転生チートで夢生活

にがよもぎ

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第3章 王宮学園 -前期-

第071話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

時は流れ夕方。あの後、アーサー達の練習風景を見ながら、適度にアドバイスをしていた。アーサーは素質…才能があったのか『はやぶさぎり』の形はほぼ完成間近となっていた。ついでに身体強化魔法の練習も同時に行い、明日には軽く手合わせをお願いされた。

アリスさん達はというと、やはりかなり難しいとだけあって一歩も進んではいなかった。だが、出来ない状況でもアリスさんは一言も文句を言わず、ただひたすらに練習をしていた。ケビン君はアリスさんと相談をしながら、ケビン君が持っている知識をアリスさんと共有し、なんとかコツを見つけようと必死になっていた。

その間、俺は一言も助言は求められなかった。アリスさんのプライドが邪魔をしているのか聞きづらいのかはわからないが、ケビン君が全て質問してくるという形であった。

「アーサー、もう夕方だけどまだ続けるのかー?」

「も、もうちょっと!!あと少しでコツが掴めそうなんす!!」

「アリスさん達はー?」

「まだ残るわ!全然出来てないもの!」

「ここの予約って何時までなんだ?」

「…いま何時っすか?」

「今は……17時過ぎだな」

「ならまだ大丈夫っす!ここは21時まで借りてるんで!」

「…あんま根を詰めすぎんなよー?」

「アルス先生はどうするんすか?」

「俺?俺は……暇だし、飯でも食いに行こうかと…」

「あー…そういや飯時っすもんねぇ…」

そんな会話をしていると胸元から声が聞こえた。

「アルスさーん!今どこいるのー??」

「ん?」

『魔水晶』からエドの声が聞こえ、応答する。

「ああ、エドか。…俺は今訓練所にいるよー」

「?? なんでそんな所にいるの?」

「アーサーが訓練所を予約してたみたいでさ…。んで、アリスさん達も練習したがってて、訓練所に来たってわけ」

「ふーん…。それならこっち手伝ってほしかったなー。…ま、いいや!近くにロニキスさんもいるんだけど、夕ご飯一緒に食べない?」

「お?いいねぇ!……あ、ちょっと待ってろ」

魔水晶から口を離し、アーサー達へと話しかける。

「おーい!!エド達が一緒にご飯食べないかってさー!」

「…もうちょっと待って欲しいっすー!!」
わたくしもあと少し待って欲しいですわ!」
「ぼ、僕はどちらでも……」

3人からの返事を聞き、再度エドと通信コールする。

「…聞こえてた?」

「うん!バッチリね!……んじゃ、訓練所に私達が向かうよー!部屋番号を教えてー?」

「おーいアーサー!!ここの部屋番号を教えろってさー!」

「『6-3』っすー!」

「『6-3』だってさ」

「分かった!ならそっち向かうねー!」

通信コールが切れ、エド達が来るまで待機していた。アーサー達はまだ一生懸命に練習を積み重ねていた。

それから30分ほど経ち、訓練所のドアが開かれる。

「お邪魔するよー!」
「おう!良い汗かいてるかー?」

外から元気よくエド達が入室し、アーサー達の雰囲気に少し驚いた表情を浮かべる。

「……アルスさん、アリスさん達何してるの?」
「アルス…アーサーがしてんのは一体何なんだ?」

「あー…話せば長くなるんだけど………

そう前置きしてからエド達に事の顛末てんまつを話す。必殺技のくだりに差し掛かった時、2人から批判を受けた。

「バッカじゃないの?!」
「バカかオメーは!!?」

2人から馬鹿呼ばわりされ少し落ち込む。

「…てか、アルスさんがアリスさん達に教えたのはまだまだまだまだまだ先の技術なんだよ?!」

「オイ!その必殺技は俺にも出来んのか?!」

「そ、それは分かってるけど…。やっちまったもんは仕方ないし…」

「もぉー!!普通に考えたら教える年齢じゃないって分かるでしょ!?」

「オイ!俺にもその技教えろ!!」

「ご、ごめん…」

「…はぁ。アルスさんは本当に何なのよぉ……。有能過ぎてドン引きなんだけど…」

「……無視か?無視なのかアルス?」

「あ、無視じゃ無いです。ロニキスさんも出来るとは思いますよ?」

「ちょっとロニキスさんは黙ってて!……アルスさん。アリスさん達に教えた内容はぜぇーったいに他の生徒には言わないでね!!ここだけの話にしておいて!!」

「はい…すいません…」

「そうかそうか!俺にも出来るのかぁ!」

激怒しているエドと、嬉しそうにしているロニキスさんとの会話はとても疲れた。結局、練習を一度中断しエドがアリスさん達を集め注意をしていた。

「練習中にごめんね?アルスさんが教えた事なんだけど、他の生徒には絶対に言わないって約束して貰えるかな?」

「ええ勿論ですわ。…それに、他の生徒じゃ出来ないと思いますし、言うだけ無駄かと…」

「オレも言わねーっすよ!皆が出来たら必殺技じゃ無くなるっすからね!」

「ぼ、僕も言いません!…というより、レベルが高過ぎて説明出来ないです…」

「…うん。皆の事信じてるからね!……アルスさんも!!ホイホイと新しくて難しい事を教えない様に!!分かった!?」

「はい…すいませんでした…」

「…ま、今回のは俺ら教師でさえも教える事が出来ない内容だからな。もし、他の生徒が質問してきても俺は答えれる自信が無い。…だから、マジで秘密でよろしく頼む。アルスも注意しとけよ?」

ロニキスさん達から再度厳重注意を受け、俺は心に刻む。…もう二度と思い付きの行動をしないと!

「……ちょっと怒っちゃったけど、キリもいいし今から皆で夕ご飯でも食べに行かない?アーサー君は別として、アリスさん達もずーっと頭を使ってて疲れたでしょ?」

「…そうですわね。今日の所はここまでにしておきますわ」

「オレはまだ大丈夫っすよー?」

「アーサー、オメーも飯を食いに行くんだよ!筋肉も魔力も使ったんだ。今は高揚しているから分からんが、反動がデカくなるぞ?」

「うぇっ?!…ロニキス先生、それはマジすか?」

「ああ。練習は適度に休むのも重要だ。そうしないと、力は身に付かんからな!」

「なら飯食うっす!沢山食べるっす!」

エドの提案により、本日の練習はここまでとなった。アーサー達は訓練所を清掃してから部屋を出る。そのまま食堂へと足を運び、全員で夕飯を食べるのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「ふぅー…食った食った!もう何もはいらねぇ!」

「…あれだけ食べれば当たり前よ」

「んー……デザートのお代わりしようかなぁ?」

「エド…お前まだ食べるつもりなのか?」

「当たり前だよ!デザートは別腹なんだから!」

「…本当にエドは沢山食べるよなぁ?それでその体型ってのが信じられん…」

「ロニキスさん、それはセクハラだよ?」

「そそそんなつもりで言ったんじゃねーぞ?!」

「ケビン君はデザートは要らないの?」

「ぼ、僕はもうお腹いっぱいです…」

「ケビン。アナタ少食過ぎるわよ?アーサーとまでは言わないけれど、しっかり食べないと大きくなれないわよ?」

「そうだぜケビン。オレみたいにデカくなりたいならまずは食べる事だ!」

「アンタは食べ過ぎなの!……全く。アンタと結婚する人は食費に悩まされそうね…」

「アルスさんはもう食べないのー?」

「もうお腹いっぱいだよ…」

楽しい夕食の時間を過ごし、今日の話で盛り上がった。エドも口では説教をしていたが、俺がアリスさん達に魅せた必殺技に興味があったらしい。アリスさん達の話を聞きながら、楽しそうにプランを練っていた。

「うあー……俺はもう部屋に帰って寝るとするよ。明日も朝早くから当番だからな…」

ロニキスさんが盛大に背伸びをして席を立つ。

「あれ?ロニキスさんはもう帰っちゃうの?アーサー君から話を聞かなくていいのー?」

「どーせ話だけじゃ出来ないからな。暇なときでもアルスから直接聞くことにするよ」

わたくしもそろそろ寮に帰るとしますわ。夜更かしはお肌の天敵ですからね」

「……んじゃ俺も帰るとするかな?」

「えー?!アルスさんも帰っちゃうのー??」

「……だってもう20時過ぎてるぜ?風呂入ってゆっくりしたいよ…」

「ぶぅー……なら、私も帰ろっかなー?」

「…オレも帰りますかね?ロニキス先生曰く休養も必要みたいすから!」

「ぼ、僕は図書館に寄ってから帰るよ…」

「あら?今から行って何をするの?」

「き、今日教えてもらった技術のヒントになる本を探そうかと思って…。手探り状態だからさ……」

「…そう。なら私は1人で帰らなくちゃね…」

「おいおいアリス!お前1人で帰す訳ねぇーだろ?ちゃーんと寮まで送ってやるからよ!」

「…変な事はしないでよね?」

「するわけねーだろ!?オレはそんな馬鹿男じゃねーぞ!!」

「…んじゃ、さっさと食堂から出るか。一応言っておくが、寄り道はすんなよ?」

ロニキスさんの締めの言葉で俺達は外へと出る。しっかりとアーサー達を見送ってから寮へと帰る。

「それじゃまた明日ねアルスさん!…明日は私と一緒の当番だからね!寝坊はしない事!」

「はいよ。…ま、一応朝にでもノックしてくれ」

「…寝坊する前提じゃない…。本当にそれだけはやめてよ!」

「わーってるって!…んじゃ、おやすみ。また明日な」

「うん!おやすみーっ!」

部屋の前で別れを告げ明かりをつけてから中に入ると、さも当然のようにケビン君が待っていた。

「うおっ?!」

「勝手に失礼しますね。アルス様」

「………ビビったー。いつからそこにいたの?」

「つい先程です」

「……心臓に悪いぜ。せめて、電気ぐらいつけててくれよ…」

「暗い方が落ち着きますので……」

「…そうなの?でも、流石に驚くから俺の所に入るときは明かりをつけてから待っててくれ」

「承知しました」

「あー…立って話すのも何だし、適当に座ってくれ。なんか飲む?」

「いえ。大丈夫です」

「ま、とりあえず紅茶でも飲みなよ」

そう言ってからキッチンへと向かい2人分の紅茶を用意する。部屋に戻るとケビン君はその場から一歩も動いておらず、その様子にドン引きした。

「……座っててよかったのに」

「…ソファーに座ったらアルス様の席が無くなるではありませんか」

「あー…とりあえずソファーに座ってよ。俺ベッドに座るからさ」

「滅相も無い。このままで結構ですよ!」

「いや…俺が困るんだけど……。あ、ちょっと待ってて。すぐに椅子を新しく出すから」

そう言って皮袋の中に手を突っ込み、中で椅子を創造してから取り出す。迂闊うかつな真似はしないと心に誓ったので、こういう一工夫、あるいは演技が必要だ。

「……その皮袋は一体?」

「あぁ、コレ?これはラティスさんってジルバさんの執事の人に選んでもらったんだ。結構値がしたらしい…」

もちろん嘘である。だが、買い物に行ったのは事実なのでそれを嘘に混ぜる。……バレたらバレたでその時に考えればいいや。

創造した椅子--もちろん、座りやすさを重視した逸品--を机の前に置く。

「…んで?話ってのは?」

紅茶を置きながら、ケビン君…ケビンに尋ねる。

「はい。お話というのは前回の事についてです」

「前回?」

「ええ。マクネア様の時にお話しした内容です」

「……ああ!ヴァルの話か!」

「そうです。……アルス様のお話を聞いていて良かったですよ」

「…なんかマクネアさんがそんな事言っていたなぁ…」

あの時のことを思い出しながら話を続ける。

「……元々はについてお話をするつもりでしたが、別件で新たにお話がございます」

「…別件??」

「はい。……マクネア様からも許可は得ております」

「……それって結構面倒事?」

「そこまでは無いと思われます。…ただ、情報を共有する意味では面倒事だとは思いますね…」

「ふーん……。ま、いいや。聞かせてもらってもいい?」

「はい。実は----

そう言ってケビンは話を始める。それはとって有益な情報であった。………だが、その話はアルスにとって新たな災厄を招く事になるとは現時点では思いもしなかったのだった。
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