転生チートで夢生活

にがよもぎ

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第5章 王宮学園 -後期-

第177話 -地獄の合宿 5-

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「ア、アルス殿?!」

「…………ドウザンさん?」

クロノス達との話し合いに乱入してきたのはドウザンさんであった。ドウザンさんの表情は何とも言い難い表情をしており、背後には10名程の兵士が着いて来ていた。

「アルス殿でしたか………」

「お久しぶりです………あの、そんなにワラワラと引き連れて何かあったんですか?」

「いえ………先程見張りの兵士から報告がありましてね。国境周辺で大きな揺れと熱波が押し寄せたそうで、調査しに来たって訳です」

「「「………………」」」

ドウザンさんの話を聞いて俺達は顔を見合わせる。

「ところで、アルス殿は何用でシュピー共和国へと?」

「いやぁ……ハハハ……」

「アルス殿のお力であれば大丈夫でしょうが、天変地異にはお気をつけ下さい。………おや?ところで見たことの無いお顔がおりますが……ご友人ですかな?」

ドウザンさんはクロノスとサタナキアを見ながら尋ねる。

「あー……えっと、この2人はクロノスとサタナキアっていう俺とアーサーと契約してくれ召喚獣なんだ」

「ほほぉー!私はヒト型の召喚獣は初めて見ましたが、中々にお強そうですなぁ!」

「? 初めてなんですか?」

「はい。私達は『血の契約』などはしませんからね。まぁ、エルフというのは元々精霊に近い種族ですから」

「へぇー、そうなんですか」

「知識としては知っておりますが、別に契約などしなくても私達は精であれは多少の会話は出来ますからね」

「えっ!?そんな事が出来るんですか!?」

「視える能力を持ち合わせた者に限りますがね?まぁ大半の民達は樹の精であれば会話出来ますから。……ところで、どちらがアルス殿と契約した方ですかな?」

「あ、こっちの黒白髪の方です」

ドウザンさんはクロノスへと近寄ると手を差し出す。

「初めまして。私はドウザンと言います」

「うむ」

クロノスと握手を済ませた後、サタナキアの方へドウザンさんは手を差し出す。

「初めまして」

「初めまして。私はサタナキア。そこにいるアーサーと契約した者です」

「ほほぉ?!アーサーといえば、かの有名な王宮騎士団総統の息子さんですかな?」

「ええ」

「………おや?君は前にアルス殿と凶漢と共に居たような……」

「き、きょうかん???」

ドウザンさんはアーサーの顔を見ると記憶を探していた。

「リンドールさんのことだよ。…ドウザンさん、あの時に居た生徒ですよ」

「生徒?……ああ、という事はまた指導をしていたのですかな?」

「はい。今日から5日間の合宿を組んでいるので」

「……………という事は彼がという事ですかな?」

「……………………いや、そんな事は…」

「ハハハッ!ご安心を。シュピー共和国は武魔祭にはそこまで本腰を入れておりませんので。ヒルメ様曰く、『親善試合で勝敗を争うなどバカの考えじゃ』との事ですよ?」

「そ、そうなんですか……」

「私も選ばれた事がありますが、どちらかというと勉強をしに行った感じでしたね」

「べ、勉強…ですか?」

「ええ。学園の授業に参加させて頂いたり、アルゼリアル国を案内して貰いました」

「なんでそんな事を?」

「見聞を広げるためです。そしてシュピー共和国で使える技術を持ち帰るのが目的でしたから」

「…若いのにしっかりとした考えを持っていたんですね」

ドウザンさんの話を聞いていて、アーサーの歳頃の自分を思い出す。当時は自分が好きな事に熱中出来る時期だった。『国の為』とか『将来の為』とか1度も考えた事は無かった。……まぁだから就職も出来なかったんだけどね?

当時の自分とドウザンさんと比較して『凄いなぁ』と心の底から感心した。しかし、その感心はドウザンさんの次の話によって打ち砕かれる。

「ハハハ!それは違いますよアルス殿。若いとは言ってもそれは人間種での話。私達で選ばれる歳頃は大体150歳ぐらいですよ?」

「へぇー、150歳ですか。そりゃあ随分……………はぁ?!え?!ひ、150?!」

「ええ。エルフは長命種ですから。………ちなみに私は830歳ですよ?人間種的に言えば」

ドウザンさんは少し笑みを浮かべる。エルフという王道ファンタジーの出演者の事をすっかり忘れてたよ。そりゃあ150歳とかになってれば考えも大人びているわなぁ。……つーか830歳とか言われても想像が付かんわ!100歳なるだけでヨボヨボになるっつーのに、ドウザンさんはまだお肌ツヤツヤじゃん。これはもうワカンねぇなぁ。

「………ふむ。ドウザンと言ったか?」

「はい。どうかされました?」

エルフの年齢に頭を悩ませていると、クロノスがドウザンさんへと喋りかける。

「先程という名前を聞いたのだが……ヒルメと言うのは誰の事だ?」

「ヒルメ様ですか?ヒルメ様は我が国の王であらせられます」

「………そうか。すまんな、我はあまりそういうことを知らなくてだな…」

「いえいえ。召喚獣ともあれば知らないのが当たり前だと思います」

「ほぉ?何故そう思うのだ?」

「召喚獣とは私達が住む世界とは別の世界のモノという話を聞いております。樹の精達もこの世界に存在はしますが、元々は違う世界に住んでいますから」

「『この世のモノであり、この世のモノでは無い』……ということか?」

「ええ。ですからと呼んでいるのでしょう。………精達が同じ世界に存在していれば、わちゃわちゃしていて住みづらそうですからね」

何か哲学的な話をしているように聞こえたが、そんな事は頭には残らない。難しい話はしないで欲しいよまったく!

「…では私達はそろそろ巡回に戻ります。アルス殿、もし何か気づいた事が有りましたら守衛へと連絡をください」

「あ……はい、分かりました。お気をつけて」

ドウザンさん達は一礼するとその場を後にする。姿が見えなくなった後、アーサーがおずおずと話し出す。

「先生………今の話って完全にオレの事でしたよね?」

「シッ!!黙ってれば大丈夫」

アーサーの口を押さえ、何事も無かったと言い聞かせる。『すいません。さっきのはアーサーがやったんです』とか言ったら絶対怒られるって!!バレなきゃ良いんだよ!

「……よし。ちょっと此処じゃ稽古出来なさそうだし、別の場所に移動するか」

ドウザンさん達が見回りをしている為、流石に続きは出来なさそうだ。そう考えた俺は次の場所へと移動する事を提案するのであった。

♢♦︎♢♦︎

「よーし………着いたぞ」

転移した先はスサノオさんと来たことのある場所であった。

「……ここは?」

「俺にも分からん。けど、飛竜ワイバーンが居るってことは確かだぞ」

「ワ、飛竜ワイバーンですか?!」

出没する魔物の名前を聞き、アーサーは驚いた表情を浮かべる。

「大丈夫だって。一つ眼サイクロプスとそんなに強さは変わらないぞ?」

「いや………竜っすよ?」

飛竜ワイバーンか………。鱗が硬い為生半可な攻撃では傷一つ付けられない相手だな」

「そうそう。だからアーサーにとっては丁度いい相手じゃねーかなと思って」

「ブレスが少々厄介だが、マナスキンを鍛えるのにも丁度良いな。好戦的らしいしな」

「サタナキアは博識だね。説明しなくて済むから楽だわ」

「…まぁにも似たようなのはわんさか居るからな。私もストレス発散の為に何百も狩ってたよ。何度でも復活するから手間がかからないからな」

「ストレス発散って……。まぁいいや。んじゃ、早速飛竜ワイバーンと戦う事になるけど、アーサーに何を教えるかをまず決めよう」

「圧倒的な火力……だったな。アーサーは剣技と魔法、どちらが良いのだ?」

「うーん………………どっちも…かな?」

「そうか。ならば…………どうする?」

「俺に聞くの?………それじゃ俺達が持ってる技を教えるってのは?」

「私達のをか?」

「出来そうなやつで。………俺の場合は『火炎斬り』とか『ドラゴン斬り』、出来るか分かんねーけど『テラスラッシュ』とかかな?」

「それは剣技なのか?」

「剣技だね。一応、アーサーには『はやぶさぎり』ってのを教えれたから、これも出来ると思うけど…」

「ふむ………ならば私は魔法を教え込めば良いな。クロノス様はどうされますか?」

「我は超級とやらを教えたい」

「「………………………」」

クロノスの発言にサタナキアもドン引きするのが分かった。

「あのさぁ?イワナ……言わなかったっけ?『出来そうなやつ』でってさ!」

「出来そうだと思ったから言ったんだぞ?アーサーは見る限り、炎系統に好まれている。炎系統の魔法ならば出来るのではないかと思ったまでだ」

「……クロノス様。流石にアーサーの魔力量では出来ないかも知れませんよ?」

「そうか?我は『天の焔』を教えようと考えていたのだが……」

『天の焔』という単語をすぐさま脳内検索する。しかし、該当するものは出てこなかった。

「クロノス様。それは私達しか使えない魔法では?しかも、人間に当てはめればそれは禁忌級だと思うのですが……」

「天の焔がか?!……いやいや、それは言い過ぎだろう?」

「…クロノス様はもう少し勉強なさった方がよろしいかも知れませんね。……アルス、魔法は私が教えても良いか?」

「うん。本気でお願いするよ」

「何故だ!?何故ダメなのだ!?」

ちょっとこの世界のレベルを知らないクロノスは放って置いて、アーサーへと剣技を教える。

「んじゃアーサー。今から教える剣技なんだけど………めっちゃ簡単だからすぐ覚えれると思う」

「そんな簡単何ですか?」

「うん。ただ剣に魔法を付与して斬るだけなんだよ」

「………それだけすか?」

「それだけ。一応、種族特効剣技ってのもあるんだけど、それは魔物の特性を理解して無いと出来ない技なんだよ。…一例を挙げると『ドラゴン斬り』だね」

「種族特効剣技??……なんかカッコいいっすね」

「そうか?…まぁドラゴン斬りは硬い鱗を無視した攻撃になるね。力量も技術も必要だから魔物の知識が増えた頃に覚えようか」

「…それじゃ魔法を付与した剣技をするって事ですか?」

「今回はね。……んじゃサクッと説明するけど、『火炎斬り』ってのはその名の通り炎を纏わせて斬る剣技だ。けど、ただの弱い炎魔法だとあんまり効果は無い。出来るだけ強めの魔法が良いかな」

「強めの魔法………中級って事ですか?」

「そんくらいかな?んで、俺の知識だと火炎斬りってのは植物系の魔物には効果抜群。それとは逆に水辺に棲む魔物とかには余り効果は無いかな?」

「それじゃ飛竜ワイバーンにも入らないんじゃ…」

「一例だからな?俺が言いたいのはどの属性魔法でも付与して斬りかかる剣技って事だな」

「ふむふむ………。それじゃあ別の魔法を付与したら良いって事ですか?」

「そうだね。アーサーはさっき纏わせてたから出来ると思うけど、今回は付与して斬るってのを意識してみて欲しい」

「意識すか?」

「うーん……なんだろ?なんて言えば良いのかな…………、ただ付与して斬るなら誰でも出来る。けど、付与した魔法の威力や斬りつける技術を意識するようにすれば、無意識に出来るようになると思うんだ」

「無意識???」

「………そうだな。ちょっとお手本見せるね」

そう言ってアーサーの前で剣を抜く。そして何も無い空間に振り降ろすと、空気が燃えるのが目に見えた。

「えっ?!い、今のどうやったんすか!?」

「無意識……いや、無意識だとおかしいな。俺がしたのは魔法をして付与しただけだよ」

「無詠唱??」

アーサーの質問に答える為、小説やラノベで掻き集めた知識を口にする。

「無詠唱ってのはその時の如く、詠唱をしないって事だ。一々戦ってる時に『今から炎の魔法つかいますよー!』っておかしく無いか?」

「……おかしいんですかね?つか、そんな事始めて知ったんですけど…」

「…………な、なら俺とアーサーだけの秘密な?絶対に口外するなよ!?」

「う、ウスッ!」

また要らん事を教えてしまったようだ。どーもペラペラと饒舌に喋ると余計な事言っちゃうね。まぁもう治す気はねーけどさ。

「それじゃまずは付与して斬る練習。んで、慣れてきたら無詠唱に挑戦してみよう」

「分かりました!!」

「アルス。この剣技を覚えてから次に移るという事で良いか?」

「そうして貰えると助かる」

「ふむ…………ならば私も付与出来そうで、尚且つ威力の高い魔法を教えるとするか」

「流石サタナキア。本当頭良いよね」

「普通だろう?人間とはメリットがある方が意欲が上がると本に書いてあった」

「………どんな本読んでるんだよ」

地面に落書きをしているクロノスを放置し、アーサーの付与する練習に時間を割くのであった。
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