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213. デート(2)

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「何これ! 凄い! どうなってるの!」

 アンちゃんは、興奮気味に魔道具を手に取り、隅々を確認している。

 アンちゃんの魔道具に対する好奇心は底抜けで、既に、俺の存在を忘れているのでは?と、思う程である。

 俺も最初は、アンちゃんと一緒になって魔道具を見ていたのだ。

 しかし、アンちゃんの好奇心は、俺の好奇心の遥か上をいっていた。

 俺は機能や見た目だけしか見ていないのだが、アンちゃんは、さらにその先の作り方が気になるらしい。

 ひたすら、「これはどうなってるの?もしかしてこうなってるのかな?やっぱりこうか!」とか、独り言を言いながら魔道具を捏ねくり回して見るのだ。

 時には、製作者を呼んで、ああだこうだと専門的な話を聞いたりもする。

 俺も最初は、アンちゃんの隣でフンフン聞いていたのだが、難し過ぎて眠くなるぐらいチンプンカンプンで、現在は諦め、店の外でアンちゃんが帰ってくるのを待っているという訳だ。

 こんな筈では……。

 俺の予定では、色々な魔道具屋をウィンドーショッピングして、その後、手下Aに調べさせたオシャレなカフェに行く予定だったのだが、アンちゃんの魔道具巡りは、ガチの奴だったのだ。

 日本で例えるなら、秋葉原の電気街でマニアックなパーツを捜す感じだ。

 デートの要素など、これっぽっちも無い。

 アンちゃんが、ここまでオタクだったとは……。

 俺って、居なくてもいいんじゃね。

「サイト君! ゴメンゴメン! 珍しい魔道具がたくさんあるから、興奮しすぎちゃったよ!」

 アンちゃんが、午後1時過ぎになって、ようやく戻ってきた。

「満足した?」

「満足、満足、大満足だよ! また、一緒にデートしようね!」

 アンちゃんは、興奮気味に俺の手を握る。
 ハッキリ言って、デートはもう勘弁だが、満足してもらって少し嬉しい。

 俺のポークビッツも、思わず反応してしまう。

「じゃあ、ご飯でも食べに行く?
 アンちゃんの為に、オシャレなカフェを調べておいたんだ」

「エッ! サイト君が、僕の為に調べてくれたの?」

「結構、頑張って調べたんだよ!」

 実際は、手下Aに調べさただけだが、アンちゃんの好感度を上げる為、ここは俺の手柄にしておく。

「凄いよ! サイト君! カフェなんて、凄くデートっぽいよ!」

 アンちゃんがおかしな事を言う。これはデートではなかったのか?
 俺は最初から、デートのつもりだったんだけど……。

 アンちゃんも最初はデートのつもりだったんだと思うが、珍しい魔道具を見て、変なスイッチが入ってしまったのだろう。

 多分これは、モノ作りが大好きなドワーフ族の習性で、決してアンちゃんが悪い訳では無い。

 これからは、アンちゃんとデートする時は気をつけなければ。
 服を見に行くとか雑貨屋さんを見に行くとか、アンちゃんが、それ程興味が無いものを選択しないと、今日の悪夢を繰り返してしまう。

 まあ兎に角、俺はやっとデートらしく、アンちゃんの手を取って、手下Aに調べさせたオシャレなカフェに向かう。

 遂に、アンちゃんをリードする事ができる。
 こんなデートを、俺は目指していたのだ。

 しかし、街の人には、目当ての欲しい物を買って貰う為に、お姉ちゃんを引っ張っているお子様にしか見えないかもしれない。

 それでもいい。これは俺とアンちゃんの問題なのだ。

 実際、アンちゃんは、俺にメロメロなのである。
 俺のポークビッツは、女を狂わす。
 女は、俺のポークビッツを一度味わうと、俺から離れられなくなってしまうのだ!

 罪な男だぜ!

「サイト君、何か言った?」

 どうやら頭で考えてた事が、口に出てしまってたようだ。

「何でもないよ。ただ、アンちゃんは、今日も可愛いいな! と思って!」

「もう! サイト君ったら!」

 バシッ!

 俺はアンちゃんに肩を叩かれ、そのままベチャン! と、地面に叩きつけられた。

「アッ! ゴメン、サイト君!」

 勘弁して欲しい。

 アンちゃんは、大の大人が両手でやっと持ち上げれる位の大盾を、片手で余裕に持って振り回せる程の、怪力女子なのである。

 日頃は、力を調整して人と接しているが、興奮すると地の力を出してしまうのだ。

「だ……大丈夫だよ……」

 俺は痩せ我慢して、起き上がる為に片膝をつく。

「た……大変! サイト君、鼻血が出てるよ!」

「大丈夫、大丈夫、鼻血ぐらい……」

 アンちゃんが肩を貸そうとするのを制止し、自分の力で立ち上がろうと思った瞬間、急に目眩がして、そして、そのまま意識を失った。

 ーーー

 ハッ!

 俺は、布団を跳ね除け飛び起きる。

 確か、俺は、アンちゃんとデート中であった筈だ。

「サイト君! 良かった、目が覚めたんだね! 回復魔法を掛けても目を覚まさないから、心配したんだよ!」

 そうだ、思い出した。
 どうやら俺は、アンちゃんに会心の一撃を喰らって気を失ったんだ。

 そして、ここは俺の部屋。

 アンちゃんは、気を失ってしまった俺を、フェアリー寮まで運んでくれたみたいだ。

「心配掛けて、ゴメンね……それから、オシャレなカフェに連れていけなくてゴメン……」

 俺は、申し訳なさげに、アンちゃんに頭を下げる。

「サイト君のせいじゃないよ! 全部、僕が悪いんだよ! だから、今日は、お礼がしたくって……」

 アンちゃんが、急に真っ赤な顔になる。

「お礼って?」

「分かるでしょ……お礼はお礼だよ」

 アンちゃんは、そう言うと、スルスルと制服を脱ぎ始めた。

 そして、未成熟な裸体をあらわにする。

「今日は、サイト君の、好きにしていいからね♡」

 アンちゃんによる、大人のデートが始まった。
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