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62. 拳もいける男

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『犬の肉球』のメンバー達は、無駄話をしつつ未攻略SSSダンジョンを攻略して行く。

 まあ、殆ど喋ってるのは、塩太郎とシャンティーなのだけど。

 ムネオは、ウンウン相槌を打って、聞いてるだけだし、エリスは、塩太郎に付かず離れずで、顔を真っ赤にし無言で付いてきてるだけ。

 たまに、塩太郎とシャンティーの話がエスカレートして、殴り合いの喧嘩になると、ムネオが、「まあ、まあ、まあ」と言って、止めてくれるのがいつものパターンだ。

 ん? 魔物は出ないのかって?

 まだ、ダンジョン上層部なので、レベル差なのか、1匹も出て来なかったりする。

 そんでもって、

「5階層の階段フロアーも結界が張ってあるわね」

 シャンティーが、残念そうに言葉を発する。

「剣王が居る冒険者パーティーが、この階層も攻略してるって事か?」

 塩太郎が尋ねる。

「そうよ。冒険者は、各階層のフロアーボスを倒したら、結界を張るルールだからね!」

「剣王達は、何階層に居ると思う?」

「今日で、探索始めて3日目らしいから、15階層辺りかしらね」

「何だ、それ?遅過ぎんだろ?」

「普通は、そんなもんよ。私達みたいに、優秀な感知魔法を使える精霊を使役してる冒険者パーティーなんか、殆ど、居ないのよ」

 シャンティーは、先頭を歩く精霊を見やる。

「エリスが召喚した、この白いワンコが、そんなに凄いのか?」

「この子は、ライラプス。ダンジョンでは、とても重宝するわ!
 ダンジョンでは、イヌ科の精霊や神獣、それか犬耳族がパーティーに居ると、鼻が利くので、とても楽になるの!」

「へぇ~そうなんだ」

 とか、話してると、瞬くうちに6階層の階段フロアーに到着する。

「近っ!!」

「こんな事もあるわ。だけれども、イヌ科の仲間が居ない冒険者パーティーだと、この階段フロアーを探し出す為に、3日も掛かる事だってあるんだから!」

「嘘だろ?」

「本当よ!」

 シャンティーは、真顔で答える。

「じゃあ、犬の仲間が居ない冒険者パーティーは、まともにダンジョンなんか攻略できねーじゃねーかよ?」

「マップラーていう、一度通った場所を記憶する地図が売ってるし、攻略済のダンジョンの殆どは、地図が売り出されてるから、なんとか攻略は出来るのよ」

「ここのダンジョンは、まだ、地図が売り出されてないと?」

「ええ。未攻略ダンジョンだしね!」

 とか、話しながら進む事、3時間後。

 たまに出てくる敵を蹴散らしなが、14階層の階段フロアーに到着した。

「おい! シャンティー! 結界が張られてないぜ!」

「まだ、攻略されてないのね」

 シャンティーは、事も無げに答える。

「おい! 部屋の中に魔物が居るぞ!」

「まあ、攻略されてないんだから、フロアーボスぐらい居るでしょ!」

「倒してもいいのか?」

「ここで剣王が居る冒険者パーティーを待つつもりだから、とっとと倒しちゃって!」

 実質的な『犬の肉球』のリーダーである、シャンティーから許可が下りる。

「了解!」

 ボコッ!

 塩太郎は、闘気を纏った拳一発で、フロアーボスを殴り飛ばし絶命させた。

「アンタ、もしかしてブリトニーに感化されて、拳神も目指してるの?」

 シャンティーが、呆気に取られながらも聞いてくる。

「試しに、やってみただけだ! 刀に闘気を纏わすか、拳に闘気を纏わすかの違いだけだな。
 まあ、俺の場合、元々、相撲も強かったし、柳生新陰流の道場でも、神道無念流の道場でも、柔術に関しては一番強かったから、結構、素手でのドツキアイも、得意と言えば得意なんだよね!」

 幕末時代の剣術道場では、普通に柔術も教えていたので、塩太郎も例に漏れず、柔術の修行をしていたりする。

「アンタも、ブリトニーと一緒で、素手でも行けるタイプだったのね……」

「まあ、魔物を素手で倒すのは無理だと思ってたから、今迄、やらなかっただけだけど、元々、俺って、足癖が悪いと言われてたからな」

 塩太郎は、その足癖の悪さで、新撰組の沖田総士を葬っていたりする。
 史実では、結核で死んだ事になってるけど。

「で、アンタ、もしかして剣王を素手で倒す気?」

「お前も、素手で倒せるって言ってただろ?」

「まあ、それでいいけど、素手で倒して、剣王の称号が取得出来るか分からないわよ?」

「取れなかったら、エリスポーション掛けて、もう一度、刀で倒せばいいだけだろ?」

 塩太郎は、事も無げに言う。

「アンタ、一度勝った相手をわざわざ復活させて、もう一度ボコるって、どんだけ鬼畜なのよ!」

「だって、仕方がねーだろ?剣王の称号取れなかったら意味ないし?」

「わざわざ、剣士が、剣王を素手で倒すって、剣王にとって相当な屈辱よ……。
 それなのに、わざわざ復活させて、心が弱ってる所に、追い討ちをかけて、また倒すなんて……」

「剣王を、素手で倒せるか試してみてーんだよ!」

「というか、アンタ、ブリトニーに対抗意識燃やしてんでしょ?」

 シャンティーに、心を見透かされる。
 そう。塩太郎は、剣術が得意だが、ステゴロの喧嘩も、滅茶苦茶得意なのだ。

 元々、子供の頃は、近所で有名な悪ガキで、素手での喧嘩で負けた事など無かったし。
 剣神を目指す次いでに、拳神の称号もゲットしようと本気で考えていた。

 とか話してると、いきなり、

「誰だ!俺達が攻略してた未攻略ダンジョンを、後から横取りしてる、ふてえ奴等は!」

 2メートルはあろう、筋肉隆々の巨体で、上半身裸のバスターソードを持つ男と、その仲間と思われる5人組の冒険者パーティーが、塩太郎達の前に現れた。

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