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80. 誕生日
しおりを挟む塩太郎に相対する相手は、剣王序列2位ハラ マサミ。ハラダ家分家の女剣士で、歳は20代前半。白い道着に黒袴。切れ長な目が印象的な美人さんである。
その美人さんが、洗練された薄い闘気を体に纏わしている。
コイツも、中々やるな。魔力を相当練り込んでやがる。
たくさんの魔力を、出来るだけ薄く練り込むのが、この世界のやり方。
魔素濃度と言うらしいく、魔素濃度が高ければ高い程、魔法も弾くし、物理防御も強くなるらしい。
闘気使いの戦い方は、いかに魔力を練って薄く薄く魔素濃度を上げるかにかかってるらしい。全部、シャンティーの話の受け入りだけど。
そして、相対する美人さんは、どうやら闘気の扱いが上手いのだと思われる。
「準備は出来ましたか?」
審判のハラダ・ハナが尋ねてくる。
「大丈夫です」
美人さんは、塩太郎の視線を外さずに答える。
「いつでもいいぜ!」
塩太郎は、余裕綽々で、肩に木刀を載せる。
「舐めるな!」
どうやら、美人さんは、塩太郎の行為にカチンと来たようである。
「舐めてないぜ! ただ余裕ポイなと思ってただけだ!」
「絶対に倒す!」
「おお! ドーンと来な!」
塩太郎は、余裕の表情を崩さない。
「それでは、試合始め!」
ズザン! ズザン! ズザン!
試合始めと同時に、美人さんは、斬撃波を飛ばしてきた。
やはり、闘気の扱いが得意なのだろう。
だがしかし、
「エッ……?」
美人さんが、アホっぽい声をあげる。
何故なら、塩太郎は、そのまま斬撃波を何もせずに体で受け止めたのだ。
「まだまだ、魔力の練りがあめーな!」
塩太郎は、闘気を体に纏わせてないように思われたが、実は、薄さ0.001mmの薄さで、超高密度の闘気を纏わしていたのである。
ハッキリ言うと、この世界の闘気使いなど、塩太郎に言わせれば大した事ない。
何故なら、塩太郎は、魔力が全く無かった地球を主戦場にしていたのだ。
そう、地球で魔力を操るのは至難な技。
そもそも、普通の人間が、地球で魔力を使う事など無理。
塩太郎のような、元々、魔素総量が多い者でないと、魔法というか、闘気など使えないのである。
そんな闘気の扱いの難しい筈の地球で、塩太郎は既に、闘気を使いこなしていた。
岩を斬り裂いたり、火縄銃の玉を弾き返してたりしていたのだ。
まあ、簡単に言うと、地球の重力の100倍の場所でも、塩太郎は、普通に生活出来るレベルと言えば分かるだろう。
ちょっと古くなるが、巨人〇星の大リーグボール強制ベルトを付けた状態。
ドラゴ〇ボールで言うと、地球の10倍もの重力がかかる界王星、ナメック星へ向かう宇宙船のトレーニングルームで、地球の重力100倍でトレーニングしてる状態。
魔力を重力に置き換えて説明したが、塩太郎は、そんな魔力が枯渇していた地球で、無意識に闘気を操っていたのである。
そんな塩太郎が、闘気の扱いが下手な訳ない。
そう、塩太郎は、異世界に来たばかりの頃とは全然違うのだ。
シャンティーによる、常軌を逸した修行の成果で、元々、上手かった闘気の扱いが、更に上達してしまっていたのである。
「そんな! そんな筈は無いわ!」
ズザン! ズザン! ズザン! ズザン! ズザン! ズザン! ズザン! ズザン! ズザンズザン!
美人さんは、連続して、塩太郎に斬撃波を放つ。
「だから、俺には効かねーて! 俺に勝とうと思うなら、せめて、俺より闘気の扱いが上手くならねーと!
なんなら、俺が手取り足取り教えてやるぜ!俺が習った、神道無念流を。
まあ、神道無念流で闘気の使い方は教わらなかったが、呼吸法やら、精神統一の仕方やら、闘気の扱い方と共通な所も結構有るから役に立つと思うぜ!」
塩太郎は、美人さんを煽りに煽る。
口で煽るのも、技術のうち。
人斬りの極意は、生き残る事。
自分が死なずに、相手を殺せれば勝ち。
その為なら、何だって使う。
「舐めるな!我が流派こそ最強!」
ズザン! ズザン! ズザン! ズザン!
美人さんは、懲りずに斬撃波を放ってくる。
塩太郎は、魔力切れを待つつもりだったが、面倒臭くなってきてしまった。
「我が流派って、俺が習った神道無念流の方が、絶対に上だろ?」
塩太郎は、木刀を美人さんに向けて、軽く振る。それと同時に、木刀から斬撃波が飛び、美人さんは、吹っ飛ばされて壁に激突する。
「体が斬れないように、手加減してやったぜ!
俺も、女を斬る趣味はないんでな!
まあ、これで、お前の流派より、神道無念流の方が上だと分かっただろ!
伊達に、江戸三大道場とか言われてないんだぜ。神道無念流の練兵館はよ!
ていうか、斬撃波は、神道無念流に無かったよな……」
塩太郎は、とても肝心な事に気付き悩み出す。
「やはり、勝手に無い技を神道無念流の技だと言うのは不味いな……異世界に来て覚えた技だし……。
これは、俺が異世界に来て、勝手に覚えた技だし、俺が考えついた技だと言えるな!
元々、あった技だとしても、俺、誰にも習ってないしな。
というと、俺の流派を考えなくちゃならんな……新しい、オリジナル技を考えついた訳だし。
異世界に来て覚えた技と、神道無念流を足して、神道無異界流はどうだ?
うん。しっくり来るし格好良い!」
塩太郎は、ある日突然、異世界のに飛ばされ、一人きりでの長いダンジョン生活で身につけた、得意の独り言をいいながら考えを纏める。
「という訳だ! 俺の流派、神道異界流が、世界最強の流派だって、分かっただろ!」
塩太郎は、美人さんを見下し、これみよがしに言い放つ。
完全に、敵地だという事を忘れて。
まあ、元々、道場破りに来たので、今更なんだけどね。
だけれども、この何気に思いついた神道異界流剣術が、50年後、塩太郎の孫の世代に、この世界を席巻する流派になるとは、この時の塩太郎には、まだ、考えも及ばない事であった。
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