるぐらいチンプンカンプンで、現在は諦め、店の外でアンちゃんが帰ってくるのを待っているという訳だ。
こんな筈では……。
俺の予定では、色々な魔道具屋をウィンドーショッピングして、その後、手下Aに調べさせたオシャレなカフェに行く予定だったのだが、アンちゃんの魔道具巡りは、ガチの奴だったのだ。
日本で例えるなら、秋葉原の電気街でマニアックなパーツを捜す感じだ。
デートの要素など、これっぽっちも無い。
アンちゃんが、ここまでオタクだったとは……。
俺って、居なくてもいいんじゃね。
「サイト君! ゴメンゴメン! 珍しい魔道具がたくさんあるから、興奮しすぎちゃったよ!」
アンちゃんが、午後1時過ぎになって、ようやく戻ってきた。
「満足した?」
「満足、満足、大満足だよ! また、一緒にデートしようね!」
アンちゃんは、興奮気味に俺の手を握る。
ハッキリ言って、デートはもう勘弁だが、満足してもらって少し嬉しい。
俺のポークビッツも、思わず反応してしまう。
「じゃあ、ご飯でも食べに行く?
アンちゃんの為に、オシャレなカフェを調べておいたんだ」
「エッ! サイト君が、僕の為に調べてくれたの?」
「結構、頑張って調べたんだよ!」
実際は、手下Aに調べさただけだが、アンちゃんの好感度を上げる為、ここは俺の手柄にしておく。
「凄いよ! サイト君! カフェなんて、凄くデートっぽいよ!」
アンちゃんがおかしな事を言う。これはデートではなかったのか?
俺は最初から、デートのつもりだったんだけど……。
アンちゃんも最初はデートのつもりだったんだと思うが、珍しい魔道具を見て、変なスイッチが入ってしまったのだろう。
多分これは、モノ作りが大好きなドワーフ族の習性で、決してアンちゃんが悪い訳では無い。
これからは、アンちゃんとデートする時は気をつけなければ。
服を見に行くとか雑貨屋さんを見に行くとか、アンちゃんが、それ程興味が無いものを選択しないと、今日の悪夢を繰り返してしまう。
まあ兎に角、俺はやっとデートらしく、アンちゃんの手を取って、手下Aに調べさせたオシャレなカフェに向かう。
遂に、アンちゃんをリードする事ができる。
こんなデートを、俺は目指していたのだ。
しかし、街の人には、目当ての欲しい物を買って貰う為に、お姉ちゃんを引っ張っているお子様にしか見えないかもしれない。
それでもいい。これは俺とアンちゃんの問題なのだ。
実際、アンちゃんは、俺にメロメロなのである。
俺のポークビッツは、女を狂わす。
女は、俺のポークビッツを一度味わうと、俺から離れられなくなってしまうのだ!
罪な男だぜ!
「サイト君、何か言った?」
どうやら頭で考えてた事が、口に出てしまってたようだ。
「何でもないよ。ただ、アンちゃんは、今日も可愛いいな! と思って!」
「もう! サイト君ったら!」
バシッ!
俺はアンちゃんに肩を叩かれ、そのままベチャン! と、地面に叩きつけられた。
「アッ! ゴメン、サイト君!」
勘弁して欲しい。
アンちゃんは、大の大人が両手でやっと持ち上げれる位の大盾を、片手で余裕に持って振り回せる程の、怪力女子なのである。
日頃は、力を調整して人と接しているが、興奮すると地の力を出してしまうのだ。
「だ……大丈夫だよ……」
俺は痩せ我慢して、起き上がる為に片膝をつく。
「た……大変! サイト君、鼻血が出てるよ!」
「大丈夫、大丈夫、鼻血ぐらい……」
アンちゃんが肩を貸そうとするのを制止し、自分の力で立ち上がろうと思った瞬間、急に目眩がして、そして、そのまま意識を失った。
ーーー
ハッ!
俺は、布団を跳ね除け飛び起きる。
確か、俺は、アンちゃんとデート中であった筈だ。
「サイト君! 良かった、目が覚めたんだね! 回復魔法を掛けても目を覚まさないから、心配したんだよ!」
そうだ、思い出した。
どうやら俺は、アンちゃんに会心の一撃を喰らって気を失ったんだ。
そして、ここは俺の部屋。
アンちゃんは、気を失ってしまった俺を、フェアリー寮まで運んでくれたみたいだ。
「心配掛けて、ゴメンね……それから、オシャレなカフェに連れていけなくてゴメン……」
俺は、申し訳なさげに、アンちゃんに頭を下げる。
「サイト君のせいじゃないよ! 全部、僕が悪いんだよ! だから、今日は、お礼がしたくって……」
アンちゃんが、急に真っ赤な顔になる。
「お礼って?」
「分かるでしょ……お礼はお礼だよ」
アンちゃんは、そう言うと、スルスルと制服を脱ぎ始めた。
そして、未成熟な裸体をあらわにする。
「今日は、サイト君の、好きにしていいからね♡」
アンちゃんによる、大人のデートが始まった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
502
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる