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113. 凱旋

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 ヨナンとアレクサンダー君が、カララムダンジョンを攻略して、地上に戻ると、既に地上では大変な大騒ぎになっていた。

 だって、突然、65階層で君臨していた難攻不落の魔物のデススパイダーが、激走してダンジョンを駆け下り、大森林の方に去って行く事件が起こったと思ったら、続けざまに、カララムダンジョンの上層部が爆発して、外壁を破壊し、天上テラスが出来てしまったのだ。

 誰もが、天変地異でも起こったのかと、恐怖で震え上がっていたのである。

 そんな喧騒の中、カララムダンジョンの入口から現れたカララム王、アレクサンダー・カララムと、ヨナン・グラスホッパー子爵を見て、みんな安堵する。

 カララムダンジョンの前には、国の上層部と軍隊、それから冒険者ギルドから選抜された冒険者達が集まっていたのだ。
 一応、ギルド上層部と、カララム王国上層部には、ヨナンの女騎士9人により、アレクサンダー君と、ヨナンが2人で、カララムダンジョンを攻略してるという情報を伝えていたのである。

 でもって、現在は、丁度、ヨナンのヤバ過ぎる実力を知らないカララム王国の上層部が、軍隊を派遣してカララムダンジョンを捜索しようとし、
 逆に、ヨナンの実力を知ってるグリズリー公爵とかが、別に、ヨナンと一緒なら問題ないでしょ!と、カララムダンジョンの前で揉めていた所であった。

 そんな所に、アレクサンダー君と、ヨナンは現れたのだ。

「皆の者! ワシの為に、よく集まってくれた! ご覧の通り、ワシが、カララムダンジョンを完全攻略してやったぞ!」

 と、いきなり、アレクサンダー君は、魔法の鞄の中から、カララムダンジョンの頂上でゲットした国宝級のお宝をぶちまける。

「えっ?! ヨナンと陛下が、カララムダンジョンを攻略……嘘でしょ!」

 ここで、選抜の冒険者達や、アン姉ちゃん達と一緒になって、カララムダンジョン前に来ていたカレン・イーグルが絶叫する。
 何故なら、カレンは、アン姉ちゃんと、カトリーヌと3人で、夏休み中、ずっとカララムダンジョンに籠って、完全攻略しようとしていたのだ。

 それなのに、ヨナンとアレクサンダー君と2人で、チャチャっと1日籠って、カララムダンジョンを軽く攻略されたらたまったもんじゃない。

「ヨナン! 何で、私と一緒に攻略してくれなかったのよ!」

 カレンは、顔を真っ赤にさせて、本気に怒っている。

「だって、それは……」

 ヨナンは、言い訳しようとしたが、アレクサンダー王が、カララムダンジョンを攻略した事を祝う兵士の声によって、ヨナンの声は掻き消されてしまう。

「ウオォォォォォォーー! アレクサンダー王が、難攻不落のカララムダンジョンを、攻略なされたぞーー!」

「あの、デススパイダーは、アレクサンダー王の強さに震えあがって、ダンジョンから逃げていったのだな!」

「カララムダンジョンの上層部を、爆破したのも、もしかしてアレクサンダー王?」

「ヤッパリ、アレクサンダー王の若い時の武勇伝は、本当だったんだな!
 若返って、全盛期の力を取り戻したんだ!」

 どうやら、アレクサンダー君は、若い時、ブイブイ言わせてたみたいで、それなりの実力がある事を、世間の人達は知っているようである。
 まあ、確かに、ステータス自体は強かったし。ヨナンが作った剣と鎧があれば、単独で60階層ぐらいは行けると思うけど。

『ご主人様、なんか、アレクサンダー君の手柄みたいになってしまってますけど、いいんですか?』

 鑑定スキルが尋ねてくる。

「別にいいんだよ。陛下に恩を売っておけば、今後、何かあったとき助けてくれるかもしれんし。そもそも、俺、これ以上目立ちたくないんだよ!
 それに、下手に、俺が強いと知れ渡ると、アホな挑戦者が現れて、決闘とか挑まれるかもしれんだろ!
 だけど、俺って、何か持ってないと、普通の奴より弱いんだぞ?
 きっと、カララム王国学園でも最弱だしな……」

『ですね! 僕の鑑定の結果でも、武器を持ってないご主人様は、カララム王国学園最弱です!
 だけれども、現在、大森林の小枝さえ持っていれば、カララム王国学園最強になれます!』

 鑑定スキルが、調べなくてもいいのに、わざわざ俺の現在位置を調べてくれる。
 というか、現在のカラララム王国で、俺以外の最強って、カレンじゃなかったのか?
 カレンなら、その辺に落ちてた小枝で倒せた筈なんだけど?

『カレンさん。前にご主人様に転ばされて、パンツを丸出しにした時より、大分強くなってますよ!
 現在は、その辺に落ちてる小枝じゃ、ご主人様でも倒す事は出来ません。
 ギリギリ、大森林の小枝で倒せる程度には強くなってます!』

「アイツも、結構、頑張ってるんだな?」

『ですね! まあ、イーグル辺境伯の血筋の女の子達は、努力家で働き者が多いですから、必要以上に修行も頑張っちゃうんじゃないですか?』

「確かに……エリザベスも、シスも、メチャクチャ働くもんな……」

 ヨナンには、思い当たる節しかない。
 だって、エリザベスもシスも、グラスホッパー商会の為に、昼夜を問わずメチャクチャ働いてるし、カレンとアン姉ちゃんとカトリーヌも、夏休み中、遊びもしないで、ずっとカララムダンジョンに籠ってたみたいだし。

『カレンさんの場合、剣の修行に、全ての情熱を注ぎ込んでるんですよ!
 伝説の冒険者パーティー、熊の鉄槌の団長であるエリザベスさんでも成し遂げれなかった、カララムダンジョン攻略を目標に掲げて……』

「その目標を、俺が、簡単に成し遂げてしまったと……」

『凄過ぎるのも罪ですよね……』

 鑑定スキルが、ポツリと言う。

「何も持ってなかったら、最弱なんだけどな……」

 そう。俺は、何も持ってなかったら最弱なのだ。それを自分自身で分かってるからこそ、カララムダンジョンの攻略だって、自分の手柄と思えないのである。

『ご主人様、カレンさんに謝りに言った方がいいんじゃないですか?』

「なんて、言えばいいんだよ?俺が凄過ぎて、ゴメンなさいって言えばいいのか?それとも、カララムダンジョンを軽く攻略しちゃってゴメンなさい?」

『そんなの自分で考えて下さいよ!』

 鑑定スキルが、謝れと言いながらも、俺に自分自身で考えろと言う。

「お前、鑑定スキルの癖に、うまい謝り方の検索出来ねーのかよ!」

『謝るセリフまで検索で調べるとか、その時点で既に、誠意が感じられませんね!』

「別にいいだろ! どんな風に謝ればいいか分かんないんだし!」

『こればっかしは、自分で考えて下さい!
 絶対に、謝り方入門の本の内容は教えませんから!』

「お前、いつでも俺の一番の味方じゃなかったのかよ!」

『僕は、いつでも、ご主人様のベストの選択を支持するんです!
 今回ばかりは、カレンさんの味方なんです!』

 鑑定スキルは、意固地になって、ヨナンを突き放したのであった。
 これもそれも、大好きなヨナンの成長の為にと、心を鬼にして。
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