転生チートで夢生活

にがよもぎ

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第5章 王宮学園 -後期-

第176話 -地獄の合宿 4-

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「『気分爽快リフレッシュ』」

ボンヤリとした目をしているアーサーへと魔法を掛けると、サタナキアが話しかける。

「アーサー。気分はどうだ?」

「…別に何とも無いけど………」

「そうか」

「なんでオレ、先生に気分爽快リフレッシュ掛けられたの?」

「それはお前が魔力酔いを起こしていたからだ」

「……マジか」

「普段魔法を使わないツケが回ってきたな」

「……そっかぁー、魔力酔いなっちゃったのか」

「今回の合宿では魔力酔いの耐性をつける事も含むからな。次からはガンガン魔法を使え」

「…でも魔力回復薬のストックが…」

「そんなものはアルスが作ってくれるさ。薬学の教師だぞ?」

「あ、そっか……」

「…しかし、たかが上級魔法一つだけしか使えない魔力だとは思いもよらなかったぞ」

「魔法に本腰を入れたのは最近だし…上級魔法って基本的に使わないからな?それこそオレみたいにまだ未成年だとさ」

「………アルスよ。少し相談があるのだが」

「相談?なんだよ?」

サタナキアが初めて俺に相談を持ちかけてきた。

「この合宿期間中に限り、私とアーサーの魔力量を事を許してほしい」

「共有??」

相談内容が初めて聞くものだったので質問返ししてしまった。

「共有とは、私の様な契約を結んだ者の魔力を契約者が使える様になるという事だ」

「……それってサタナキアの魔法をアーサーも使える様になるの?」

「いや、それは制限を掛ける。流石に私の魔法は人間には耐えれないシロモノだからな」

「…それは別に良いかも知んないけど、根本的な解決にはならないんじゃねーの?」

「根本的とは?」

「いや、アーサーの魔力酔い耐性を付けるのも目的なんだろ?サタナキアの魔力量を共有したら意味無いだろ?」

「……確かにそうなのだが、アーサーの魔法の扱いもまだまだ稚拙なもので、魔力酔い云々の前に学んで欲しいと思ってな…」

「それも含めてやらせた方が良いんじゃねーの?思ったんだけど、結構俺らが介入し過ぎてると思うんだよ。アーサーを強くしたいってのは分かるし、時間が無いってのも充分理解している。けどさ、お膳立てし過ぎるのも成長を阻害すると思わねーか?」

「………アルスの言う通りだな。確かに我らは急激に成長を促せている。しかし、それは元々アーサーが自分自身で見つけ出さなければならない道だ」

「いやいや、ちげーよクロノス。別にそれは良いと思うんだよ」

「? どう言う事だ?」

「俺らが道を作るのはアーサーの利点だと思うし、それを使うのは別に良い。でも、それを手っ取り早く簡単にさせるのは良くないんじゃねーか?って言ってるんだよ」

「……つまり、アーサー自身に学ばせろと?」

「それが普通だろ?さっきサタナキアが言った共有するって話は問題を先送りにしてるだけだと思うんだ」

「………それだと到底5日間では足りぬぞ?」

「それはアーサー次第って話だ。今の時点でも強いと思うけど、やっぱり成長するに当たっては壁が必要だろ?」

「……なるほど。アルスが言いたいのはその壁とやらを私達が取っ払う必要は無い…という事だな?」

「うん。まぁぶっちゃければ、壁だらけにした方が成長するとは思うけど……時間が無いって事だし、根本的な部分は弄らず、発展は多少介入しても良いと思うんだよね」

「………ふむ。ではその根本的な部分とは?」

「サタナキアも言ってたけど、魔力量の増加、それと魔力酔い。その部分はアーサー自身に克服してもらうしか無いんじゃね?」

「それでは5日間常に魔力量を増やす練習をしつつ、戦闘させると言うことか?」

「まぁ俺が転移しまくって魔物達と戦わせて----

ふと脳内に良いアイディアが生まれる。

「………あ。そうだ!別に魔物をわざわざ探さなくても良いじゃん!」

「? 何の話をしているんだ?」

「今思い付いたんだけどさ………が相手になるってのはどうだ?」

ふと思い付いたアイディアを3人に聞かせる。その時、アーサーだけは俺の意図を理解したのか凄く嫌そうな顔をした。

「相手になる??………アーサーと戦えと言うことか?」

「うん!ぶっちゃけさ、サタナキアとクロノスってそこら辺の魔物よりも強いだろ?」

「「当たり前だ!!」」

「おおぅ……だから超絶的に格上の相手と戦う事でアーサーにはいくつもの壁が立ちはだかると思うんだよ」

「ふむ………しかし、その考えには1つ問題がある」

「問題って?」

「我らには上級如きチンケな魔法では到底ダメージなど与えられぬぞ?」

「それが最終目標で良いんじゃね?クロノス達にダメージ与えるって相当な事だろ」

「……確かに。私達であればアーサーも全力で戦うしか無い。それに、移動して探す手間も省けるのでとても効率的だ」

「だろ?その代わり、俺らがするのはアーサーの隙を突いての攻撃だけだ。もちろん、俺らが全力でやったりしたら到底勝ち目は無いから、段階的に力を入れていくって感じで…………って考えたんだけど、どう?」

俺が考えたのは某漫画であった『数え抜き手 稽古ver.』の様なものだ。あの漫画の主人公周辺は超人だらけだったからな。今のアーサーはまさにその主人公の立ち位置にいると思うし、お節介焼きのサタナキアがその都度指導する事が出来ると思う。

「私達に手を抜けという事か?」

「最初はね?でも次っていう目標が出来ると思うし、課題も見つかると思う」

「……その都度指導をしろという事か」

「そっちの方がアーサーも楽だと思う。今までのは戦闘の総括を言われるものだったしね」

サタナキア達は腕組みをしながら考えている。おっと、そういや肝心のアーサーの意見を聞くの忘れてた。

「アーサー、お前どう思う?」

「オレに発言権あるんすか?」

「あるよ。……まぁ拒否は出来なさそうだけど」

未だ嫌そうな顔をしているアーサーは、更に顔をしかめる。

「………疑問なんすけど、何で3人と戦うんすか?まだ魔物とかの方が強くなってるって実感があるんすよ…」

「結構アーサーに叩き込むのが多くてさ…。魔物探すのも時間かかるし、それにサタナキア達となら全力でやっても死なないからさ…」

「天使と悪魔と戦うとか……サタナキアはちょこちょこ稽古してもらってますけど、全然勝ててないんすよ?」

「うーん………やっぱり目に見える成果があった方がモチベーションは上がる?」

「そりゃそうっすよ。課題が多いってのは理解出来ますけど…相手が相手過ぎません?」

「良い案だと思ったんだけどなぁ……」

「最終日とかに戦うってのは分かりますけど……ずっと戦うってのもなんか……」

「ん?……なら、合間合間に戦うってのは?」

「それなら許容出来ますけど…」

「………………」

アーサーの表情から心底嫌だと感じる。ぶっちゃけ合宿するって言って方針ガバガバなまま始めてるしなぁ……。やっぱアーサーの気持ちを最優先して考えた方がいいな。無理強いさせるのは良くないって本で読んだことあるし。

「…ならさ、1日の終わりに戦うってのはどうだ?総復習みたいな感じでさ」

アーサーの気持ちも考え、色々と考えた結果この様な提案を問う。

「おさらいって事なら……」

しぶしぶとアーサーもオッケーをしてくれたので、クロノス達へと伝える。

「サタナキア、クロノス。ごめん、さっきの俺の提案は少し変更だ。1日の終わりにクロノス達と戦うって事にする」

「1日の終わりに?……理由は?」

「やっぱ強くなってるって実感するのが良いんだってさ」

「そうか……。まぁ確かにひたすらに勝てない相手だと萎えるものだからな」

「難しいですね……。だとすると私達も実感出来るように指導しなければならないと言うことですか」

「そうなるね。つーか、『何をさせるか。何を覚えさせるか』をガッチリ決めないといけない」

「? 攻撃重視と決めているだろう?」

「そうなんだけどさ。結構教える部分が出てきてるじゃん?でも全部教えるのは難しいし、どれかは妥協しないといけない。もちろん、アーサーの性格や状態も考えながらね?」

「…少し話し合う時間が必要だな」

「ですね。私としたことが、かなり先走ってしまいました…」

「………よし!!とりあえずさ、飯でも食いながら皆で話し合おう!アーサーも何がしたいとかあるだろうし」

思い付きから始まり、ふよふよとしたまま午前中を過ごした。だが俺の考えは根本的に間違っていたのだ。まずは全員で話し合い、方針を定め、計画を練る事が必要だったのだ。その事に俺は今更ながら気付いた。

そう言いだした俺はその場に皮袋からゴザを出しその場に敷いて、食堂で購入した料理を置く。

「よーし!早速食べながら話し合おう!ほら、座って座って」

輪を作る様に座ると、まずは腹拵えをする。『保存』を組み込んでいる皮袋なので出来立てのままだ。

「アルスよ。我らの分はないのか?」

「あー………食べる?」

「当たり前だ。…まさか頼んでいないのか?」

(忘れてたとは言えない!………創造で出来るかな?)

ジト目をしているクロノスに『ハハハ、そんな訳ないだろ?』と誤魔化しながら皮袋に手を入れる。

(…とりあえず、ボア丼とかにしとくか)

皮袋内で創造し取り出してみると、無事に創り出す事が出来た。2人にボア丼を渡した後、ちょっと実験を行う。

(まさか出来るとは思わなかったけど………これも試してみるか)

カップ麺が出来るかどうかを試してみたが、皮袋から取り出す事は出来なかった。しかし、ラーメンは取り出す事が出来た。……あ、らーんね?豚骨味の。

「……らーぬんまでっすか?先生の皮袋の中にはどれだけ入ってるんすか?」

皮袋から、らーぬんを取り出すとアーサーが驚いた様に尋ねてきた。適当にそれを誤魔化し、本題へと入る。

「食べながらで良いんで、とりあえず話し合おう。もちろんアーサーの意見が最優先だからな?」

「オ、オレがですか?!」

「そりゃそうだろ?……アーサーの意見を聞かなくても良いんなら、俺らで勝手に決めちゃうぞ?」

「私としてはそっちの方が楽だがな?」

「ダ、ダメ!!絶対嫌だ!!」

「だろ?……つーことで、まずは俺らの意見を言っておく。クロノスはアーサーを王国一の実力者にしたいらしい。んで、俺は圧倒的な強さをつけて欲しいと思ってる。サタナキアは?」

「私はクロノス様と一緒だ」

「……じゃあ俺らの意見は似た様なものって事で。それに付いて言いたいことある?」

「圧倒的な強さと王国一の実力者との違いって何ですか?」

「分からん!けど、とにかく強くなって欲しい!って事だな」

「あやふやな理由だなぁ…」

「んで、それについてアーサーはどう思う?」

「うーん……別に強くなれるのならそれで良いっす。………常識の範囲内の稽古でお願いします」

「ん。…んじゃ次にアーサーは『どんなことをしたい』のかを聞きたいんだけど」

「別にお任せで良いんですけど…」

「それだとモチベーションが保たれないからなぁ…。マナスキンとかと同じだけど、次から次へと新しいのを覚えるのは大変だろ?もしそれがあんまり好きじゃない魔法とかだったら、尚更嫌だろ?」

「…まぁそうですけど…」

「だからまずはアーサーが覚えたい魔法とかをした方が良いんじゃないかなーって」

「…難しいっすね。急に言われると何も思いつかないっす……」

「まぁその為の話し合いだからね。最悪、今日一日使い切ってもいいと思う」

「うーん…………」

アーサーは腕組みをしながら悩み始める。そしてアーサーが口を開くまでの間、俺とクロノス達は細かな話をする。それはガバガバである方針でもあるし、目先に出たマナスキンや魔力酔いに関してだ。サタナキアは色々とアーサーに付けたい物があるみたいだが、クロノスの言葉により、マナスキンに比重を置く事に決めた。魔力酔いはガブガブ飲ませて耐性を付けるという方針になり、とりあえずこの2つを完璧にする事になった。

クロノスの言葉とは『どーせ粗が出る。それは後回しにして、マナスキンを磨かせた方が良かろう?常時発動させれば魔力の底上げにも繋がる』という物だった。

んで、1日の終わりの相手も交代制を取る事にした。サタナキアが3回、クロノスと俺が1回ずつだ。これはサタナキアの性格を考えた上での決定だ。俺が教えるより上手だし、お節介焼きだからね。

それと肝心の方針だが、やはり『攻め重視』となった。アーサーが悩みに悩んだ結果、『カッコよくて実用的な魔法なんかを覚えたい!』と言ったのでその方針になった。……カッコいいって部分が年相応な所だなぁって思った。実用的なって所はスゲー難題だけど。

だが、そう思ったのは俺だけでサタナキア達はアーサーの意見に頷いていた。サタナキアは分かるけど……クロノスは大丈夫なんかな?変なの教えそうで怖い。

その他にもアーサーの意見を軸に置き、色々と話し合いを続ける。計画が徐々に出来上がって来た時、予想外の乱入者が俺達の所に現れるのであった。
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